2の十九 スタージュエリー
ライラはパーシヴァルと連絡を取り合いながら、一週間、ジョシュアの離宮に通い続けた。
学園の授業があったため、ゆっくりと話したのは初日だけだったがーーーオズワルドと連携しながら、掃除や食事の用意などジョシュアのために働いた。
九月の最終日、ライラがジョシュアの離宮を訪れると、肝心のジョシュアの姿は見えなかった。
首を傾げたライラにーーー金髪碧眼のフィメル、アイリーンが歩み寄る。
アイリーンが差し出したのは、青いリボンが巻かれた箱だった。
「ジョシュア様は回復されて、執務に戻られたわ。ーーー開けてみなさい、ジョシュア様からのプレゼントよ。一週間のお礼だって。」
ライラは箱を受け取ったあと、しばらく固まっていた。
そんなライラを、アイリーンがなぜかデコピンした。
いたっ!?と驚きの声をあげたライラだがーーーアイリーンがピシャリと言い放った。
「早く開けてみなさいよね!?私たちと箱の大きさが違うのよ!」
大きな瞳を釣り上げて怒るアイリーンに急かされ、ライラは慌ててリボンを解いた。
出てきたのは、魔石をくり抜いて作られた黒の指輪だった。
よくよく見ると、側面には微妙に色合いの違う星型の魔石が散りばめられており、ミーティアウィークのスタージュエリーだとライラは気が付く。
ライラはその指輪を魔力灯にかざしてみた。
わずかに光を通すその指輪からは、不思議とジョシュアの魔力を感じる。
ーーーこれ、何だろう?
ライラの疑問に答えたのは、指輪を見た途端にワナワナと震え出したアイリーンだった。
「黒竜さまの鱗じゃない!ちょっと見せて!!」
ライラの手から指輪を奪い取ったアイリーンは、様々な角度から黒の指輪を見聞し、やっぱりそうだわ、などと納得している。
ライラはそんなアイリーンの態度にたじたじだ。
押しが強い、年上の美人に圧倒されていたのだ。
アイリーンは満足したのか、はい、と言ってライラに指輪を戻した。
ライラは受け取り、カバンにしまおうとしたところでーーー再びアイリーンがダメ!と静止の声をあげた。
…しまってはダメらしい。
ライラは、びくりと震えつつも、カバンに突っ込んでいた手を止める。
「うらやましいわ。わたしが欲しいわ。ーーーものすごく貴重な品だから早くはめちゃいなさい。ジョシュアさまの贈り物には、不失の魔法が刻まれてるから、一度つければまず無くさないわ。ほら、早く!」
自分よりも小さいフィメルに圧倒されながら、ライラは右手に指輪をはめた。
アイリーンの言葉通り、ライラの指にはまった途端、指輪はサイズが変わり、ピタリとくっついたように感じた。
ライラは感動したように右手を見つめていたがーーーアイリーンがずっとライラを見続けていることに気が付いた。仕事の邪魔なのかと思い、すぐにその場を立ち去ろうとする。
ーーーしかし、ライラはガシッと肩を掴まれた。
アイリーンは、ライラが帰ることを許さなかったのだ。
非常に良い笑顔でライラに詰め寄る。
「ーーーちょっと、顔貸しなさいよ。」
細腕にどうしてこれほどの力があるんだろうと思うような勢いで、ライラはアイリーンの自室だという、赤の家具で揃えられた可愛らしい部屋へと連行されたのだった。
ソファに座った二人。
アイリーンにじろっと睨まれているライラは、冷や汗をかいていた。
ーーー新人いびり的な?生意気だって言われるのかな?
気まずい沈黙の落ちる部屋。
目をさまよわせるライラにーーーアイリーンがようやく口を開いた。
「どっからどう見ても、パッとしない色なしなのに、何でOZさんに信頼されてるの?ーーージョシュア様も気に入ってるみたいだし…うらやましいわ!!」
バーンと机を叩いて立ち上がったアイリーンを、ライラがまあまあ、と言ってなだめる。
アイリーンの見た目もあり、傍目から見るとどちらが年上かわからない。
ライラはしばらくアイリーンの文句を黙って聞いていたがーーーどうやら、自分が嫌われていたり、いじめられる目的で呼び出されたわけではないと察し始めた。
そこで、アイリーンの話が途切れたタイミングで、ライラはようやく自分の言いたいことを口にできた。
「アイリーンさんは勘違いされているようなのですが、わたしは側近にはしていただけません。断られていますからーーー黒竜の儀が終わるまでの2年程度、お側に置いていただいているだけです。」
苦笑いするライラをーーーアイリーンは、なぜか鼻で笑った。そして、自分の右耳につけられたピアスに触れる。
「断られた?ーーーわたしなんて、このピアスをいただくまでに、何十回と断られたわ。最近になってようやく、情勢が落ち着いたら考えても良いって言ってもらえたの…ジョシュア様は側近を増やしたがってないけど、根気強くいけば側近にしてくれることもあるのよ。」
ーーーはじめからチョーカーなんてもらっておいて、弱音なんて吐いてるんじゃないわよ!張り倒すわよ!?
そう言って、なぜかアイリーンに怒られたライラ。
しかし、ライラもここまでくると、アイリーンが自分をどうやら元気付けようと、お茶会に誘ってくれたのだと理解し始めていた。
二人はしばらく語り合いーーーアイリーンがジョシュアに呼び出されたところでお開きになった。
「アイリーンさん、いろいろ教えていただきありがとうございました。ーーージョシュア様にも、お礼をお伝えください。」
仕事のついでだと言って、竜門までわざわざアイリーンは見送りに来てくれた。
終始不機嫌そうに眉を寄せていたアイリーンだが、最後にはちらりと笑顔を見せた。
また会いましょうと手を振りあって別れる二人。
移動プレートに乗り込んだところでーーーずっと魔石を食べるばかりで、黙っていたフェルがつぶやく。
「騒がしい人間だったね。ーーーライラ、大丈夫?」
「大丈夫だよーーー優しい人だったしね。」
フェルを撫でながらーーーライラはアイリーンの見せた不器用な態度…特に最後の笑顔を思い出し、クスリと笑ったのだった。
◯
キラキラキラ…ドーン!
太陽以外に、無数の魔石の煌めきが空にあふれる。
十月一日。
ミーティアウィークの始まりの日に、ライラは魔石の音で目を覚ました。
いつもより早めの時間に身支度を終えたライラ。
ケイマプレートに乗り込み、のんびりとミシェーラと一緒に学園に向かいながら、空に浮かぶ魔法文字と、光の尾を引く無数の魔石を眺める。
ーーージョシュア様とパーシヴァル様、頑張ってるんだろうなあ。
王族にしか使えない魔法だという、国全体を覆う透明な魔力のドーム。
魔石がぶつかるたびに、透明なドーム上に魔法文字が浮かび上がるため、魔力を感じ取れない国民の目にもはっきりと王族の魔法は映る。
「毎年見てるけど…何度見ても綺麗ねえ。」
ミシェーラも、頬を染めながら空を見上げている。
彼女はミーティアウィークの間だけ、ネクタイをつけるらしい。
最も、すでにスタージュエリーで埋め尽くされたネクタイは、もはや布地が見えていないのだが。
魔石のぶつかり合うシャラリシャラリという音を響かせながらミシェーラが歩く。
重い重いと文句を言うミシェーラ。
それを笑いながらライラたちはプレートを停め、一年生の校舎へと足を踏み入れたところでーーー
ワッとマスキラに囲まれた。
ミシェーラ目当ての彼らの輪から、ライラはそっと外れた。
ーーー予約に来る生徒のあまりの多さに、毎日違うネクタイをつけるしかないわね、と疲れたように言っていたミシェーラの姿を思い出す。
彼女が重いと言っていた今日のネクタイは、すでに朝から寮の前で待っていた親衛隊のスタージュエリーで埋め尽くされているのだ。今現れた彼らは何日目になるのやら。
ライラは数名のフィメルに声をかけられながら、階段を上がって行った。
口々に彼女たちは、ライラの衣装ーーーミシェーラからの贈り物の衣装を褒めてくれる。
「ライラックさんの銀の髮と同じ色の魔石が散りばめられていてーーーさすが、ミシェーラさん。ライラックさんの良さがよくわかってますね。」
そんな彼女たちに、ライラは満面の笑みで賛同していた。
ミシェーラからの贈り物である衣装を褒められるのは嬉しいのだろう。
「スタージュエリーがアクセサリーだけなんて誰が決めたの?ーーーライラを一番輝かせるのはわたしだわ!」
ーーーなどとミシェーラは宣言し、バッチリ、ライラ好みの衣装を送ってくれた。
使われた黒地の皮は、亜竜のものだったし、天の川のように大量に縫い付けられた星形の魔石は全てが上位魔獣であるワードウルフのものだった。
「み、ミシェーラ。ーーーいくらするのこれ?」
ーーーというライラの質問に、笑うばかりでミシェーラは答えなかった。
値段がつけられないほどに貴重品だ、ということだけがライラにもわかった。
スタージュエリーは受け取るのが絶対なので、ミシェーラは遠慮することをやめたらしい。
普段たまっていた鬱憤と、己の欲望を全て詰め込んだわ、と真顔で言われ、ライラはうなずくしかなかった。
しかし、ライラの市販品の指輪もミシェーラは喜んで受け取っていた。
「大事なのは気持ちよ!ライラがくれたってだけで、わたしにとっては、このピンクの指輪が宝物になるもの。」
笑顔で言ったミシェーラに、本当にいい子だと、ライラは朝から感動することになったのだ。
そしてライラが一人で教室に入ると、珍しく早く登校していたデニスに手招きされる。
チラリと目を向けた彼のネクタイも、すでにスタージュエリーで埋め尽くされていた。小ぶりのものから大きなものまで…一体何個あるのだろう。
デニスは1日に何本かネクタイをつけ変えるらしい。
ミシェーラと同じく、人気者の彼は大変なのだ。
騎士団長になりたいデニスは、今から周囲の人脈を増やすのだと語っていた。
そんなデニスだがーーーライラを椅子に座らせると、恭しく左手を取り、親指に指輪をはめていた。
一見銀色に小ぶりの石というシンプルな指輪だが、中央につけられた星形の魔石はかなり質の高いものだった。
ありがとうとライラは笑い、お返しに用意してあった指輪を渡す。
「ーーー全然高いものじゃないんだけど。」
デニスの左手の親指にライラは指輪をはめた。
はまっているのはクズ魔石で、そこらへんで買えるような品なのだが、デニスは宝物を手に入れたかのように、嬉しそうに目を輝かせていた。
ライラがそんなデニスに笑いかけたところでーーーデニスは、ライラの右手に、指輪がすでにはまっていることに気が付いたらしい。
一つはパーシヴァルからもらった、白のリングに紫色の魔石があしらわれた指輪。
そしてもう一つがーーー
「ーーーこの主張しないけど、最高品質の指輪に、大人のマスキラの余裕を感じる…。」
デニスは、ライラの手にはまったジョシュアからの指輪を見て、ため息をついている。
ライラもデニスの言葉に、満足そうに頷いている。
「ジョシュア様、センスもいいよね。本当にかっこいいなあ。」
◯
いつもより遅い時間から始まった授業。
アルフが奥さんからもらったのだという巨大な魔石のついたサークルペンダントをつけていたり、逆にフレーザーがいつもつけているサークルペンダントを外してきて、一切の装飾品を身につけていなかったりとーーー教師陣のいつもとは違う格好も、生徒たちを騒がせた。
昼休みの食堂で、デニスとミシェーラが次々とやってくる生徒たちへの対応に追われる中ーーーライラは同じテーブルにつきながらも、ぼーっと外を眺めていた。
右手は胸のサークルペンダントに添えられている。
父親の魔力を感じているのだろうか。
ほのかに青く発光する石は、大切な人を亡くした過去を持つことをわかりやすく周囲に伝える。
いつもよりも賑やかな食堂の中ーーーライラたちのテーブルに、ある集団が近づいてきた。
集団の先頭に立つダスティンがミシェーラの前に跪いたことでーーーしんと静まりかえった食堂。
ライラとデニスは目配せして、二人を邪魔しないようにそっと席を立った。
ダスティンが指輪とサークルストーンを両方取り出しーーーミシェーラが指輪だけ受け取ったことで、周囲からは悲鳴と歓声が上がった。
「ーーーあのフェメル生意気!」
「ミシェーラちゃん。サークルストーンは受け取らなかったってことは、まだチャンスある?」
ライラは絵になる二人の方を見て、満足そうに頷いている。
デニスはそんなライラを呆れた顔で見ていたがーーー突然、ライラを庇うように前へと進み出た。
ライラは驚きーーーすぐに納得の顔になった。
スッと真顔になったライラ。
ダスティンの取り巻きの中にいた、ビバリーがライラの方へと歩いてくる。
両サイドには、上級生のマスキラを連れている。
ライラとデニスの前で、立ち止まった三人。
ビバリーは緑の石がついた指輪が見えやすいようにだろうか。
頬に手を当てるようにして、首を傾げた。
その動作で、ネクタイについていた大量のスタージュエリーが揺れる。
ーーーデニスばりに、もらってやがる。
ライラはビバリーのスタージュエリーを見て、思わず苦い顔になった。
そんな反応を満足そうに見た後ーーービバリーはデニスに、にこやかに挨拶した。
表面上は笑い合っているが、魔力はピリピリとして、一触即発の雰囲気である。
当たり障りのない会話を続ける二人。
ライラがそんな二人を遮った。デニスのマントを引くことによって。
心配そうな表情になったデニスの頭をポンと叩き、軽く微笑む。
そして、無表情に戻った後、ひょこりとデニスの影から顔を出す。
「ーーービバリー、どうしたの?」
ビバリーは大勢の生徒がいる食堂だからだろうか。
綺麗な笑顔を浮かべ、今週末の集まりのことを伝えにきたの、と言った。
「ーーーテキストでいいだろ。」
ぼそっと呟いたデニス。
ライラは内心で激しく同意しつつーーー注意深くビバリーの行動を見守る。
「ーーーというわけだから、金曜日の夜に実家に戻ってきてね。みんな、ライラが長期休みも帰ってこなかったから、寂しがってたわ。」
ライラはよくいうわ、と内心で毒づきつつも、無言で頷き返す。
ミーティアウィークだけは、実家に帰らざるを得ないのだ。
ライラにもそれはわかっている。
両親の墓はガブモンド家の共同墓地にあるのだ。
帰らなくては墓参りができない。
無愛想なライラに対し、ビバリーは少し眉を潜める。
その表情を見た、後ろのマスキラが威嚇するかのように前へ出てきた。
対抗するように、デニスが魔力を集め始める。ライラによってやめさせられたが。
ライラはデニスをポンポンと叩いて宥めながらーーーマスキラ二人に目を向けた。
「言いたいことあるなら口でいいなよ。」
ほら、とライラが顎をしゃくる。
ばかにされたと感じたのか、さらに魔力を波立たせながらマスキラの一人が言った。
「ーーーお前、王族にどうやって取り入ったのかは知らねえが、だからと言って偉ぶるんじゃないぞ?スタージュエリーを数個しかもらってないお前と違ってビバリーちゃんのためなら、色なし一人くらい軽くひねれるやつが、この学園には大勢いるんだ。」
ーーーわたしがいつえらぶったんだ?
ライラの疑問はデニスと…今まで黙って聞いていたフェルも当然感じたらしい。
ピャッと飛び出そうとしたフェルを、ライラが素早く掴んでポケットに押し込む。
「ーーーむ!なんで、ライラ!ボク、ライラを馬鹿にする奴は塵にするって決めてるんだけど!」
ウネウネ身をよじらせ、出てこようとするフェルを、ライラがポケットの口を両手で塞ぐことで防いでいる。
「いや、過激すぎるわ。ーーーいいんだよ、あんな薄っぺらい挑発で傷つくほどヤワじゃないし。」
このライラとフェルのやりとりは、相手にも聞こえている。
さらに真っ赤になったマスキラたちを見て、デニスがヒューッと口笛を吹いた。
「お前、調子乗ってんじゃねえよ。本気で、一回痛い目見せてやろうか?」
ブワッと膨れ上がった魔力を見て、ビバリーが慌ててマスキラを止めようとしているが、彼女の静止も聞き届けられないようだ。
今にも魔力の球が出来上がりそうになっている。
しかし、攻撃の矛先にいるはずのライラはいつも通り、のんびりとした調子だ。
ビバリーに向かって、用件は終わった?などと聞いたりしている。
ビバリーが若干青ざめた顔色のまま、頷いたのを確認しーーーライラはマスキラに向き直った。
その声は静かなものだったがーーー不思議と周囲の生徒が聞き入ってしまうような響きがあった。
「ーーー先輩、わたしは今、両親の喪に服していますので、乱闘騒ぎは起こしたくないのです。気持ちがそっちに持っていかれてますので、失礼な態度に映ったなら謝ります…それに、スタージュエリーの数が少ないのは、デニスのせいもあるし。ね?デニス。」
ライラに突然話を振られたデニスはーーー気まずそうに視線を逸らした。
ライラはそんなデニスを、チラリと見て、再び正面へと視線を戻した。
固まってしまっているマスキラ二人に、ライラは微笑みを浮かべた。
その表情は悲しみに満ちていてーーーマスキラたちは、どうしようもない気まずさを感じた。
死者を弔うライラに喧嘩をうった、自分たちが恥ずかしくなってきたのだ。
スッと消えた魔力の塊が消えたのを確認しーーーライラはデニスの袖を引いて、食堂を後にした。
「ーーーライラックって、守りたくなる何かがあるよな?」
「デニスが惚れてるって聞いた時、なんであんな奴を?って正直思ってたけどーーーあんな顔してるの見たら、俺が笑わせてやりたいってなるな。」
ーーーなどというささやきがあちこちでかわされ、ビバリーが自分の思惑通りに行かなかったと、不満げな顔をしていた。
◯
十月一日は王宮前広場で王族主催の式典が行われる。
王都周辺に住む住民がこぞって参加するこの式典に合わせ、魔法学園も授業は3時で終了。
特別便に乗って、生徒たちは王宮前広場へと向かう。
そして、多くが現地で家族と落ち合うのだ。
ミシェーラとデニスも今日は家族で過ごすという。
巨大なプレートの端の方に固まって座っているライラたち三人は、今日スタージュエリーを渡しにきた生徒たちについて話したりしていたがーーーデニスが、何か思い出したのだろう。
笑顔を引っ込め、ブスッとした顔になった。
「ーーーライラ、俺がライラにスタージュエリー渡そうとしたマスキラに決闘申し込んでたの知ってたの?」
ミシェーラは「あー、あれね」と呆れ顔で頷いている。
しかし、ライラは知らなかったよ?と目を見開いた。
なんとなくデニスが動いているのは察していたが、決闘申し込みは予想外だったらしい。
墓穴を掘ったことに気がついたデニスが、頭を抱えているが、言ってしまったものは戻せない。
「ーーーえ?デニスそんなことしてたの?…というか、わたしにスタージュエリー贈りたい物好きがまだいたのね。」
そうなんだぁと驚くライラをデニスはおそるおそる伺いーーーホッと息をついている。
ライラが全く怒っていなかったからだろう。
「ライラ、デニスが勝手なことしたのにいいの?」
ミシェーラの疑問にも、ライラはうん、と頷いた。
「フィメルは可愛いから笑顔で受け取れるけどーーーよく知らないマスキラからの贈り物なんて、どういう顔して受け取ればいいのかわかんない。」
ちょっと怖いわ、と真顔で言うライラ。
デニスは、その発言を聞き、表情を曇らせた。
「ーーーもしかして、はじめの方の俺も怖かった?」
デニスの不安げな顔を見てーーーライラはぷっと吹き出した。
「デニスは魔力の質が綺麗すぎて、全く怖くなかったわ。ーーーデニス、むしろいつもわたしを守ってくれてありがとう。」
ーーーわたしの心は王族のものだけど、他はデニスに全部あげようと思ってるから。
そう言って笑ったライラ。
感傷的になっているせいだろうか。
いつものライラらしくない発言にーーーデニスは真っ赤になっていた。
そして、ミシェーラは拗ねている。
フェルも拗ねている。
「わたしもライラ欲しい!」
「ボクもボクも!デニスにはもったいない!」
やいのやいの騒ぎ出した二人。
ライラは笑っていたがーーーミシェーラの前に身を乗り出し、彼女の唇に人差し指を当てた。
「ミシェーラはわたしがニュートの間は発言に気を付けなくちゃ。ーーーダスティン様の恋路を邪魔しては悪いからね。」
えー!と不満げな声をあげたミシェーラ。
しかし、王族のことになると、ライラは譲らないことをミシェーラはよく知っている。
頬を膨らませるだけで、反論はしなかった。
「ーーー行動には気をつけなくていいのか?」
デニスのつぶやきは、顔を寄せ合う二人には届かないのだった。
グレイトブリテンで唯一黒竜まで近寄れるジョシュアですが、彼は公園でどんぐり拾ってくるノリで黒竜の鱗を拾ってきます。




