プールの底で見ていた光
風呂の水面となんとなく
向き合ってみる
波だったお湯が
明かりを反射して輝いて見える
そういえば
お風呂に潜りたいって
思わなくなったのは
いつ頃からなんだろう
初めて湯船の中で足を滑らせたとき
世界がひっくり返った気がして
ほんの一瞬だったけれど
あ、死ぬかも
そう思ったことだけは
今でもよく覚えているんだ
それなのに何故か
水を怖いと思わなくて
泳げるようになってからは
学校でも遊びでも
プールの底に潜って
鼻をつまみながら
上を見るのが好きになってた
深く潜ると
それまで騒がしかった周りの音
ほとんど聞こえなくなってさ
水の流れる音と自分の鼓動だけの世界になって
プールの底にまで
真っ直ぐに射し込んでくる
太陽の光が
とても勇ましく見えて
なのに綺麗だったから
ずっと眺めていた
今はあのまま
光と水の中でとけてしまえていたらって
考えたりするけど
当時は
息が続くまで潜っては
水面に上がって息を整えて
また潜ってを繰り返してた
なんて言っても遊びが始まってしまえば
すぐにそっちに向かって
夢中で遊んで泳いでいたけれど
最後にプール入ったのいつだったか
最後に水の中に潜ったのいつだったか
思い出せなくなっている
結局
あの綺麗な世界の中へとけてしまえなかった僕は
水の中でもないのに
息苦しい毎日の中を
どうにか過ごしていて
今は
あのプールの底に届いていたような光を求めながら
どうにか生きています
なんてまとめるのは
少し狙い過ぎだなって
現実に戻ったあと恥ずかしくなって
風呂のお湯をかき乱す




