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第16話 影界会議 ― 影王の命令

 黒い霧が晴れると、

 そこは果てしない闇の宮殿だった。


 柱はすべて影の金属でできている。

 天井はなく、代わりに渦巻く“虚空”が広がる。


 黒翼将オルファスは、

 深手を負った翼を引きずりながら歩み進む。


 玉座の前で膝をついた。


「……ただいま戻りました、影王えいおう陛下」


 玉座は暗闇そのもの。

 中央に座る影王の輪郭すら、

 闇に溶けて見えない。


 ただ、二つの瞳だけが赤く輝く。


「報告しろ。

 光影巫女は――どうだった」


 影王の声は低く、

 世界の底を震わせるようだった。


 オルファスは静かに目を伏せる。


「……想定を超えました。

 光影核はすでに“混合段階”へ。

 巫女本人の意思で、光と影を同時に操ります」


「ふむ……

 巫女はまだ覚醒直後のはずだ。

 なぜそこまで安定している」


「――支柱となる者がいます」


 影王の瞳が細くなる。


「支柱……?」


「はい。

 光巫女を精神面で支え、

 混合核の暴走を抑え、

 さらに戦闘では連撃を成立させるほどの――」


 そこで、オルファスは言葉を区切った。


「――“補正因子”です」


 玉座に沈む影王が静かに問う。


「名は?」


「リアンという少年です。

 光界の血を僅かに持つ戦士。

 巫女の核に対し……異常なほど適合している」


 影王はしばらく沈黙し、

 やがて低く笑った。


「なるほど。

 では巫女一人ではなく、

 ふたりまとめて脅威というわけだ」


「はい。

 二人で放つ連撃は――

 私の翼を焼くほどの威力に達しています」


 オルファスは折れた黒翼に触れ、

 かすかに眉を寄せた。


「……失態です。

 申し訳ありません」


「気にするな。

 むしろ喜ばしい」


 影王の声に、

 オルファスは顔を上げた。


「……喜ばしい、ですか?」


「強い巫女ほど価値がある。

 弱い巫女には意味がない。

 回収後の“器”としても、

 強靭であるほど理想的だ」


 影王の赤い瞳が輝く。


「巫女は放っておけ。

 勝手に成長する。

 問題は――支柱となる少年だ」


「……排除対象と?」


「違う。

 “試練対象”だ」


 玉座の周りの闇が、蠢く。


「巫女が力を得るには、

 必ず葛藤と喪失が必要となる。

 支柱を揺らせば巫女も揺らぐ。

 ――その揺らぎを、混合核はもっとも好む」


 オルファスは気づいた。


 影王は最初から、

 光影核の完成を“見たかった”のだ。


 光でも影でもない。

 その中間の“卵”。


 世界を新たに壊し、

 創り直すための鍵。


「ですが……少年を壊しすぎれば、

 巫女が完全に光側へ傾き、

 影の力を拒絶する可能性も――」


「壊すのではない。

 “選択させる”のだ」


 影王の声が冷たく響く。


「愛か、恐怖か。

 光か、影か。

 少年が葛藤すれば、巫女も揺らぐ。

 その揺らぎこそが、混合核を加速させる」


「……承知しました」


 オルファスは深く頭を垂れる。


 



 影王は立ち上がった。

 その瞬間、宮殿全体が震える。


「集え。

 影界“七将”」


 空間が裂け、

 六つの影が姿を現した。


 黒翼将オルファス。

 刃殻将ダルガ。

 奈落将イグノス。

 霧紋将フェルナ。

 虚囁将シェラ。

 時間将ヴァース。

 石牢将ガロス。


 影界最強の七柱が、

 影王の前に跪く。


「命令する。

 光影巫女の確保を優先せよ。

 補正因子――リアンの動向を監視し、

 必要とあらば“試して”も構わぬ」


 七将の影が震える。


「これは“世界”の問題だ。

 光界も影界も関係ない。

 巫女が完成すれば……

 世界の形そのものが変わる」


 影王の声が宮殿に響き渡った。


「――全軍、動け」

「「「御意」」」


 そして影界は、

 本格的に戦争の姿勢へと入っていった。


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