No.8 ロボット掃除機
レポートNo.8 『ロボット掃除機』
【質問内容】
「あなたの部屋をコレで掃除させてください」
【回答】
・宿屋の一室で剣の手入れをしていた冒険者の男性
「掃除するって、それのどこにホウキとチリトリが付いているんだ?」
「へぇ、壁にもぶつからないし綺麗になったな。 でも、部屋の隅っこは出来ないんだな」
・隣の部屋にいたいつかのケモ耳冒険者の女性
「あーーー!! アンタは、あの時の痺れ薬の人! 今日は何しに・・・え、部屋を掃除させてくれって? ・・・そんな怪しい道具で、本当に大丈夫なのー?」
「うずうず、うずうず・・・にゃっ! ・・・あれ、乗っかったら動くなったよ? もしかして壊れちゃった?」
・二人が泊っていた宿屋のおばちゃん
「え? 掃除手伝ってくれるのかい? そりゃ助かるけど、ホウキもチリトリも要らないってどうやってやるんだい?」
「終わったって? ちょっと確認するよ。 ・・・これはダメだねぇ。 部屋の隅は掃除できてないし窓も全然だし、水拭きもやっていないし・・・あ、ちょっと話の途中でどこいくんだい!!」
・宿屋のトイレから出てきた自称トイレの女神様
「キレイにしようという心掛けは素晴らしいと思います。 ぜひお願いします」
「あのーすみません、非常に言いにくいことなんですけどいいですか? あの道具、その、トイレの穴に飛び込んで・・・あ、私はちゃんと止めたんですけどね、一直線に突っ込んで行ってですね・・・(以降、モゴモゴ言っていて理解は不能だったが、弁明の言葉が述べられていたと解釈)」
※ 回収不能により、調査の継続を断念。
【総評】
人が生活しているところはどうしても掃除が必要になる。
掃除は手間がかかる、というのはどこの世界でも共通の認識である。
『誰か、代わりに掃除をやってくれ!』という怠・・・いや、心の叫びに答えたのが今回の道具である。
今回はすんなりと交渉することが出来たが、終了後の反応はかなり辛辣な結果だった。
掃除をすると言っても、全てをパーフェクトに出来るわけは無い。
皆、口を揃えて『部屋の隅が~』と言うが、考えてみてくれ、部屋の隅に座る奴はいないだろう?
必要の無い部分を掃除して何になるというのか。
ハッキリ言って無駄である。
なぜ本部はこんなものを調査依頼をかけてきたのか、甚だ疑問である。
【本部からの手紙】
手紙とは、また古風な手段だ。
事務的な事なら帰った時にでも直接伝えれば良いのに。
とりあえず、中身を開けてみるか。
ビリビリッ。
・・・どういうことだ?
本部には戻らず、そのままここに待機していろだと?
報告書は後で取りに行くから纏めておけ、か。
一体本部は何を考えているのだ?
ん・・・?
手紙の一番最後に何か書いてあるな。
『P.S.
異世界での生活はどうですか?
次回が最終レポートです。
最低限の荷物はこちらから送付いたしますので、指定の場所にて受け取ってください。』
最初の一文は、手紙におけるただの決まり文句だろう。
しかし次で終わりなんて急な話だな。
本当に本部は何を考えているんだろう。
ほう、珍しい。
荷物は向こうから送ってくれるのか。
指定の場所は・・・さっきの宿屋か。
ご丁寧に宿泊の手続きまで済ましてあるようだ。
だが、休むにしてもまだ日は高すぎる。
部屋に荷物を置いたら、村の中でも見て回ろうか。
明日の調査を依頼する相手だろうし、コミュニケーションくらいは取っておくほうがいいだろう。
今日は調査が早く終わったし、久しぶりにゆっくりするかな。
――― 調査員は見過ごしていた、手紙の一番下に書かれている文字に。
手紙の右下には、小さくこう書かれていた ―――
『Dear 1711710』