第1章10「会社員が辞めない理由~準備だけで勝つ男~」
全面的に自己責任でお願いします。
第10話
「日常へ落とし込む」
図書館を出る頃には、空はすっかり暗くなっていた。
「……読みすぎたな……」
頭は疲れているはずなのに、妙に冴えている。
不要な思考が削ぎ落とされ、必要な知識だけが整列している感覚。
歩き出してすぐ、腹の奥が鳴った。
「……晩飯、まだだったな……」
そのまま駅前のスーパーに立ち寄る。
夜の店内は静かで、値引きシールが貼られ始める時間帯だ。
売り場に足を踏み入れた瞬間、優守の頭の中で、献立が勝手に組み上がる。
(鶏むね……安い
もやし……量と栄養
豆腐、卵……組み合わせやすい)
「……考えてないのに、浮かぶな……」
料理スキルの影響だと、すぐに分かった。
節約、栄養、手間。
それぞれが自然に結びつき、無駄が排除されていく。
必要なものだけをカゴに入れ、会計を済ませる。
「……前より、買い物が上手くなってるな……」
金額を見て、思わず小さく頷いた。
◆◆◆
帰宅すると、まず風呂のスイッチを入れる。
その間にキッチンへ。
包丁を握った瞬間、手が迷わない。
下処理、火加減、順番。
身体が勝手に“正解”をなぞっていく。
(……やっぱり、すごいな……)
短時間で、栄養も量も十分な夕食が完成した。
「…いただきます。…うん。やっぱりうまいな。」
黙々と食べ進め、満腹感と安心感を噛み締める。
生きている実感。
食後は、風呂に浸かる。
湯の中で、今日一日の情報が静かに沈殿していく気がした。
◆◆◆
ソファーに腰を下ろし、ようやく“整理”に入る。
「……さて……」
意識を内側に向ける。
――ステータス。
一気に増えたスキル一覧が、脳内に展開される。
速読、永久記憶、料理、地図作成、言語理解、思考補助AI構築、
交渉術、社交術、鑑定、ギャンブラー、占い、呪術、豪運。
(……多すぎだろ……)
だが、混乱はない。
それぞれの役割が、はっきり分かれている。
――戦わない
――目立たない
――健康と生活を優先
――人と揉めない
――運すら管理する
「……方向性は、これでいい……」
無理に使う必要はない。
必要な場面で、自然に使えばいい。
知識は武器だが、振り回すものじゃない。
“生活に自然に溶け込ませる”ためのものだ。
布団に潜り込む。
「…ふぅ…明日は、仕事だな。朝は早めに起きてまた、朝食を作るかな……」
そう思えたこと自体が、少しだけ嬉しかった。
意識が、静かに落ちていく。
――日常は、もう強化されている。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




