第23話 影王の声 ― アイナの心に囁く闇
王都に安堵の空気が広がったのも束の間、
アイナの胸に不穏なざわめきが宿った。
戦いの余韻に浸る暇もなく、
黒い影のような囁きが、
彼女の意識の奥底に響く。
「――おまえの光は脆い」
誰もいない部屋で、
冷たい声が頭の中に響いた。
「え……?」
アイナは振り向くが、そこには誰もいない。
「おまえはまだ弱い。
支柱の力に頼るしかない。
おまえ一人では何もできない」
その声に、アイナの胸が強く締め付けられる。
(……影王……!?
どうして……どうやって……!)
黒い霧が、
目に見えない形で意識を包む。
「フフフ……
おまえの“恐怖”を知っている。
支柱がいなくなった時、
核は暴走する……
おまえは誰にも守れない……」
アイナは震え、涙が頬を伝った。
「違う……私は……リアンが……!」
「リアンなど関係ない。
おまえの核は、
おまえ自身の弱さに飲み込まれる」
アイナの核が微かに黒く揺れた。
「いや……いやぁ……っ
私は……私は……」
しかし、リアンの手の温もりを思い出す。
(リアン……私を……支えてくれた……
だから……私は……)
アイナは目を閉じ、呼吸を整えた。
「私は……負けない……!
リアンがいる限り……私は折れない……っ!」
その瞬間――
リアンの光がアイナの核を包み込み、黒い揺らぎを押し返す。
「おまえは俺と一緒にいる。
だから絶対に、ひとりじゃない!」
影王の囁きに負けまいと、
アイナの光が強く、深く輝き出した。
白と黒、そしてリアンの純光。
三つの光が完全に融合し、
王都の夜空に新たな光の渦を生む。
◆
ラグナは遠くからその光を見つめ、
静かに言った。
「……影王が直接語りかけるとは……
よほど、巫女と支柱の絆を警戒しているようだ」
その言葉通り、影王の策略は
アイナの心にまで及んでいた。
しかし――
(支柱が覚醒した今、
影王の干渉も限界がある……
それでも油断はできない)
ラグナの瞳に緊張が走る。
◆
アイナはリアンの胸に顔を埋め、
震えながらも微笑む。
「リアン……
ありがとう……私、負けなかった……」
「ああ」
リアンはアイナを抱きしめたまま答える。
「おまえが折れなかったからだ。
俺たち、勝ったんだ」
だが、アイナの胸の奥で、
まだ黒い影が小さく揺れていた。
(影王……
諦めたわけじゃない……
まだ……まだ試すつもり……)
アイナは小さく息を整え、
光を強く握り締めた。
「……絶対に、負けない」
リアンもその手を握り返す。
「俺もだ。
おまえと一緒に戦う。
おまえを絶対に守る」
二人の絆が、再び光となり、
影王の囁きを押し返す。




