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16 お姫様と騎士

さくさくざくざくざっくざっくに切り裂かれていた僕ですが、じゃーんなんと翌日から学園に復帰してただいま授業を受けてます。


とはいってもやっぱり体力が万全に戻ったわけではないので本当は寝てないとダメなんだけどね。治癒魔法で組織とかは繋ぎ合わせられるんだけど体液とかはすぐにもと通りになる訳じゃない。それでも僕はスッゴク治りが早いって。ミカ曰くそういう体質なんだって。なんだかラッキーだよね。へへ。


まぁ授業は受けなくてもいいんだけどね。先生たちもそういったし。でも、いやーうん、そうなの、一人でいるのが怖いんだよね。僕を襲ったあの子、マリアって言うんだけどね、見つかってないんだよね。つまりまた僕が襲われる可能性があるんだよ。一人で部屋で寝てるときに襲われたら今度こそ僕死んじゃうよ。


だから護衛付きで授業に出ることが許されたんだ。襲うなら人気のない時だろうってことで。


モブな僕には必要ないっていったんだけど、アーノルト様にもサイラー様にも絶対ダメだって怒られちゃった。お見舞いに来たはずのお二人が涙目になりながら僕のことを両側からギュギュってしてくるから僕目が回りそうになったよ。ミカが追い払ってくれたけどね。


そして護衛をかって出てくれたのがエリカ様。突き落としたお詫びも兼ねてるからって快く申し出てくれた。二つ年上とはいえ女の子に守ってもらうってどうなのかちょっと自尊心が傷ついたけどもまぁ僕は年下のピンク頭さんにぎったんぎったんにやられたばっかりなのでね。はい、黙ります。


今歴史の時間なんだけど、もうすぐお昼ご飯だし集中できないなぁ。はぁぁーなんだかふわふわする。身体中があったかくって前世の炬燵で眠りに落ちる前みたい。欠伸が出ちゃうよ。ふぁぁ。お昼休みになったら医務室で寝させてもらおうかなぁ。うつらうつらしかけた僕の横でエリカ様ががたりと立ち上がった。


「フィリップ君、体がきついかもしれないが立て。すぐに逃げなくては」


「へ?」


「なにか大きなものが来る!男子は女子を守りながら移動!距離を取れ!!」


どぉん。カタカタ。どおぉん。びりびり。遠くから連続して聞こえているものの正体が大きなものがこちらにむかって移動している地響きだと。重低音が教室のドアや窓ガラスを震わせる。


みんながエリカ様の声に慌てて教室を飛び出していく、治癒魔法をかけてもらったとはいえ僕はまだまだ素早く動けない。


(どうしよう!)


「さあ急いで」


エリカ様が僕の前で背中を見せてしゃがむ。


(これは、おんぶ?)


「急げ!」


ぴしゃりとしかられてぴゃっとエリカ様の背中に張り付きました。僕はセミだと念じながら。みんみん。


※※※


エリカ様に運んでもらって外に出ると僕らは大きな何かがなんなのか目にすることになった。


緑のおどろおどろしい茂みが地面にその巨大な触手を突き立てるようにしては全体を持ち上げのたうち進んでくる。


「植物?」


「いや、魔物だろうあれを見ろ」


「ピンクの花?いや、人の頭?え?」


いやだいやだいやだ認めたくない。僕はエリカ様の背中に顔を隠した。緑の上に見えたのはピンク頭のあの子血走った赤い目をして周囲をぐるりぐるりと見回していた。


「マリアだろうな、人外になったようだが」


「人違いとか?ないでしょうか?やっぱり僕を狙ってるんですよね、きっと」


「いや、あれは……アーノルト様を探しているな」


『あーのぉーるとぉー』


!!


ほんとだ、すごくゆっくりだけどアーノルト様を呼んでいる。あんな姿になってもランチタイムに出会えば恋が始まるって思ってるんだろうか?女の情念ってやつ?こわいよねぇ。


『おーまーえ』


!!!!!!!


「見つかったようだな。ひとまず逃げる」


エリカ様が走り出す、ぐんぐんとピンク頭から距離をとり建物の影に隠れようとしたその時ぱしゅんとなにかが弾ける音がしてすぐそばの建物に緑のネバネバが張り付いた。


「とりもちの要領だな。フィリップ君触るなよ」


「頼まれても触りません!」


やだやだやだよ。ベタベタしてるのがどろりと壁をつたっって地面に落ちる。地面のなかが小さくぼこりと動いてじゅわじゅわいってるんだけど小さな生き物が地面のなかで溶けてるよね。たぶん。


「さて有機物をとかすらしいと私は見当をつけたわけだがフィリップ君」


「はい」


「不謹慎だが私は今高揚している。魔物を相手に姫を守る騎士になれる。これぞショッツマーテル家本来の役目。ここにて私を待っていてください。すぐに倒して参ります」


そういうとエリカ様は僕をマリアの目の届かないところに下ろし騎士の礼をとった。高揚が彼女の瞳を煌めかせ女子なのにすごくかっこいい。ふだんからアーノルト様のきらきらを受けてる僕じゃなかったらきっと、はわわっていってた。


「では行って参ります。勝利をあなたに」


ちゅっと手の甲にキスをしてエリカ様は踵を返した。腰のサーベルを抜き放ちながら化け物になったマリアの方へ走っていく背中が騎士様だった。


「はわわ」


モブには刺激が強すぎなので、(いち)はわわ出ました。


(姫様ポジションのモブ悪くない)



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