第9話 光と影の共鳴破砕
光と影がぶつかり合った瞬間、世界が震えた。
閃光は山脈の稜線を白く染め、影の奔流は空を黒く侵した。
アイナは光輪を抱え、全身を震わせていた。
光核が暴れ、胸の奥を焼くように熱い。
「リアン……っ、わたし……耐えられない……!」
「大丈夫だ。
俺が抑える。俺が全部受け止める!!」
リアンは彼女の背中に手を回し、光核に直接触れるように胸元へ手を添えた。
熱い――けれど、その熱を彼は押し返す。
まるで光核の痛みを肩代わりするように。
アイナは驚いてリアンを見た。
「どうして……どうしてそんなことが……」
「理由なんてどうでもいい。
守りたいからだよ!」
その決意がアイナの胸の震えと重なり、光核がわずかに安定する。
◆
「二人の光――共鳴が始まった」
ラグナの声が淡く震えていた。
「こんな反応……理論値を超えている。
アイナの光核が“二つの心臓”を認識している……!
こんな現象、記録に存在しない……!」
巨兵の黒い目が二人を捕らえ、
影の腕が大きく開かれた。
まるで“求めるように”。
◆
「来るぞ!!」
ラグナが叫んだ瞬間、
影巨兵が胸の闇を開き、濃密な影を吐き出した。
それは大地を呑み込む津波のようだった。
「わあああっ――!」
「耐えろ! 陣を崩すな!!」
前衛が吹き飛ばされ、
槍兵がまとめて影の波へ飲まれる。
その影が、まっすぐアイナへ迫る。
「来んな……アイナには――指一本触れさせねえ!!」
リアンが剣を横薙ぎに振る。
刃に光が乗り、影を斬り裂く。
その一撃は、これまでのリアンではあり得ないほど強かった。
まるで光を纏う剣士のように。
「……リアン……あなた……光を……!」
「後だ! 考えるのは全部後!!」
◆
巨兵の影は衰えない。
次々と押し寄せ、地面を削り、木々を薙ぎ、兵士たちを飲み込む。
アイナは光輪を抱き、声を震わせる。
「だめ……!
これじゃみんな……!」
「アイナ、おまえが止めるんだ。
俺が支える。だから撃てッ!!」
「リアン……!」
アイナは震える手を伸ばし、光輪に触れた。
「……光よ……応えて……
私たちの……光に……!」
光核が再び脈打つ。
そして――リアンの胸も同時に脈打った。
二つの鼓動が重なる。
共鳴が走った。
◆
「……来た……!」
ラグナが息を飲む。
「二人の光核共鳴――
“連心同調”!!
光核同士が互いの負荷を分配している!!」
アイナの胸の光輪が激しく輝き、
リアンの手からも淡い光が漏れ出す。
「リアン……あなた、光を……吸ってるんじゃなくて……
分け合ってる……!」
「なら――使い切るまで撃てばいい!」
◆
「光撃、展開ッ!!」
アイナが叫び、光輪を両手で広げる。
リアンが後ろから彼女の細い体を抱き、光核の暴走を抑える。
「行けッ! アイナァアアアッ!!」
「うん……!
光よ――私たちに……力を!!」
光が一気に膨れ上がり、
二人から巨大な光柱が放たれた。
それは山脈を貫くほどの眩しさで、
影巨兵の胸の黒い目へ一直線に突き刺さる。
巨兵が咆哮を上げ、膝をついた。
影が溶け、黒い目がひび割れる。
「効いてる……!!」
「押せっ!! そのまま押し切れ!!」
兵たちの声が飛ぶ。
◆
しかし――
破砕寸前の黒い目の奥で、
“何か”が動いた。
それは触手でも影の腕でもない。
黒い光の粒子――
まるで小さな星屑のようなものが、アイナの光に引かれるように舞い上がる。
「……これ……」
アイナの光核が呼応するように輝く。
ラグナが息を呑んだ。
「ダークコアの“核子”……!?
まさか……!」
「何なんだよ、あれは!?」
リアンが叫ぶ。
ラグナは思わず叫んだ。
「……アイナ!!
あれは“君の光核と同じもの”だ!!」
「え……?」
「君の光核の影側の片割れだ!!」
「……ッ!!」
アイナの胸が熱くなり、呼吸が乱れた。
影巨兵の胸で、黒い星屑が渦を巻く。
そしてアイナの光核へ手を伸ばすように――光った。
光輪が震え、アイナの体が痙攣する。
「っ――く、うあああああっ……!!」
「アイナ!!
おいラグナ!! これ止められねぇのか!!!」
「共鳴が強すぎる……!
影核がアイナの光核を“本来の位置”と認識して――」
ラグナは震えながら叫んだ。
「このままでは、光核と影核が完全融合する!!」
リアンはアイナを強く抱いた。
「させるかよ!!!」
その瞬間――
影巨兵の胸の闇が裂け、
影核がアイナの光核へ向かって飛び出した。
世界が震える。
アイナの光輪が砕け散り、
黒い光が彼女の胸へ――
吸い込まれた。
「っああああああああああああああああっ!!」
「アイナァ――――!!!!」




