第13話 再誕 ― 光影の巫女
白と黒の光が弾け、世界が再び形を取り戻した。
耳に飛び込むのは、兵士たちの叫び。
地面を揺るがす影巨兵の轟音。
山脈を覆い尽くす影の奔流。
――戦場へ戻ってきた。
リアンは息を呑み、すぐ隣を見る。
「……アイナ……!」
そこに立つ少女は、もう以前のアイナではなかった。
銀に揺れる髪は光と影を帯び、
瞳は金と黒を重ねた双層の輝き。
胸の中心では、白黒の“統合核”が脈を打っている。
その姿を見た瞬間、
兵士たちは息を飲み、声を失った。
「なんだ……あの光は……」
「アイナ様……? なのか……?」
◆
影巨兵が咆哮する。
アイナが一歩前に出るだけで、
空が震えた。
「……アイナ、無茶はすんなよ」
リアンが息を呑んで言う。
だがアイナは小さく笑い、
その手をリアンへ伸ばした。
「無茶なんかしないよ。
だって――リアンがいるから」
その目は、もう迷っていなかった。
強さも弱さも、全部を抱えた目だった。
リアンの胸が熱くなる。
「……行こう。
一緒に、終わらせよう」
「うん!」
◆
影巨兵が黒い奔流を吐き出した。
大地を呑み込む闇の波だ。
「危ない!!」
ラグナが叫ぶ。
だがアイナはただ、そっと両手を広げた。
「――もう大丈夫。
影は、怖くない」
白黒の光が、アイナの全身を包む。
次の瞬間、
影の奔流はすべて、
アイナの前で“静止”した。
触れてもいないのに、
まるで意思を持つように留まる。
兵士たちは目を疑う。
「な、なんだ……!?
影が止まって……!」
「光で消してるのか……? いや違う……
影そのものが……従っている……?」
◆
アイナの声が響く。
「影は……私の弱さと同じ。
拒まれれば暴れるけど……
受け止められれば、落ち着くんだよ」
影の奔流が静かに収束し、
アイナの掌へ吸い寄せられていく。
ラグナが震えた声で呟く。
「……こんな制御、理論の外だ……
影核を吸収しただけじゃない……
光核と影核が完全に統合した“第三の核”……
もはや光巫女の枠じゃない……!」
「じゃあ何なんだよ」
リアンが問う。
ラグナが息を呑んだまま、答えた。
「――光影の巫女
伝承でしか語られなかった存在だ」
リアンは横のアイナを見る。
確かに、彼女は神話に描かれたような光を纏いながら
同時に影を従えていた。
◆
影巨兵が吠え、
大地を叩き割りながら突き進む。
アイナは手を前に伸ばし、
静かに瞳を閉じた。
「リアン、力を貸して」
「任せろ!」
リアンが後ろからアイナの手に重ねる。
二人の鼓動が揃い、白黒の光が渦を巻く。
「――同調、開始」
アイナの声とともに、
統合核が大きく脈動した。
光と影が融合し、
一本の巨大な“光影槍”を形成する。
「行くよ、リアン!」
「ぶち抜け!!」
二人が地を蹴った。
次の瞬間、
光影槍は影巨兵の胸の黒い目を貫いた。
世界が震え、影の巨体が裂ける。
咆哮。
断末魔。
そして――
影巨兵は砕け散り、
黒い粒子となって空へと消えた。
◆
静寂が残った。
兵士たちは誰も声を出せず、
ただ、アイナとリアンの姿を見つめていた。
光影の巫女。
そして、その核の共鳴者。
アイナは息を整え、
リアンに笑いかけた。
「……リアン。
ありがとう。私……戻ってこられたよ」
「おかえり、アイナ」
アイナの頬が赤く染まった。
リアンはそっと手を伸ばし、
アイナの髪を優しく撫でた。
「これからも……隣にいるからな」
「……うん」
二人の手が重なった瞬間、
白と黒の光が静かに揺れた。
その光は、
新たな戦いの始まりを告げていた。




