第3話 登校に舞い散る花びら
「真白様、いよいよ高校生ですね」
と、嬉しそうに自分の制服姿に見惚れながら歩く雪乃は言った。
「そうだな。くれぐれも人前で、『様』をつけて呼ぶのだけはやめろよ」
「分かっていますよ。今まで通り、真白様の事を友人のように『真白君』と、呼べばいいんですよね?」
「そうだ。俺達の主従関係は、人間界では秘密だからな、知らない奴にバレると面倒だからな」
二人は、通学路を曲がり、堤防を歩く。
堤防の続く道には、桜の木が植えてあり、桜の花びらが舞っていた。
「それにしても綺麗ですね」
「そうだな。春夏秋冬があるからこそ、時代が変わっていくんだろうな」
「そうですね。私は、桜は嫌いじゃないですよ。まぁ、冬が終わり、春の季節が訪れる象徴を表している。そんなところでしょう」
目の前に舞い散る桜の花びらを手に取り、雪乃は微笑んだ。
「真白様」
「ん? どうした?」
真白は、雪乃の方を振り向く。
「高校三年間、楽しみましょうね!」
雪乃は満面の笑みで真白の方を見る。
「お前、ここ最近、どんどん人間みたいに堕落しているぞ」
「ええ~! 酷いですよ! いいじゃないですか。たまには、人間の少女らしくしても……」
雪乃は、頬を膨らませる。
「はいはい、そうですね。一応、人間の少女と変わらない姿だから、そう見えて……」
「もう! からかわないでください!」
二人は、何気ない会話をしながら学校へと向かうのだった。