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第13話 再誕 ― 光影の巫女

 白と黒の光が弾け、世界が再び形を取り戻した。


 耳に飛び込むのは、兵士たちの叫び。

 地面を揺るがす影巨兵の轟音。

 山脈を覆い尽くす影の奔流。


 ――戦場へ戻ってきた。


 リアンは息を呑み、すぐ隣を見る。


「……アイナ……!」


 そこに立つ少女は、もう以前のアイナではなかった。


 銀に揺れる髪は光と影を帯び、

 瞳は金と黒を重ねた双層の輝き。

 胸の中心では、白黒の“統合核”が脈を打っている。


 その姿を見た瞬間、

 兵士たちは息を飲み、声を失った。


「なんだ……あの光は……」

「アイナ様……? なのか……?」


 



 影巨兵が咆哮する。


 アイナが一歩前に出るだけで、

 空が震えた。


「……アイナ、無茶はすんなよ」

 リアンが息を呑んで言う。


 だがアイナは小さく笑い、

 その手をリアンへ伸ばした。


「無茶なんかしないよ。

 だって――リアンがいるから」


 その目は、もう迷っていなかった。


 強さも弱さも、全部を抱えた目だった。


 リアンの胸が熱くなる。


「……行こう。

 一緒に、終わらせよう」


「うん!」


 



 影巨兵が黒い奔流を吐き出した。

 大地を呑み込む闇の波だ。


「危ない!!」

 ラグナが叫ぶ。


 だがアイナはただ、そっと両手を広げた。


「――もう大丈夫。

 影は、怖くない」


 白黒の光が、アイナの全身を包む。


 次の瞬間、

 影の奔流はすべて、

 アイナの前で“静止”した。


 触れてもいないのに、

 まるで意思を持つように留まる。


 兵士たちは目を疑う。


「な、なんだ……!?

 影が止まって……!」


「光で消してるのか……? いや違う……

 影そのものが……従っている……?」


 



 アイナの声が響く。


「影は……私の弱さと同じ。

 拒まれれば暴れるけど……

 受け止められれば、落ち着くんだよ」


 影の奔流が静かに収束し、

 アイナの掌へ吸い寄せられていく。


 ラグナが震えた声で呟く。


「……こんな制御、理論の外だ……

 影核を吸収しただけじゃない……

 光核と影核が完全に統合した“第三の核”……

 もはや光巫女の枠じゃない……!」


「じゃあ何なんだよ」

 リアンが問う。


 ラグナが息を呑んだまま、答えた。


「――光影の巫女ルーメン・ノクス

 伝承でしか語られなかった存在だ」


 リアンは横のアイナを見る。


 確かに、彼女は神話に描かれたような光を纏いながら

 同時に影を従えていた。


 



 影巨兵が吠え、

 大地を叩き割りながら突き進む。


 アイナは手を前に伸ばし、

 静かに瞳を閉じた。


「リアン、力を貸して」


「任せろ!」


 リアンが後ろからアイナの手に重ねる。

 二人の鼓動が揃い、白黒の光が渦を巻く。


「――同調、開始」


 アイナの声とともに、

 統合核が大きく脈動した。


 光と影が融合し、

 一本の巨大な“光影槍”を形成する。


「行くよ、リアン!」


「ぶち抜け!!」


 二人が地を蹴った。


 次の瞬間、

 光影槍は影巨兵の胸の黒い目を貫いた。


 世界が震え、影の巨体が裂ける。


 咆哮。

 断末魔。

 そして――


 影巨兵は砕け散り、

 黒い粒子となって空へと消えた。


 



 静寂が残った。


 兵士たちは誰も声を出せず、

 ただ、アイナとリアンの姿を見つめていた。


 光影の巫女。

 そして、その核の共鳴者。


 アイナは息を整え、

 リアンに笑いかけた。


「……リアン。

 ありがとう。私……戻ってこられたよ」


「おかえり、アイナ」


 アイナの頬が赤く染まった。


 リアンはそっと手を伸ばし、

 アイナの髪を優しく撫でた。


「これからも……隣にいるからな」


「……うん」


 二人の手が重なった瞬間、

 白と黒の光が静かに揺れた。


 その光は、

 新たな戦いの始まりを告げていた。


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