第三話
書き溜めていたものはここで終わりになります。
次回からは不定期更新です。
ここで出てくる「楽生」は大平の音楽ホールのことです。
「復活です!」
火曜には風邪でダウンしていた杜が学校へ来た。
昼休みになってからそう報告を受けているのは、俺が休み時間は寝ていて、阿は(いつも通りならば)熱心に設定資料を書いていたからだろう。おとなしめなこいつは、基本何かを邪魔してまで話しかけるようなことはしないから。
「大丈夫か、学校には慣れたか?」
「おばあちゃんみたいな心配されてますけど、僕、元気いっぱいです!」
失礼な、初登校日がいきなり通常日課だったから心配してやったのに。
「元気そうで良かったよ。あ、オリエの資料送ったの見れた?」
「うん、見れました。あざます!」
「修学旅行のやつ、かなり重要だから親とも見てね」
と、話しながら名倉を待つが、なかなか来ない。
しばらく待っても来ないので、しょうがなく机を並べ始めたところで、
「俺も一緒に食っていい?」
と言ってくるやつがいた。
「あ、文屋。もちろんいいよ、ね、二人とも」
どうやら机が他のやつに占拠されたようだ。
文屋はそこそこ仲良くしていて、アニメ好きだと言うことは覚えている。
「おぅ」
「もちろんです」
「ありがと。じゃ」
そうして、文屋も含めた4人で昼飯を食うことにした。
「四巨頭会談じゃね」
笑いながらそう言うと、残りも乗っかってくる。
「誰がソ連ですかね」
「名倉が居たら"文理"が違うからソ連にできるけどな」
「というよりも、俺らの面子じゃそこまでパッとしてないよな」
「せいぜい、中堅国止まりな気がするね」
「じゃ、小国会談か?」
「非同盟諸国首脳会議のほうが近いですかね」
わいわいと駄弁りながら、箸を進める。
「そーいや、みんな仮入部どうだった?」
文屋が聞いてきた。
「吹部は50人くらい来てたから、多分40人は入ると思う。田中は?」
「ボドゲは3人だったな。勧誘の甲斐なく…だけど、珍しく女子が1人来てたから」
「え、珍しい。今まで男子だけの大所帯だったんだよね」
「あぁ、男子15人もいるからな。俺らの代でいきなり増えて、むさ苦しいったらありゃしないから、まぁ、良かったわ」
「おめでとう、田中は女子好きだからな」
「おぅ、共学だからって理由でここにした、って言わせるんじゃねぇよ」
ははは、と笑ってそのまま食事を続ける。
「そういや、文屋はバドだっけ?」
「うん」
「どうだったの?」
「それなんだけどさぁ、30人ぐらい来てさ」
「あら、すごいじゃないですか」
「いや、それが困るんだわ。バドって元々人数いるから、いきなりこんだけ増えると手狭で」
「あ~、そっか」
「今回、ステージの上から見学してもらうことになったし…あ、吹部は練習場所とかどうしてんの?」
「あ、吹部?」
阿が箸を止める。
「吹部は合わせの時だけ楽生に集まってるけど」
「いつもは西棟とか使ってたよな?」
「うん、基本的に西棟の教室いくつか借りて個人練してるから」
「あぁ、いいな。うちも借りれないかな、教室を」
「え、教室でやるんですか?」
「そりゃもちろんよ、こう、机をネットにしてバビューンと」
「ネットと接触するとかなり危なくね?」
「まぁ、あれだよあれ。スポーツをする者に、その覚悟を問うんだよ」
「良かったじゃん、部員が何人か減れば少しやりやすくなるよ」
「阿ひっでぇ」
阿の言葉を笑いながら文屋が責める。本当に酷いことを言ってるが、本心ではないだろうし(というか本心だったら困る)、まぁ、実現しないことだから問題なかろう。
全員が食べ終わったらそのまま解散となり、各々授業準備を始めた。