第六話
『皆さん、こんにちは。またまたやってまいりました、O学ラジオの時間です』
最近、放送部が昼休み放送を始めた。
いつものやつらと飯を食いながら、のんびりとそれを聞く。
今日はどうやら星座占いらしい。
もう一日の半分も終わっているのに、今日の運勢とかあるのか?
「もう半分終わってるのにやる意味あると思うか?」
「どうですかね、実際テレビでも違いますし」
「信じたいもの信じればいいんだよ、それは」
『今日の運勢第1位は、乙女座の方!何においても絶好調、今まで時機を見ていたことを実行に移すチャンスかも!』
『あれ、たしか後藤先輩って乙女座でしたよね』
『そうですね、じゃあ、半年ぐらいやっていない部屋の掃除でもしたいと思います』
『え、汚い…』
一瞬、教室が静まり返る。
「マジレスか…」
「さっきまで、棒読みだったのにね」
「逆に面白いですね」
『い、いやいや冗談ですよ。それじゃ、岩下さん次へ行ってください』
「ごまかしたな」
「うん」
『っ…で、では最後に本日最も悪い運勢の方は』
と、そこまで聞こえたところで、隣のクラスから歓声が上がった。
「え、うるさ」
男どもの喚声ならよく聞こえてくる(あいつらは週一で何かしらの大会をしている)が、今回は女子の黄色い悲鳴も混じっていた。
「なんかあったのかな」
「さぁ」
クラスでも何事かとざわめいている。
しばらくしてその声が収まると、今度は拍手の音が響いてくる。
「え、まじで何やってんの?」
状況が理解できない。
「あれ、神プあったんかね」
「気になるんで、行ってきます」
杜がそう言って席を立った。
「ただいまです」
数分ぐらいしてから、杜が帰ってきた。
見てみると、少しニヤけている。
…あれか?
「おう、どうだったん?」
文屋がそう聞くと、口元を抑えつつ答える。
「いやですね、あの星座占い信じた人が、女子に告ったらしくて、それで、初のクラス内カップル成立となりましたようで」
「おぉ」
「さらに!」
そう言って、机を叩く。興奮しすぎじゃないか?
「その2人が、常々付き合ってほしいと思っていた人たちだったんですよ!」
「良かったね、杜」
「はい!」
それからの昼は、杜による『いかに恋人という存在が素晴らしいか』についての講義が延々と続いた。
予鈴が鳴っても話し続けようとしたから慌てた。俺、まだ授業準備してねぇんだよ。
そもそも、お前彼女いた事なかったろ。