第1章11「会社員が辞めない理由~準備だけで勝つ男~」
全面的に自己責任でお願いします。
11【読書してチート目指します。~本でスキルゲット!?チートですがなにか?~】
第11話
「静かな再始動」
朝は、思ったよりもすんなり起きられた。
目覚ましが鳴る前に、意識が浮上する。
昨日までの身体の重さはない。
「……悪くないな」
まずはキッチンへ向かう。
朝食と、昼用の弁当。
難しいことはしない。
昨夜と同じ考え方――栄養・手間・継続。
フライパンに火を入れた瞬間、動きに迷いがなくなる。
同時進行で、弁当のおかずも組み立てる。
(……これ、完全に効率化されてるな……)
出来上がった朝食を食べながら、味を確認する。
「……うん。普通にうまい」
“特別感”がないのが、むしろいい。
これなら毎日続けられる。
食後、身支度を整え、スーツに袖を通す。
その後、ノートパソコンを立ち上げた。
(……少しだけ、使うか……)
意識を切り替える。
思考補助AI。
営業資料、顧客リスト、過去のやり取り。
頭の中で、必要な情報だけが整理されていく。
(……深掘りしすぎるな。今日は“普通”でいい)
残りの時間で、AIをプログラムしていく。
準備を終え、家を出た。
◆◆◆
出勤後、まずは総務へ。
診断書を提出し、簡単な説明をする。
「地震で本が落ちてきて、打ち身です。今日は問題ありません」
それ以上、何も聞かれない。
想定どおりだ。
昼休みは、同僚と一緒だった。
弁当を広げると、軽く声をかけられる。
「自炊? 珍しいな」
「まあ……体調もあるし、健康診断でちょっとヤバくてさ。生活、変えようかと思って」
自然な流れで、話題を振る。
「ジムとか、行こうかと思ってて」
「いいじゃん。健康的だし。飲みは? 行かなくなる感じ?」
「いやいや、回数は減らすけどな。付き合いもあるし。また行こう、誘ってくれよ」
――これでいい。
急に痩せても、不自然じゃなくなる。
小さな伏線だ。
◆◆◆
午後は外回り。
移動中に地図作成スキルが静かに働く。
道に迷わない。
時間配分も狂わない。
最短距離で向かえる。
(全く、もって素晴らしい……)
訪問先では、交渉術と社交術が“自然に”馴染む。
押さない。
煽らない。
相手のペースに合わせる。
結果――小口の注文が、いくつか入った。
(……これくらいなら、問題ない)
大口じゃない。
目立たない。
だが、確実。
自分の中で設定した本日のノルマは、早めに達成した。
◆◆◆
予定より早く外回りが終わり、そのまま図書館へ向かう。
(……この時間の使い方が、一番大事だな……)
短時間、集中して数冊読む。
深追いはしない。
速読で、複数冊をまとめて読んだ結果、いくつかのスキルがまとめてレベルアップした。
特に、回復が上がったのが嬉しい。
今のレベルは5だ。
これで範囲指定や、どれくらい治すかも指定できるようになった。
17時。
会社に戻り、報告を済ませる。
特に問題なし。
19時、一時間残業で退社。
(面倒だが、残業しないと視線が痛い。怪しまれないためには、仕方がない)
帰りにスーパーへ立ち寄り、必要なものだけを買う。
「……ほんと、無駄が減ったな……」
帰宅。
今日一日を振り返って、思う。
派手な変化はない。
誰にも気づかれていない。
だが――。
「……ちゃんと、前に進んでる……」
それでいい。
静かに、確実に。
優守は、自分の生活を少しずつ“最適化”していく。
明日も、同じように。
何事もなかった顔で。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




