第1章 18「会社員が辞めない理由~準備だけで勝つ男~」
全面的に自己責任でお願いします。
第18話 「周囲の反応」
会社という場所は、不思議なほど“変化”に敏感だ。
本人が何も語らなくても、何かが変われば、誰かが必ず見ている。
◆◆◆
上司の視点(課長)
「……ふむ……本堂、最近安定してるな」
営業成績表を見ながら、課長は小さく頷いた。
数字は派手じゃない。
だが、落ちない。崩れない。
以前の本堂は、
悪くはないが、どこか“頼りない”印象があった。
それが今は違う。
報告は簡潔。
無理な約束はしない。
残業も必要な分だけ。
それに――体型。
太っていた頃は気づかなかったが、
余分な脂肪が落ちたことで、身体の土台が見えてきた。
(……かなりガッチリしてるな)
スーツの肩が自然に張り、
姿勢も良い。
「まあ……俺は、余計なことは考えなくていいか」
評価を上げすぎない。
期待を乗せすぎない。
課長は、そう判断した。
◆◆◆
同僚の視点(一般社員)
「優守の奴、最近なんか変わったよな」
昼休み、自然とそんな話になる。
仕事ぶりは相変わらず淡々としているが、
前みたいに疲れた感じが消えている。
「前はさ、ちょっと覇気なかったよな」
「今は普通に頼れる」
それに、見た目。
太っていた頃は、
普通に「頼りないデブ」だったが、
今は“体格がいい”に変わっている。
「ガタイいいよな、あいつ。なんか、めちゃ痩せたし」
「ああ、分かる。デブが引き締まった感じだよな?
筋トレしてんじゃね?」
酒の量も減った。
だが、付き合いは断らない。
(人生、うまく回り始めた人の雰囲気がある)
誰も理由を探らない。
探るほどの違和感はないからだ。
◆◆◆
部下の視点
「本堂先輩って、怒らないですよね」
ミスをしても、声を荒げない。
ただ淡々と、
「次はこうしよう」
と修正点を示す。
感情で詰めない。
だが、目はちゃんと見ている。
「だよな~。まあ、だからサボれないんだよな……」
仲の良い後輩は、こうも思っている。
「優守先輩、体力ありますよね」
階段でも息が乱れないし、
立ち仕事でも姿勢が崩れない。
(前より、存在感あるよな)
威圧感ではない。
“安定感”だ。
◆◆◆
女性社員の視点
最初に気づいたのは、顔つきだった。
「……本堂さんって、痩せました?」
急激じゃない。
だからこそ、違和感がなかった。
顎のライン。
首元。
スーツの着こなし。
今は“ガッチリしている”印象の方が強い。
「ああ、確かに。前より清潔感ありますよね」
距離を詰めすぎない。
仕事以外の話題も深入りしない。
(……余裕がある人、って感じ)
恋人の匂いはしない。
だが、生活が整っているのは分かる。
「うーん……悪くないよね?」
◆◆◆
優守――本堂優守自身は、何も意識していなかった。
無理をしていない。
サボってもいない。
ただ、
淡々と生活を回しているだけだ。
(……どう見られてるかは、どうでもいい)
目立たない。
だが、埋もれない。
今の立ち位置は、ちょうどいい。
誰にも踏み込まれず、
誰からも切り捨てられない。
会社という閉じた世界の中で、
本堂優守は静かに“最適解”の場所に立っていた。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




