アメサーラ99
これは私がアメリカの王様だった頃のお話。
早起き(8時)した私は、せっかくなのでと泣きながら散歩に出かけた。
少し肌寒かったが、やはり朝から体を動かすというのは気持ちが良かった。
しばらく歩いたところで、死角からオバマ大統領が突進してきた。口には食パンを咥えており、吹き出しには「ちこくちこく〜」と書いてあったので、恐らく彼は急いでいるのだろう。
とっ捕まえて顔に醤油を塗ってみると、彼の腹の中からなにやら声が聞こえてきた。その時の私の頭の中は「もしや、妊娠!?」一色だった。
お腹に耳を当ててよく聞いてみると、それはこの上なくイケボのアルプス一万尺だった。
「イケボの赤ちゃん、元気に産まれてくるといいデスネ」
私がそう言うと、オバマ大統領は鬼の形相で私の頬を張った。
「真似してんじゃねーよ! クソが!」
多分、語尾の「デスネ」がいけなかったんだ。とんでもないことをしてしまった。どうしよう。どうしよう⋯⋯
とりあえず私は仕返しにビンタを100発お見舞いし、屁で飛んで逃げた。
しばらく飛んでいると、反対車線からはみ出して飛んで来た織田信長と衝突した。
「どこに目ェつけとんじゃコラァ!」
私が怒鳴ると、織田信長も言い返してきた。
「ホトトギス」
許せなかった私はもう1回早起きし、信長の右耳の穴にこれでもかと鼻くそを詰め込んでやった。
「ありがとう」
信長は喜んでいた。
なんでも彼が床に就くと、毎晩猿みたいな見た目の家来が耳元で「おちんぽこのたい焼き!!! マドレーヌのたい焼き!! たい焼きのたい焼き! おはようございます」と絶叫し続けるらしく、ここ最近ろくに眠れていなかったのだという。
「昨日クリスマスだったじゃん? サンタさんに耳栓お願いしたんだけどさぁ、朝起きたら耳に雪詰められてんの。確かにその夜は眠れたけど、起きてすぐ融けて溺れそうになったーニャ」
「耳呼吸してんの?」
「ということで今から本能寺でのぶリンとお茶会だから、じゃあね」
「のぶリンはお前だろ、じゃあね」
こうして信長と別れたあと、15分くらいして屁が尽きたので、仕方なく地上を歩くことにした。
そこは見覚えのない土地だった。
目の前には333メートルくらいありそうな真っ赤なタワー。周りには身長3メートルのスキンヘッドの男女たち。
もしかして、ここは⋯⋯
「すみません、お前たちは誰ですか?」
「ワレワレハ宇宙人ダ」
3メートルのスキンヘッドの女に訊ねてみると、思った通りの答えが返ってきた。
「で? 宇宙人だからなに?」
「ア? ケンカウッテンノカテメー? ⋯⋯ウアアアアアアーアアア!!!」
なぜか胸ぐらを掴まれたので、おぴっこをひっかけてやった。叫びながら逃げてったよ。
仕方がないので333メートルくらいありそうな真っ赤なタワーを登ってみると、まだペンキが塗りたてだったようで、死ぬほど辛かった。
なんとか頂上まで行くと、私の体は顔とお尻以外真っ赤に染まっていた。猿の逆である。
「たのもう!!!!」
333メートル下からなにやら声がするので見てみると、信長がいた。隣には猿みたいな家来もいた。
降りていくと、猿みたいな家来が飛びかかってきた。
「どっちが本物の猿か、決着つけたらァー!」
「待ちなさい! 私は猿ではない! 猿の逆だ!」
「何を訳の分からねーことを言ってやがる! 死ねぇー!」
「話が通じない奴にはこうだニャ!」
私はまたおちっこビームを食らわせてやった。叫びながら溶けてったよ。
「これから本能寺でのぶリンとお茶会だから、じゃあね!」
「のぶリンはお前だろ、じゃあね」
また信長と別れると、今度は空から大きなミートボール軍艦が降ってきた。
「こんにちは、ワタシは寿司です」
メロスは激怒した。
ミートボール軍艦が寿司を名乗っているのだ。こんなことは、あってはならない。
メロスは短剣をぐぐと握りしめ、流星の如く飛びかかった。
しかし次の瞬間、ミートボール軍艦がポケットから取り出したものを見て、メロスの機嫌が直った。
「南無三、仕方あるまい」
メロスはそう言って何かを受け取ると、ミートボール軍艦のミートボールをモミモミしてその場を後にした。
「ねーねー、メロスになにあげたの?」
「ねりけし」
私もミートボールをモミモミしてその場を後にした。
現在時刻8時12分。よく歩いたものだ。
さて、そこの茶屋で休憩していくか⋯⋯
「王様〜!」
西の空から私を呼ぶ声が聞こえた。
「なにーーーーー?」
西の空に向かって叫ぶ。
「〒#¥÷〒%〒#$〜〜!!!」
「なにってーーーーーーーー????」
「〒%〒#%¥÷〒〒%〒〒〜〜!!」
やべぇ、なんも分からん。1ミリも聞き取れん。
「郵便来てましたよ〜〜!!!!」
1ミリは聞き取れてたみたい。「〒」成分多かったもんな。
屁で飛んできた家来は私に封筒を1つ手渡すと、実で飛んで帰って行った。
さてさて、なんの手紙かな⋯⋯ハッ!
見なかったことにしよう。
現在時刻11時11分。ポッキーの日だ。雨の象形文字でもあるため、ぽつぽつ降ってきた。
私はメロスと合流し、また歩いた。
「なぁメロち、さっきのねりけし、まだ持ってる?」
「持っているぞ、それがどうした?」
「匂いとかついてた?」
「ああ、ついていたとも。竹馬の友、セリヌンティウスの匂いがついていた」
「嗅がせてよ」
「イーヨ!」
メロスからねりけしをひったくって匂ってみると、普通におじさんの臭いがした。
「そろそろ返してもらえるか。我が友の形見なのだ」
「セリっち生きてるだろ」
「いつかあの男が死んだ時、それが形見になるのだ」
「ふーん⋯⋯」
私はねりけしを持ったまま走り出した。
「おい! どこへ行くつもりだ!」
メロスも走り出した(雨中、矢の如く)。
「へへーん、返してやんなーい!」
悪い気が起きたのだ。
「もう返してよぉ〜」
「やだねったら、やだね〜」
「んもぉーーーーーーー!」
メロス、思ったより足速い。
「先生に言うよ!」
ピタッ
⋯⋯私は、足を止めた。
「ごめんて⋯⋯ほら、返すよ」
「まったくもう⋯⋯」
「なんちゃってぇぇぇ!!!!」
私は脚と屁を併用し、弾丸の如く走り出した。
「待てコノヤロー!」
大根を片手に追いかけてくるメロス。あれで叩かれたらひとたまりもない。ジャイアンでもノックアウトは免れねぇだろうよい。
その後、おぴっこで地面を溶かして落とし穴を作ることで事なきを得た。メロスは地球の裏側まで落ちていったことだろう。佐賀市まで⋯⋯
さて! このねりけしを信長に届けよう! さすれば奴も安眠できよう!
本能寺に行くと、めちゃくちゃ燃えていた。もう本当にめちゃくちゃ燃えていた。マッチより燃えていた。
普通におちっこで消火して中に入ると、信長が家来とオセロをやっていた。胸の名札に明智光秀と書いてある。
「王手!」
信長の宣言に頭を抱える明智光秀。
「うーむ、かくなる上は⋯⋯」
「なんぞ?」
「罠カード発動!」
「は? これはオセロじゃぞ!」
「このカードは、なんたらかんたらまんじゅうこわい⋯⋯」
信長の言葉に耳も貸さず罠カードの効果を読み上げる明智光秀。なんでも、相手の石を1つ残して全て裏返すことのできるカードらしい。
「なっ、儂の石が1個に!?」
「フハハハハ! 次は俺のターンだ! 滅ぶがいい織田信長ァ!!」
光秀が自分の石を置き、最後の1個を裏返そうとしたその時だった。
「UNO!」
信長が叫んだのだ。
「なっ⋯⋯!」
裏返してはいけないと脳が気づいてから、その信号が手に伝わるまでには数十分掛かると言われている。
「止まれ、俺の手ぇぇぇぇ!!!」
――光秀の手は、止まらなかった。
「勝負ありィィィァィァィァアアアアアアアアアアアアアアアあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
今朝飼っているカブトムシが全部死に、スマホの画面が割れ、妻に宝くじ10億円が当たったと嘘をつかれ、血尿が出るようになり、血便が出るようになった審判が叫んだ。
「勝者には、盗品のねりけしが贈呈されます!!!!!!!!!!!!!」
昼食に買った3ピースのケンタッキーが全部キールだった審判が叫んだ。
「はい、どうぞ」
「パク⋯⋯クッサ⋯⋯あ、微かにミートボールの風味が⋯⋯クッサ」
織田信長はおじさんを食べているような顔をしながら、言いたいことも言えずにゆっくり死んでいった。ポイズンが入っていたのだ。
以上が本能寺の変の真実である。