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第21話 烈戦の支柱 ― リアン覚醒

 影界軍の咆哮が王都を揺らした。

 黒い波のような眷属が押し寄せ、

 空は影炎で覆われていく。


 その中心で――

 轟影将ごうえいしょうヴァルドが、

 獣のような呼気を吐いた。


「光影巫女……その力。

 影王様が求める“鍵”の輝き……

 ようやく、目にできた」


 アイナはリアンの背に半歩隠れ、

 核を抑えるため彼の手を握る。


「リアン……離れないで……」

「離れねぇよ」

 リアンは短く答えた。


 だが――

 ヴァルドが放つ影圧に、アイナの核が震え始める。


(まずい……このままじゃ核が乱れる……

 支柱である俺がぶれたら……

 アイナは力を使えなくなる)


 リアンは深呼吸し、己を落ち着かせた。


(折れねぇ。

 俺は折れねぇ。

 アイナのために――)


 



 轟。


 ヴァルドが地面を蹴った瞬間、

 大地が爆発するように抉れた。


 巨体とは思えない速さで跳躍し、

 黒炎の拳がリアンへ迫る。


「リアン!!」


「うおおおッ!!」


 リアンは剣を振り上げ、

 拳とぶつけた。


 衝撃が空間を震わせ、

 石畳がひび割れる。


 が――

 力の差は歴然だった。


「ぬるい」

 ヴァルドはそのまま力で押し潰そうとする。


「くそ……っ!」


「リアン!!」


 その瞬間、

 アイナの核が激しく光った。


「リアンに触らないで!!」


 白黒の光がヴァルドを弾き飛ばす。


 だが――

 アイナの体がふらついた。


「アイナ!」

 リアンはすぐに抱き支える。


「ご……ごめ……

 力、出しすぎ……た……」


 アイナの呼吸が浅い。

 核の光が乱れている。


 リアンはアイナの頬を両手で包んだ。


「大丈夫だ、落ち着け。

 俺がいる。

 俺を見ろ」


「っ……リアン……」


 アイナの瞳が震えながらも、

 リアンを映した瞬間――

 核の光が安定した。


「………ありがとう……」


 リアンは安堵するが、

 その様子をヴァルドは見逃していなかった。


「なるほど……

 “支柱”の精神が揺れれば、

 巫女の核は容易く乱れる……か」


 その言葉にリアンは歯を食いしばる。


「……ならば」


 ヴァルドが一瞬で距離を詰める。


「先に折るのは――貴様だ」


「っ――!」


 ヴァルドの影炎が剣を包み、

 轟音と共に振り下ろされる。


 リアンは防御に回るが、

 衝撃で膝が砕けそうになる。


 アイナが叫ぶ。


「やめて!!」


 光が迸る。

 だがヴァルドはその光を影炎で押し返す。


「光巫女。

 貴様の力を相殺するための“影炎”。

 本来ならこの戦い……

 巫女は出てこられぬはずだ」


「なっ……!?」


「巫女を戦場に立たせたのは――

 その支柱。

 貴様に依存させることで、

 戦わせざるを得ない状況に追い込んでいる」


 リアンの胸が痛む。


(……そんなわけあるか。

 俺が……アイナを追い込んでる?

 俺が……?)


 その一瞬の迷いを――

 ヴァルドは見逃さない。


「折れろ」


 黒炎の拳がリアンの胸に直撃した。


「が……ッ!!」


「リアン!!」


 リアンは吹き飛び、

 石畳に転がる。


 呼吸が苦しい。

 視界が揺れる。


 アイナが必死に駆け寄る。


「リアン!!

 お願い……死なないで……!!」


(やばい……

 アイナが……

 また核を暴走させる……)


 アイナの瞳が黒に沈み始める。


「アイナ……落ち着け……っ」

 リアンはかすれた声で呼ぶ。


「私が……私が守れなかったから……っ

 また……また私のせいで……!」


「違う……っ。

 おまえのせいじゃ……ねぇ……!!」


 アイナの核が強く脈打つ。


 白黒の光が狂ったように揺れ、

 地面が振動を始めた。


「やめろ……アイナ……!

 核が壊れちまう……!」


「でも……でも……!!

 リアンを守れないなら……

 私……意味がない……!!」


 その一言に――

 リアンの意識は完全に覚醒した。


(違う!!

 アイナは……

 守るために生きてるんじゃない!!

 生きるために生きてるんだ!!

 俺のためだけに存在してるわけじゃねぇ!!)


「アイナァッ!!」


 リアンは全身の痛みを無視して立ち上がり、

 アイナを抱き締めた。


「おまえの存在の意味を、

 たった一つにするな!!」


 アイナの息が止まる。


「リアン……?」


「俺を守れなくてもいい!!

 俺が死にかけててもいい!!

 おまえは――

 “生きていていい”んだ!!

 それだけが、おまえの価値だ!!」


 アイナの瞳から黒が剥がれ落ちた。

 核の乱れが静かに収まっていく。


「……っ……ひ……」


 アイナは涙を流す。


「リアン……リアン……っ

 こわかった……

 あなたがいなくなるの……

 本当に……怖かった……!」


「ああ。

 俺も怖かった。

 でも……もう大丈夫だ。

 おまえは俺が守る。

 おまえの心は……俺が支える。

 俺は折れねぇ」


 その瞬間――

 リアンの胸が光り始めた。


「え……?」


「これは……?」


 アイナが見つめる中、

 リアンの体から淡い光があふれる。


 それは巫女の光とは違う、

 まっすぐで、揺らぎのない光。


 ラグナが遠くから叫んだ。


「リアン!

 それは――“支柱の覚醒”だ!!」


 ヴァルドの影炎が揺らぐ。


「……なに……?」


「支柱の真価は、

 巫女の力を抑えるだけではない」

 ラグナが続ける。

「巫女の心を守る絶対の存在――

 その意志が臨界に達した時、

 支柱は“巫女の力を底上げする光”を得る!!」


「そんなものが……!」


 リアンはアイナの手を握る。


「アイナ。

 一緒に行くぞ」


 アイナの核が今までにないほど美しく輝いた。


「……うん!」


 二人の光が重なり――


 光影巫女と支柱による“共鳴”が発動する。


 白と黒、そして純白の支柱光が融合し――

 王都の空を照らし出した。


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