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色なし魔法士は今日もご機嫌  作者: 橘中の楽
最終章 黒竜の儀
97/103

5の十六 ライラがさいごを任せる相手

赤い魔素が増え、春真っ盛りのグレイトブリテン。


さんさんと降り注ぐ日差しの下で、高等部の屋上でいつも通り昼食をとっているライラとデニスとミシェーラ。

話題はほぼ黒竜の儀のことばかりである。

それもそのはず、ジョシュアの指定した日まで三日に迫っていた。


「ーーーみんなで黒の渓谷に向かうビジョンが見えたの。方法は間違ってなさそうね。でも、肝心の御加護をもらえるのかしら…。」


ミシェーラは湧き上がる不安を打ち消すかのように放課後は王宮へと通い詰めていた。

ジョシュアやパーシヴァル、ときにはヘマタイトも加え準備は万全か、黒竜からのメッセージを見落としてないか、自分らの解釈が正しいのか日々確認を行なっているようだ。


皆が神経を尖らせていた。

失敗は許されない。

ジョシュアが魔力の弱まりから計算したらしい今代の黒竜の力が完全に消失するまで、何と、あと一月しか残されていないのだ。


「大丈夫だよミシェーラ。たくさん調査もしたし、ジョシュア様ができるって言ったんだから信じてお任せしよう?」


ライラはそう言ってミシェーラを撫でた。

とろりと溶けた金色に、ミシェーラも釣られたように笑う。


しかしデニスは違うことが気になったようだ。

ライラの魔力が乱れているように感じ…首筋に手を当てて顔をしかめた。


「ーーーライラ、最近熱ある日多いな?」


デニスの声が尖っている。

ライラはバレちゃった?と笑っている。


「フェルの魔法が解けかけてるみたい。ーーー儀式には間に合いそうで良かったけど。」


フェルの最期の魔法はライラの中の時間を止めるもの。

フェルの魔法が解けたら一月ともたずに自分の中の魔素が肉体を破壊するだろうとライラはなんとなくわかっていた。


「ーーーライラ、もっと撫でて。」


気まずくなったような空気を誤魔化すかのようにミシェーラがライラの胸にすり寄った。

ミシェーラを甘やかすことが楽しくて仕方がない様子のライラ。

しかし、そんなライラの瞳に魔素が流れることはない。


ライラをずっと側で見てきたデニス。

最近のライラは王宮に向かうことも多いため、護衛としてついていけるよう、父親に頼んで騎士見習いの試験まで受けた。

最年少合格だと話題になっているのだがーーーライラの命の炎が消えかかっている現状で周りの反応など気にかける余裕などなかった。

騎士見習いとして王宮に入れるようになることだけが重要だったのだ。


デニスはライラが精神的に大人びていることを知っている。

だからミシェーラがいるときはわざと明るく振る舞っていることもわかっていた。

ミシェーラがこれ以上不安にならないようにというライラの気遣いだ。


だからこそ、ミシェーラが休みで二人きりでいたある日。

ストンと表情がなくなったライラを見てデニスは思わず聞いてしまったのだ。


「ライラーーー大丈夫か?」


ライラは不思議そうな顔になった。


「ーーー大丈夫って何が?…黒竜の儀は大丈夫だと思うよ。ジョシュア様に任せておけば間違いないもの。」


しかしデニスはそうじゃないと言った。

ライラの瞳に魔素が流れなくなったことを指摘する。


ライラは自分では意識していなかったらしい。

思ってもみなかったと言うように瞬きした後でーーー寂しげな表情になった。


「家族もさ、フェルもさ…いなくなって初めてどれくらい大切だったか気がつくんだよね。ーーー前と同じに見えるように振る舞ってるんだけど、デニスから見てそんなにわたしは変わった?」


初めて聞かされた内心に、デニスが目を見開いた。

ライラは静かに青空を見つめている。


その、穏やかな横顔に、デニスは妙な胸騒ぎがした。

変わったと思うと頷こうとしてやめた。

今、ライラは少しの刺激で壊れてしまうと思ったからだ。


必死にライラは「前と同じ」でいようとしているのだ。

そしてそれはある程度成功していた。実際にデニスほど注意深く見ている人間でなければライラの変化に気が付かないかもしれない。


ライラは変わった。

デニスにはわかる。

基本はぽーっとしていて、時折ふざけて見せたり、笑って見せたり。

一見すると前と変わらない呑気な子供。

でも、金色の瞳に魔力が流れることはなくなった。

あれほどに感情豊かだったライラは、フェルがいなくなってからガラス玉のような目をしている。


魔力の動きには一番敏感なジョシュアがそのことを指摘した時、ライラは「フェルの魔法のせいですかね?」と答えたらしい。

しかし、本当にそうなのだろうか?


ーーーなあ、ライラ。お前、これ以上傷つくことがないように、心を動かすのをやめたんじゃないのか?


デニスは黙ってライラの横顔を眺めていた。

すると、ぼーっとしているように見えたライラから、衝撃的な発言が落とされる。


それは、デニスにとっては死刑宣告より悪いものだった。


「あのさ、ずっと考えてたんだけどーーーデニス、わたしの魔石を作ってくれない?」


デニスは固まった。

ぴくりとも動かなくなった友人の前で、ライラがひらひらと手を振っている。


「あの、デニス、聞こえーーー」


「おまえ、いまの、本気で言ってるの?」


ぷつん、ぷつんと糸が切れたような気がした。

ライラはデニスの瞳を見つめ返す。


ーーーきっと、噴火の前の火山口に立ったら、こんな気持ちなのかな。


真っ赤な瞳はギラギラと燃えている。

身体の中で煮詰められたデニスの魔力は今にも溢れ出しそうなのに、不思議と魔素一粒さえも発せられていない。


ライラはデニスをいつも通りの顔で見返す。

まるで、ちょっと明日付き合って、とでもいうように、自分の生死をかけたお願いをするのだ。

ライラはそういう人間だった。

不思議なほどに、ライラには死への恐怖という感情がない。


「うん。いろいろ考えたんだけど、わたしは遺書を残すことはしない。ーーーでも、デニスには全部あげるって約束したから魔石をあげる。…自分で魔素を動かして魔力に変換できないからデニスにお願いすることになっちゃうけど。」


ーーーほしくない?


デニスは、世界が、比喩でなく一瞬真っ赤に染まった。

世界で一番愛する人から与えられた、世界で一番残酷な問いかけ。


デニスは、自らの手で、愛する人の体から生きた証を取り出して欲しいと頼まれたのだ。


生きることに執着しろと憤怒すればいいのか。

なぜ諦めているんだと慟哭すればいいのか。


しかし、不思議とデニスは仄暗い喜びにも満たされていた。


ーーーライラが、魔石を預けるのは俺なんだ。


デニスは当然わかっていた。

ライラが本当に魔石を渡したかった相手が自分ではないことを。

それでも、ライラが選んだのはデニスだったのだ。

デニスはしばらくライラを見ていた。

ライラは断られるなどとは思っていないようだ。

何も言わないデニスを見て、キョトンとしている。


「あの、デニス?」


ーーーああ、本当になんでこんなやつを。


デニスは顔を一瞬クシャリと歪ませーーーライラを抱き込んだ。

表情を見られたくなかったのだろう。

ライラは黙ってされるがままになった。


しばし抱き合っていた二人だが…ライラの頭上から、デニスの声が落ちてくる。

意外にもその声は湿っていなかった。


ーーーこんな時にも、かっこつけだなあ。


ライラは苦笑する。

デニスの返答はこうだ。


「ーーー最後までジョシュア様が少しでも黒竜の儀を成功させられるように一緒に足掻こう。…それで、もし器になったお前から魔力が溢れ出てきたら…俺がもらうよ。赤の魔力なら多分固められるし。」


ライラはデニスの胸で笑った。

その声は、会話にそぐわないほどに明るい声だった。良かったとため息を吐く声が少し後悔を含んでいることに気がつかないとでも思っているのだろうか。


「ジョシュア様に頼もうか迷ったんだけど、やっぱりデニスにして良かったよ。」


デニスはライラを見て苦しそうに顔を歪めていたのだが、表情を隠されたライラはそのことに気が付けなかった。



デニスに「お願い」して以来、ライラは晴れやかな表情をするようになった。


ーーーああ、こいつは未練がもうないんだ。


デニスはふざけるなと怒鳴りたかった。

ミシェーラのように悲しげな顔をして欲しかった。

ライラが生きたいと思えなくなるほどの悲しみを与えた現実が憎くて仕方なかった。


眠れないほどに思い悩んで、爆発しそうな魔力を発散させるために魔獣に八つ当たりしたりしてーーー最後に、彼が望みをかけたのは、デニスにとって本当は一番頼りたくない相手だった。


「シャーマナイト様、ちょっとお時間いただけませんか。話したいことが。」


了承の声とともに、プツンと切れた魔力通話を見て、デニスは苦笑いする。


ーーーシャロンのこと、俺はとやかくいえねえよな。…でも結局、望みを叶えてやりたいんだ。


一人だったデニスは屋上から校舎の壁を滑り降りるようにして王宮の方角へと向かった。


たまたまデニスの姿を目撃した生徒たちはあんぐりと口を開けていたそうだ。


「ジーゴプレートやっべえ。」

「デニスくんかっこいい…。」

「ーーーなんて操縦技術。」


ーーーそんなざわめきが聞こえ、ライラはふと空を見上げた。

そして、地竜と見紛うような速度で飛んでいく見慣れた赤い頭を見つけ、不思議そうに首を傾げたのだった。



高等部指定のマントをつけたまま、ジョシュアの離宮に現れたデニス。

ジョシュアといえば、珍しく執務もせずに、一人で何か考え込んでいたようだ。

真っ黒な巨大なソファの中心に座るジョシュア。

彼の前には、まっさらな紙とペンだけが置かれている。

切れ長の瞳は涼しげで、さらりと流れる黒髪は濡れたような輝きを放つ。

でも、デニスは悠長にそんなことを考える余裕はなかった。


というのも、デニスはジョシュアに近づくと、鳥肌が立って仕方がない。


ーーー相変わらずものすごい威圧感だな。


一瞬怯みそうになった自分を叱咤し、デニスはジョシュアの真正面に腰掛ける。


オズワルドが退出していったのを確認した後ーーーデニスはすぐに口を開く。


「シャーマナイト様、俺は質問があって来ました。」


ジョシュアはデニスを見つめ、黙ってうなずく。


了承を得たデニスは、つい三日ほど前に聞いたーーーライラの「頼み」についてジョシュアに語る。


「ーーーというわけなんですが、シャーマナイト様はわたしがライラの魔石をもらってしまっていいとお考えなんですか?」


デニスは、そこで人生で初めてーーージョシュアが青ざめるところを見た。


魔力が乱れ、息ができないほどの黒の魔力が部屋を満たす。


圧倒的な力を目の当たりにして、デニスは思わず平伏したくなった。

部屋の外からは悲鳴、そしてドサっというーーー何かが崩れ落ちたような音がする。

魔力が高いデニスはまだマシなはずだがーーーそのデニスまでもが、息苦しそうに首元を抑えたことで、ようやくジョシュアは自分の魔力が漏れ出していることに気が付いたらしい。

ハッとしたようにジョシュアが魔力を引っ込めた。


デニスは肺に流れ込む魔素が、塗りつぶすような黒から、いつも通りの、透明に赤が混じった色に戻るのを感じる。

ようやく息がつけるようになったデニスは、知らぬ間に額に浮かんでいた汗を拭う。


ピンと背筋を伸ばしたデニスの目に、いまだに青ざめた顔のジョシュアが写った。

人形のような王子の見せる動揺した姿にーーーデニスは鈍感すぎるジョシュアに呆れた。そしてザマアミロと思うのだ。


ーーーライラは自分に全てを差し出すと思ってた?残念だけど魔石を渡す相手に、今時点で選ばれたのは俺だ。


デニスがほんのりと笑みを浮かべたときーーージョシュアがようやく言葉を発した。


「わたしはライラの魔石を受けとることはできないのだな。まあ、ライアが決めることだ。主人だからといってわたしがとやかく言えることではない。」


この言葉を聞きーーーついに、デニスは我慢できなくなったのだろう。

ガンっと自分の膝を殴り付けている。


そしてーーー王族に向けるには、あまりに温度の高い瞳をして、ジョシュアのことを睨みつけた。


「俺が、なんでここにきたと思いますか?ーーーあなたにだけは頼りたくなかった。国民の父だと言って、ライラを突き放すくせに、特別扱いして惑わせるようなあなたには、言いたくなかった!」


ここまで一声で叫び、魔力を沈めるのに神経を使っているのか、ゼエゼエと息を吐くデニス。

そんなデニスを、ジョシュアが驚いたように見つめている。

デニスに言われたことがよほど衝撃的だったのだろう。

こぼれ落ちるように「特別扱い…?」などと言っている。

目を見開いたまま固まっているジョシュアをデニスの赤い瞳が射抜く。


「ーーーでも、俺には無理なんだ。役割をもらえなかった俺には。ライラを助ける方法はわからなかった…黒の魔法に関してあなた以上に詳しい人はいない。…あいつを助けてよ!そんなものわかりよく、悲しそうな顔してる場合じゃねーんだよ。ライラック=ガブモンドは、この世界からいなくなるって言ってるんだよ!?あいつのいない世界に生きる意味なんて見出せるの?」


魔石よりも、一番になれなくても、ライラと過ごせる日常がいい…デニスの呟きが、豪勢なジョシュアの自室に響く。

しんと静まり返った室内。


永遠にも思える沈黙の後ーーージョシュアがポツリとつぶやいた。


「ーーーおまえとライラはパートナーではないのか?デニスの言い分では、まるで、わたしが君たちの間に入っていっていいように聞こえる。」


はあ!?と声をあげたデニス。

その反応を見て、ジョシュアは自分が大きな誤解をしていたと悟ったらしい。

だいぶ周囲の感情にも聡くなってきたとジョシュアは言われているが、それでもまだ彼にはこういうところがある。


顔をしかめたままのデニスにーーージョシュアが再度問いかける。


「それで、なぜライラはわたしにその話を持ってきてくれなかったんだろう?わたしは儀式の最後まで意識を失わない役目だし、何より陣の中に既に入っているだろう?ーーー役割を持たないデニスより、適任だと思うのだが。」


淡々と告げられた言葉に、デニスは絶句した。

そしてジョシュアの表情を見て、からかいでも嘲りでもなく本気でジョシュアが疑問に思っていることがわかった。


ーーーああ、この人は、「心」がわからないんだ。


デニスはなぜ自分がこんなことを説明しなきゃいけないんだと内心毒づいたがーーー自ら足を運んだのはデニスだ。諦めたようにため息をつきジョシュアに向き直る。


「予想でしかないですがーーーライラは自分のせいでシャーマナイト様がこの先の未来で思い悩むことがないようにしたいんだと思います。あなたのお母様…第二王妃様のことを知ったとき、あいつ、誰より悲しそうな顔してたんで。ーーー同じように、遺された魔石を見てライラはわたしのせいで死んだって、そう思うことがないように俺に役目を任せた。」


これでわかりましたか?そう言ったデニスにーーー向けられたジョシュアの顔に、デニスは、場違いにも吹き出してしまった。


ジョシュアは状況を理解できたのだろう。

不思議そうだった先ほどまでの表情はもう消え去っている。


そして、自分が頼られなかった事実とーーー最後にライラの願いを叶えることができるデニスに、はっきりと憎悪の顔を向けていた。


「ーーーその役目、わたしが代わりたい。」


ぼそっと言ったジョシュアに、デニスは笑いながらいった。


「それは本人に言ってください。ーーー多分断られますけど。あいつも結構頑固だし。…それより、シャーマナイト様、あなたは何よりも大事な役目があるじゃないですか。」


ーーー儀式を成功させて、ライラも、他のメンバーも、そして、この国を救ってください。


キッパリと言い切ったデニスにーーージョシュアはふっと表情を緩ませた。

そしてひとつうなずく。


「任せてくれ。ーーーライラは、病気のこともあるから、絶対に助けるとは言えないが、最善を尽くす。…下手な希望を与えたくないので口外していなかったが、パーシヴァルたちが廃人にならない道も見えてきた。ーーーそれはそうと、デニス=ブライヤーズ。お前、黒竜の儀が終わったら正式に騎士となりわたしの下で働け。」


そこでジョシュアから告げられた言葉に、デニスは「ヘッ!?」という気の抜けた声をあげた。


「今そんな話してましたっけ。」


「ーーー?話してはいけないことなどあったか?」


デニスは困惑した顔になる。

しかし、ジョシュアに「話の流れ」などないのだ。

彼は自分のやりたいことをやる。欲しいものを手に入れる。

今、きっと「デニスが欲しい」と感じたのだ。

ただそれが口から出たと言うだけのこと。


「え?え?なんでですか!?だって、俺はまだ父さんに剣術で叶わないし、兄さんたちの方がーーー」


言い募ろうとしたデニスを、ジョシュアが視線で黙らせる。


「ーーーお前は、人の心を照らし、良い方向に導く才能がある。黒竜の儀に向けて悩む我々を的確なアドバイスで助けてくれた…わたしの治世で、その才能を生かしてますます騎士団をいいものに変えていってくれ。謙遜しているが、数年もすれば実力も追いつくだろう。それに、これが一番大事なことなのだがーーーお前は、わたしに意見することができる貴重な存在だ。これからも頼むぞ。」


突然のことに目を白黒させていたデニスだが、ジョシュアの真剣な表情を見てーーーピンと姿勢を正した。

また、デニスにとっては悔しいことに、ジョシュアに認められると涙がでそうなくらいに嬉しかった。

湧き上がる歓喜の気持ちに、デニスは苦笑いする。


当たり前のように、黒竜の儀の先を語るジョシュアを見てーーーデニスは、ジョシュアの器の大きさを感じた。


自信に満ちて、どんな困難な状況でも、周りを安心させる。

誰もが仕えたいと、その目に写りたいと望まれる存在。


ーーーこの人は、王になるべくして生まれてきた人だよなあ。


デニスは、ジョシュアの言葉に行動をもって答えた。


ザッと膝をつき、剣を突き立てる。


「ーーー全てはシャーマナイト殿下のお心のままに。」


宣言の後ーーーデニスは顔をあげた。そして、無表情になって言う。


「あの、ライラのことは全く諦めたわけじゃないので、『頼み』も譲りませんし。そこのところはよろしくお願いします。」


ジョシュアは愉快そうに眉を少しあげただけで何も答えなかった。

でも、デニスは気がついてしまった。

ジョシュアの顔が先ほどまでとは全く違っているように見えた。

自信に満ちたその姿はマスキラのデニスから見ても、見惚れるほどにかっこよかった。


「あーあ、藪蛇どころか藪から竜が出てきたよーーーやってらんねえ。」


不満げに口を尖らせつつも…デニスの表情は晴れやかだった。


ーーーあとはお互いが気がつけばいいだけか。


デニスは思った。

黒竜の儀が終わってみんなが助かって。

ライラとジョシュアには幸せになって欲しいと。


ライラは一人のマスキラとして惚れた人間。

ジョシュアは一人の魔法使いとして惚れずにはいられなかった人間。


どちらもデニスにとっては大切な人だ。


その幸せに自分が含まれていないことに寂しさを感じつつも、デニスは笑って部屋を出た。

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