ライラとパーシヴァルの冬休み~前編〜 (???視点)
内容としては本編に大きく関係しているのですか、視点がいつもと異なるため幕間扱いにしています。
マイペースすぎる面々に振り回される〇〇〇さんのお話をどうぞ。
白と黒の二人がボクのところにやってきたとき、まずは変な組み合わせだなあと思いました。あとは、なんでジョシュアはきてないのって。
ほぼ真っ黒な髪をしたのはよく知っているパーシヴァル。
黒の加護をいっぱい背負って生まれた人間です。
この世界では二番目のお気に入りかなあ。
黒って綺麗ですよね。いっつも悲しそうな顔をしてたけど、ボクのもとに亡骸を運んできて「人間になりたいんだ」って言った時は気が狂ったかと思いました。
正気だったけど。
破壊しか考えていなかった黒に感情を教えた秀策はすごいと思います。
「黒が綺麗だ」って言って死んでいったのもいいですね。黒は飛ぶのが苦手だけど、その分綺麗な鱗と大きな美しい体を持っています。
そして飛ぶのは苦手だけど、人間が関わると黒は相変わらず器用だなあと思います。千年経ってもパーシヴァルやジョシュアにここまでうまく自分の加護を混ぜれるんだから。ボクにはできない芸当です。
さすが人間になりたがった奇妙な竜なだけのことはあります。ちょっと羨ましいななんて思ったりして。
話がそれました。
ボクは自分の国のキングが嫌いなので加護は打ち切るつもりでいました。
ミーティアウィーク以外は竜の力はいらないと思っているようです。
生まれてくる子供に魔法がなくなることを知らないのかな?とおかしくなりました。
そんな愚かなものたちも黄色のが消えて焦ったようです。でも知らない、手の平返し?ボクのそんな舐めたマネが通じると思ってもらっちゃ困ります。
ーーーいけませんね。つい感情的になりました。
ボクは二十年前にジョシュアが生まれたことに気がついて黒の国に行きました。
ちっちゃい頃は守ってあげたりもしました。人間の赤ん坊は驚くほどに弱いから。
まあ、すぐにジョシュアは自分で自分の身を守れるようになりましたけどね。
ボクは職業柄人間に詳しいです。
治癒院なんてやってます。…キングは嫌いだけど、この国は好きなんです。あの子と一緒に作った国だからね。今のキングはそもそもあの子の直系の子孫じゃありません。加護が薄れすぎて壁を守れなくなってきているそうです。ザマアミロ。
…話を戻します。ジョシュアは人間の中でもうんと賢いってすぐにわかりました。
だって零歳でボクと意思疎通がはかれたんですよ?
一歳で「まほうみちぇて」って言われたときの感動はよく覚えています。
黒が生きてたら一緒に喜んでいたことでしょう。
でも、ジョシュアは一人ぼっちでした。
ボクは隠れていましたが、人間の大人たちはジョシュアを神様か何かだと思っているのかな?と思います。
ジョシュアが言えば黒いものも白くなる。
ジョシュアを泣かせたという理由だけで使用人が何人も辞めさせられていました。
ジョシュアは使用人がいじめられていることに気がついて泣いていただけなのに。
人間たちがジョシュアには感情がないと噂しているのを聞いたときは思わず声をあげて笑いました。
君たちがそうさせたんだよ?ジョシュアが泣けば周囲の人間がクビになり、ジョシュアが笑えばその人が出世もしくは妬みで抹消される。
ジョシュアは賢かったですが、所詮は子供。
どうしていいかわからなかったのでしょう。
とにかく無表情でいるのがいいと結論づけたようでした。
人間って笑わないと本当に感情がなくなっていくんですね。
ジョシュアの母親が亡くなったとき、ジョシュアの心が壊れる音が聞こえた気がしました。
パリンって。
それ以来、ボクは「もうわたしは大丈夫だ」とジョシュアに言われてしまったので遊びに行っていません。
ーーーまあ、ボク自身終わりが近いみたいであまり自分の国以外に行きたくなくなったっていうのもあります。黒の国は魔素まで黒いからちょっと息苦しいんです。
ジョシュアは多分気がついていたんでしょう。
笑わなくなった顔で「もう来るな」と言ってきました。
でも寂しそうだったのでたまに子供たちを使いを出してあげています。黒の魔素がゆらゆらって揺れてたって報告を受けるので喜んでいるのがわかります。
喜び方が黒に似ています。やっぱりジョシュアは可愛いです。
そんなボクのお気に入りのジョシュアが、愛してやまない存在がいます。
パーシヴァルです。
ジョシュアとは腹違いの兄弟でちょっと青が足りなかった人間。
でもかなり黒いです。親近感を感じるのかジョシュアはパーシヴァルが大好きです。
ボクから見てもかなりパーシヴァルは嫌がっているように見えましたが、ジョシュアはお構いなしです。
二人は五年歳が違うそうです。人間って五年違うと大きさが全然違います。
だからパーシヴァルはいつもジョシュアにされるがままになっていました。
はじめは無表情で近づいてくるジョシュアが怖かったのか乳母にパーシヴァルは泣きついていました。
でも、やがてパーシヴァルも一人になりました。パーシヴァルの母親がちょっと…いえ、だいぶ頭のおかしい人間だったのでパーシヴァルと仲がいい使用人を次々に辞めさせていました。
自分の言うことを聞かせたいようでしたがパーシヴァルは全てわかっているようでした。子供は大人が思っているよりも賢いのです。黒の子は特にね。
消去法でジョシュアしか味方がいなくなってしまったパーシヴァル。
助けられるたびにものすごく不服そうな顔になっていました。
ジョシュアはよく「パーシヴァルはいい子だ」と言いますが、いい子は多分ジョシュアのお気に入りの魔石を叩き割ったりしません。
ジョシュアが嫌いそうだからって甘味ばかり食べるのにも呆れました。
ジョシュアも食べてたけど。「パーシヴァルと同じものを。」って言いたいんだそうです…後で吐いてたときは本気で馬鹿なんじゃないかと思いました。
でも、今回ボクに依頼をするきっかけになったのはパーシヴァルだというじゃありませんか。
誰かを助けたいとか。治癒の巫女の紹介で治癒院の方へと連絡が来ました。
あのひねくれ者が…見ていなかった数年間に何があったのでしょう?
ボクが治癒魔法を使えることはジョシュアには一切話していません。
だから入国するためにたまたまボクに連絡してきたジョシュアにびっくりしました。
考えを読まれたのかと疑いましたが、黒を少しでも持っていると紫系の魔法は使えないんです。黒がそう言っていたので間違いありません。
だからボクができすぎた偶然を不思議に思ってーーー白い頭と…一緒にいる金色の蛇を見てものすごく納得しました。
引きあったんですね。やっぱり黒は器用です。
ボクは金色の蛇に喜んで念話を飛ばしました。
でも帰ってきたのは「後で話すから初対面のふりしてくださいませんか?」っていうつれない返事。
ムカついたので無視しようかと思いましたが、金色がとっても必死なのがわかったので我慢してあげました。
金色がとっても大切そうに魔力でつながりを作っている人間。白って呼んだらパーシヴァルが怒ったので名前を覚えました。「ライラック」というそうです。
「ライラを治癒院で見せたいんだ。ーーーこれがシャロンからの紹介状。」
ボクに向かって治癒院への紹介状を出すパーシヴァルがおかしくて笑いそうになりましたがボクはすまして受け取りました。千年近く人間と一緒に暮らしていますから。演技だってお手の物です。
でも、ここでびっくりするようなことがおきました。
白ーーーじゃなくてライラックがボクを見た瞬間固まって泣き崩れたのです。
「白金竜様…お会いできるなんて。…ああ、なんて幸運。誰に感謝すればいいのでしょう。」
ボクを見て泣くライラック。
フェルは「あちゃあ、やっぱ気がつくよね」と呆れ顔。
パーシヴァルは固まっています。あ、そうでした。この子ボクの正体知らないんでした。
ジョシュアが言っておいてくれるかと思ったんですが、ジョシュアにそんな気遣いはできませんね。どうせ「知り合い」とでも言ったのでしょう。相変わらずです。不器用なのも黒に似て可愛いですね。
とりあえず混沌としてきたので空間転移してボクの自室に帰りました。
フェルに目配せしたら隠蔽魔法かけてくれたので周りにはバレていないでしょう。
パーシヴァルは半信半疑の顔でしたが、ボクの転移魔法を見て疑いが確信に変わったようです。
「本当に竜かよ…え、白金竜って行方不明なんじゃなかったの?」
混乱するパーシヴァル。言っちゃダメだよ、って「契約」させました。便利な魔法持ってましたからね。パーシヴァルは契約が得意みたいです。
「なんで?姿を明かさないの?」
パーシヴァルは目を開けたまま泣き続けるライラックを隣に座らせて普通に会話を始めました。
ボクの方が戸惑ったよね。え、ほっといていいのって。
「よくあることだから。三日くらいすれば泣かなくなるだろ。」
ボクは「?」となりました。人間のことはだいぶわかったつもりでしたがまだ理解できないところがあったようです。
ちなみにライラックとは契約できませんでした。蛇の執着が絡まってましたので。まあ、蛇の方と約束したので平気でしょう。魔獣同士は上下関係がありますからね。
さてさて可愛いパーシヴァルの質問に答えてあげないといけません。
ライラックに上着なんてかけてあげて…あのヤンチャっ子がすっかり丸くなった経緯も聞かないと。
「なんで姿を明かさないのか?キングが嫌いなんだよ。ジョンをほとんど根絶やしにしといてボクの加護だけ受けたいって?ーーーゆるすわけないよね。」
ちょっと怒ったら魔力が溢れすぎました。
パーシヴァルが黒の魔力を咄嗟に放っていなかったらライラックはちょっとまずかったかもしれません。
フェルにはガチギレされました。当のライラックが「プラチナ様の魔力感じてみたかった…。」と残念そうにしていたのがおかしかったです。
ーーーライラックってかなり変わった人間な気がしてきました。パーシヴァルの次に連れてきたのがライラック…ジョシュアはちょっとクセがある人間が好きなのかもしれません。
しかし、パーシヴァルはボクの言葉を聞いて「なるほど」と言っていました。
不思議に思いましたが…ボクに会う前に王宮に行って一悶着あったそうです。
「門前払いを食らったんだよ。一応王位継承権三番目だっていうのに。」
パーシヴァルは口ではそう言っていましたが内心王宮に入ることがなくて良かったと思っているようでした。
しかし、号泣しているだけだったライラックがそこでピタリと泣き止みました。
すんと温度のなくなった瞳。
…やけに魔素の流れる瞳ですね。魔獣みたいです。金蛇の影響でしょうか?
ライラックは怒り心頭といった表情で立ち上がりました。
すぐに「興奮すんじゃねえ」といってパーシヴァルに優しく引き戻されていましたが。
優しく、引き戻されていました。二回言いたくなるくらいにはびっくり。
ーーーねえ、ほんとにパーシヴァルに何があったの?キングはどうでもいいからそっちがボクは聞きたいです。
「あいつら、パーシヴァル様のことを侮辱したのです…フェル、やはり戻って塵にしてきましょう。」
「やめろ。そういうキャラで通ってるんだよ。舐められてた方が都合がいいことも多いだろ。」
その辺りでライラックの魔力の乱れがいよいよ怪しくなってきました。
フェルに念話を送ります。
フェルはハッとしたようにライラックを寝室へと連行して行きました。
治癒院ですからね、ベットは有り余っています。
浮遊魔法まで使って丁寧にライラックを運んでいく金蛇。
以前の黒と一緒に暴れまわっていた魔獣と同じ個体でしょうか?
驚きました。でもなんとなくの予想はつきました。
聞かないであげましょうかね。約束で命が絶たれたらかわいそうですし。
ライラックが退場したところでパーシヴァルに何があったのか聞くことにしました。
「なんか丸くなったね?」
あえて直球。前だったら確実にヘソを曲げていましたがーーーなんと、曲がったのは口だけで不服そうにしながらも質問に応えてくれました。
「大事なもんが二つできたんだ。一方は国にいるけど、もう一方は見た通り。ーーーいつ死ぬんじゃないかと思って正直気が気じゃねえ。」
はあ、と息を吐き出したパーシヴァル。
あらあらあら。
ジョシュアの前にパーシヴァルが大人になったようです。
ジョシュアは中身はまだまだ子供ですからね。そこが可愛いんですけど。
「治癒院を訪ねてきたのはライラックを見せるため?」
パーシヴァルはうなずいた後で「実は他にも用があった」と言いました。
なんでしょう?
「ジョン・スノウと約束してるんだ。ーーーいや、依頼って言った方がいいかな?王族の何人かが使役獣と契約したいらしくて… だから俺専属の使役術師を連れてきた。上位魔獣と契約できる使役術師が一人もいなんだと。どんな国だよ。」
数年前から国王へと打診が来ていたのだがグレイトブリテンに利益がないからと後回しにされていたらしいです。
そして今回パーシヴァルがベルギー王国に行きたいと言ったため、ジョシュアがこの依頼を引っ張り出してきたのだそうで。
ボクは呆れました。我が国の王族ながら、自分で呼んでおいて門前払いするとはどこまでアホなんでしょう。
「国際問題になってもおかしくないですね…寛大な対応、パーシヴァルに感謝しましょう。」
ボクが言うとパーシヴァルは胡散臭そうな顔になりました。
「ーーーキングは嫌いって言ってたのに感謝するのか?」
パーシヴァルの疑問にボクはなるほどと手を打ちました。
そういえば説明していませんでした。
「ジョン・スノウは正真正銘、建国の魔法使いの直系なのです。だからジョンが王宮にいるうちは謝罪もしますよ。ジョンは可愛いボクの弟子ですからね。」
ジョンはいい子なので孤立奮闘、王宮で頑張っています。
ほぼ軟禁状態、ミーティアウィークだけ働かされて他の時間は王族の回診しかさせてもらっていません。
ボクはいつでも助けてあげるよ?と言ってるのに「わたしがいないと罪のない国民が死にますから」って言ってずっと役目をまっとうし続けています。
ボクが思い出し怒りなるもので、魔力を揺らしたので慌てたようにパーシヴァルも黒の魔法の用意をしていました。器用ですね。
困ったなと言うパーシヴァルにボクは約束してあげました。ジョン・スノウを連れてくるくらい朝飯前です。
「バレたら不味くないのか?」
パーシヴァルはそう言って心配そうな顔になりました。
ボクを心配してくれているようです。ひねくれてますがいい子ですね。
でも、ボクは笑っちゃいました。
だってーーー
「使役術師もいないような国の魔法使いがボクの侵入に気がつけると思いますか?」
ボクはえっへんと胸を張ります。
しかしパーシヴァルはイマイチ納得がいかないようです。
「隠蔽魔法が得意そうには見えないから心配してるんだけど。」
「…。」
ちょっと黙ってしまいました。
確かにボクはプラチナなんて呼ばれてるだけあってびっくりするくらい綺麗ですし、魔力もあまり隠すのには向いていません。
今までばれたことはありませんが…ちょっと見られたことがあるのも事実です。ジョンに怒られました。今まで忘れていましたが。
黙ったボクを見て、パーシヴァルが素敵な提案をしてくれました。
「俺が行ってこようか?」
ボクはびっくりしました。
怠惰だったパーシヴァルがちょっと懐かしくもあります。
びっくりして目を見開いているとーーーパーシヴァルが悪い顔になりました。
あ、これは見慣れた顔です。ジョシュアが嫌々甘味を食べているときにこの顔をしていました。
「正規ルートでいくと晩餐会とかあって面倒くせえと思ってたんだよ。ーーーちゃあんと前から行って断られたんだから仕方ないかなって。…国王には怒られそうだと思ってたんだけど、ジョシュアからお前に許可もらったって説明してもらう。」
この発言にーーーボクは趣旨とは外れたところが気にかかりました。
「いつの間にジョシュアと仲良くなったんですか!」
バーンと机を叩いたボク。
パーシヴァルはすごく嫌そうな顔で「仲良くはなってねえ」と否定しました。
でも、納得いかないボクは説明を求めてパーシヴァルに詰め寄ります。
パーシヴァルは渋々と言った様子でしたが心境の変化とそのきっかけを話してくれました。
「大事なもんができて…黒竜さまからもらった役割を自覚したんだよ。ーーーで、過去に囚われて怠けてばっかいられねえなって。そしたらジョシュアの馬鹿さ加減が前以上に目に入ってきてさ。…なんかハッとしたわ。俺らはこんな不完全な人間に全部背負わせようとしてるんだって。」
苦笑いしたパーシヴァルは完全に「国を背負う覚悟をした王族」の顔をしていました。
ボクは年甲斐もなく感動してしまいました。あの、パーシヴァルがここまで変わるなんて。
「人間はこれだから愛しいんですよねえ。」
ボクの呟きにパーシヴァルはキョトンとしました。そういう顔は子供っぽいです。
「とりあえずプラチナ様からジョシュアに連絡してくれない?俺、前の行動が酷すぎて国王から信頼されてないんだわ。」
「この通りだ。頼む。」パーシヴァルはそう口にすると正式な礼をとってきました。
首を捧げる綺麗な礼です。普段はグダッとしていますがこういった動きを見てるとやっぱり王族だなとちょっと感心します。
他国の「お願い」などジョシュアからの以外は聞いたことがないボクですがーーージョン・スノウが絡んでいるので仕方なく聞いてあげました。
窓から外を見てーーーちょうど散歩がしたいと拗ねていた竜がいたので伝言を頼みました。
ーーーグレイトブリテンには魔力通話なるものが普及しているそうですね。とっても便利そうなのでこの国でも普及して欲しいです。
銀色に輝く竜が自分の国へと旅立っていくのを見て、パーシヴァルはちょっと顔を引きつらせていました。
時計を見て「着く頃には夜だから平気…か?」と首を捻っています。
そこで他の人間に連絡しないのがパーシヴァルらしいでしょう。
まあ、誰かどうにかするだろといわんばかりの様子でくつろぎの態勢に入りました。
ボクはまだまだジョシュアについて聞きたかったのでパーシヴァルを問い詰めようとしてーーー
キュルルルルル。
パーシヴァルのお腹から可愛らしい音が聞こえました。
王族としては恥なのではないかとちょっと思ったのですが、当のパーシヴァルは全く気にしていないようです。
「腹減ったな」とお腹を抑えて言いました。
「いつもレイモンドが全部やってくれるから自分で飯食うの忘れてた…。」
ーーー食事って忘れるものなのでしょうか?こういうところは怠け癖が変わっていないようです。
ボクは呆ればがらも何が食べたいのか聞いてあげました。
パーシヴァルは子供のように目を輝かせて「チョコレート!」と言ってきました。
「ベルギー王国のチョコレート食べてみたかったんだ。」
目をキラキラさせて言うパーシヴァル。
確かにべルギーでチョコレートは有名ですが…よっぽど好きみたいです。
近くにいた使用人を呼んでお使いにいかせます。
すぐに机に乗り切らないほどのチョコレートが並びました。
パーシヴァルは目を輝かせています。
しかし、チョコレートしか頼まれないことに困り果てた使用人たちが「夕食のお時間なのですがどうしましょう?」と聞いてきました。
ボクは食べるフリをしなければいけないので頼みますが、肝心のパーシヴァルはチョコレートに夢中なようです。
一応確認しましたが、宝石のようなショコラに視線釘付けのままで首を振っていました。
「うま…。」
一粒一粒幸せそうに頬張るパーシヴァルにボクはちょっと癒されました。
使用人たちはちょっとじゃなく癒されたようです。その後も続々と、明らかに渡した以上の金額のチョコレートを買ってきていました。王都で買える全種類買ってきたんじゃないでしょうか?
流石に食べきれないと思ったのかパーシヴァルが眉をハの字にして「もういいよ」と困り顔になっていましたが、使用人たちは「お土産にどうぞ」とかわいらしくラッピングまでしていました。
パーシヴァルは少し嬉しそうです。かわいいものや綺麗なものが好きなのでしょうか。
ーーージョシュアにしか興味がなかったはずのボクがパーシヴァルまでちょっと愛らしく見えてきました。黒の子孫恐るべしです。
今回はジョンへの依頼ということで…ボクが治癒魔法をかけてあげるつもりはなかったのですが、ちょっとサービスしてあげてもいい気がしてきました。
翌日、復活してきたライラックに再度号泣された後でーーー帰ってきた竜によってGOサインが出たパーシヴァルは楽しそうに王宮へと走って行きました。
金蛇もついて行ったようです。浮遊魔法を使うのだと言っていました。
出発の時にライラックが不思議そうな顔で「わたしからフェルが離れるの珍しいな?」と首を傾げていました。
フェルは「始祖竜のそばより安全な場所なんてないからね」と答えていました。ライラックは羨望のこもった眼差しでわたしをみてきました。いや、いつもその目を向けてきていますね。
二人きりになるとーーーライラは意を決したように跪きました。
「畏れながらーーーひとつだけ伺ってもよろしいでしょうか?」
ボクはうなずきました。暇ですしね、答えるくらいなら構いません。
「あの、竜のお姿になることはあるのでしょうか?記念式典やーーーそういった機会があればぜひまた来国したいと思いまして。」
ライラックは俯いています。一度も目はあっていないのですがーーーちょっと震えているのはわかりました。
怖がられるのに離れていますがーーーこの人間の震え方はちょっと違う気がします。
なんだか…そう、とっても嬉しそうなんです。
変な人間だなあと思いました。だって、大体の人間はーーー
「ボクのこと怖くないの?」
ボクの言葉を否定するようにライラがフルフルと首を振りました。
平然とそばにいるからもしかして、と思いましたがやっぱりあたりでした。
ボクの魔力を感じても普通に立っていられるようです。
「怖いとは思いません。ーーーこんなに輝いている魔力を初めて感じました。眩しくて目が潰れそうなんですが見ていなきゃもったいないなって。」
金色の瞳に全種類の魔素を流して言われれば、言葉の真意など伺うまでもありません。
…ちょっと心配になりました。王宮なんていうのは人間の悪意が形になった場所みたいなものです。こんなにわかりやすくて大丈夫なんでしょうか?
ボクはちょっと考えました。
何しろボクはかれこれ五百年くらい姿を隠しています。
少し考えてみましたが、姿を見せるのは無理だよと言いました。
でも、次の瞬間金色の瞳が悲しみの色に染まるのを見てーーー思わず反対のことを口にしてしまったのです。
ーーー言い訳させてください。思い出してしまったのです。ボクの力でも秀策は生き返らないと言った時の黒の目を。
あの子の目は青。
ライラックの目は金。
全く違う色なのになぜか重なって見えました。
「ーーーっ。人気がない場所でフェルの隠蔽魔法つきで一瞬ならいいよ。」
ライラは文字通り喜びで魔力を爆発させーーー興奮でぶっ倒れました。
ちょっと鼻血が出ていました。
使用人たちが真っ青になってライラックを運んで行きました。
しかしライラックはうわ言のように「生きててよかった…。」と呟いていましたので、怪訝な顔をされていました。
やっぱり変な人間です。
その後ジョン・スノウを伴って戻ってきたパーシヴァルがライラックが倒れたと聞いて真っ青になり…興奮のし過ぎが原因だと知って説教していました。
「お前はすぐ倒れる癖をなんとかしろ!」ーーーそうベットサイドで怒っていました。
ライラックがニコニコしているように見えたのは気のせいでしょうか?
完全に放置されたジョン・スノウがかわいそうだったのでボクは紅茶を勧めてあげました。
ジョン・スノウは山積みにされたチョコレートの箱を見て目を剥いています。
「なんでこんなにチョコレートの箱が?プラチナ様は食べないでしょう?」
首を傾げているのでパーシヴァルのためだと言ったらひどく納得した顔になっていました。
「とっても綺麗な…魅力的な方ですよね。わたしもはじめて会ったときはちょっと見惚れました。」
美形はプラチナ様で見慣れてると思ったんだけどな、とジョン・スノウは首を傾げていました。人間というのは顔の造形が好きですよね。その辺は何年経とうとボクにはわかりません。魔力の綺麗さの方がずっと気になります。
そして頷いていたジョン・スノウですがーーーボクを見て何か言いたげな顔になりました。
「なんでそんな顔をしている?」
「ーーーいやだって、聞いたでしょう?あちらのお願い。治癒魔術って…あなたの前でわたしに治癒魔法をかけろと?」
自分より適任がいるのにおかしいではないかーーージョン・スノウはそう言いたいようです。
ボクは笑って流すつもりでしたがーーー少し気が変わったのでジョン・スノウを手招きして耳打ちします。
ジョン・スノウはびっくりした顔になっていました。
ーーーまあ、ボクが自ら治癒魔法をかけるのは滅多にありませんからね。
聞き耳を立てていたらしいフェルもポロポロと魔石をこぼして喜んでくれました。珍しいことに床に首までつけてくれるとは…あのプライドが高かった金蛇が。
「これで、ライラの時間が五年は増える…。」
そう言って泣いていました。よっぽど嬉しかったみたいですね。
彼らを見ていてーーーボクはちょっと寂しくなりました。
黒の子孫はこんないいい子なのに。うちの王族ときたら。




