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第9話 光と影の共鳴破砕

 光と影がぶつかり合った瞬間、世界が震えた。

 閃光は山脈の稜線を白く染め、影の奔流は空を黒く侵した。


 アイナは光輪を抱え、全身を震わせていた。

 光核が暴れ、胸の奥を焼くように熱い。


「リアン……っ、わたし……耐えられない……!」


「大丈夫だ。

 俺が抑える。俺が全部受け止める!!」


 リアンは彼女の背中に手を回し、光核に直接触れるように胸元へ手を添えた。


 熱い――けれど、その熱を彼は押し返す。


 まるで光核の痛みを肩代わりするように。


 アイナは驚いてリアンを見た。


「どうして……どうしてそんなことが……」


「理由なんてどうでもいい。

 守りたいからだよ!」


 その決意がアイナの胸の震えと重なり、光核がわずかに安定する。


 



「二人の光――共鳴が始まった」


 ラグナの声が淡く震えていた。


「こんな反応……理論値を超えている。

 アイナの光核が“二つの心臓”を認識している……!

 こんな現象、記録に存在しない……!」


 巨兵の黒い目が二人を捕らえ、

 影の腕が大きく開かれた。


 まるで“求めるように”。


 



「来るぞ!!」


 ラグナが叫んだ瞬間、

 影巨兵が胸の闇を開き、濃密な影を吐き出した。


 それは大地を呑み込む津波のようだった。


「わあああっ――!」

「耐えろ! 陣を崩すな!!」


 前衛が吹き飛ばされ、

 槍兵がまとめて影の波へ飲まれる。


 その影が、まっすぐアイナへ迫る。


「来んな……アイナには――指一本触れさせねえ!!」


 リアンが剣を横薙ぎに振る。

 刃に光が乗り、影を斬り裂く。


 その一撃は、これまでのリアンではあり得ないほど強かった。


 まるで光を纏う剣士のように。


「……リアン……あなた……光を……!」


「後だ! 考えるのは全部後!!」


 



 巨兵の影は衰えない。

 次々と押し寄せ、地面を削り、木々を薙ぎ、兵士たちを飲み込む。


 アイナは光輪を抱き、声を震わせる。


「だめ……!

 これじゃみんな……!」


「アイナ、おまえが止めるんだ。

 俺が支える。だから撃てッ!!」


「リアン……!」


 アイナは震える手を伸ばし、光輪に触れた。


「……光よ……応えて……

 私たちの……光に……!」


 光核が再び脈打つ。

 そして――リアンの胸も同時に脈打った。


 二つの鼓動が重なる。


 共鳴が走った。


 



「……来た……!」


 ラグナが息を飲む。


「二人の光核共鳴――

 “連心同調れんしんどうちょう”!!

 光核同士が互いの負荷を分配している!!」


 アイナの胸の光輪が激しく輝き、

 リアンの手からも淡い光が漏れ出す。


「リアン……あなた、光を……吸ってるんじゃなくて……

 分け合ってる……!」


「なら――使い切るまで撃てばいい!」


 



「光撃、展開ッ!!」


 アイナが叫び、光輪を両手で広げる。


 リアンが後ろから彼女の細い体を抱き、光核の暴走を抑える。


「行けッ! アイナァアアアッ!!」


「うん……!

 光よ――私たちに……力を!!」


 光が一気に膨れ上がり、

 二人から巨大な光柱が放たれた。


 それは山脈を貫くほどの眩しさで、

 影巨兵の胸の黒い目へ一直線に突き刺さる。


 巨兵が咆哮を上げ、膝をついた。


 影が溶け、黒い目がひび割れる。


「効いてる……!!」

「押せっ!! そのまま押し切れ!!」


 兵たちの声が飛ぶ。


 



 しかし――


 破砕寸前の黒い目の奥で、

 “何か”が動いた。


 それは触手でも影の腕でもない。


 黒い光の粒子――

 まるで小さな星屑のようなものが、アイナの光に引かれるように舞い上がる。


「……これ……」


 アイナの光核が呼応するように輝く。


 ラグナが息を呑んだ。


「ダークコアの“核子”……!?

 まさか……!」


「何なんだよ、あれは!?」

 リアンが叫ぶ。


 ラグナは思わず叫んだ。


「……アイナ!!

 あれは“君の光核と同じもの”だ!!」


「え……?」


「君の光核の影側の片割れだ!!」


「……ッ!!」


 アイナの胸が熱くなり、呼吸が乱れた。


 影巨兵の胸で、黒い星屑が渦を巻く。

 そしてアイナの光核へ手を伸ばすように――光った。


 光輪が震え、アイナの体が痙攣する。


「っ――く、うあああああっ……!!」


「アイナ!!

 おいラグナ!! これ止められねぇのか!!!」


「共鳴が強すぎる……!

 影核ダークコアがアイナの光核を“本来の位置”と認識して――」


 ラグナは震えながら叫んだ。


「このままでは、光核と影核が完全融合する!!」


 リアンはアイナを強く抱いた。


「させるかよ!!!」


 その瞬間――


 影巨兵の胸の闇が裂け、

 影核がアイナの光核へ向かって飛び出した。


 世界が震える。


 アイナの光輪が砕け散り、

 黒い光が彼女の胸へ――


 吸い込まれた。


「っああああああああああああああああっ!!」


「アイナァ――――!!!!」


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