あるスライムについて語ろうと思う
俺は、鈴木小太郎。
名前で分かると思うが、生粋の日本人だ。
日本で生まれ、日本で育った。
家族のため一生懸命働く会社員の父、パートで家事をしながら家庭を支える母、面倒見のいい優しい姉、やんちゃで明るい弟。
ごく普通の一般的な家庭だったと思う。
俺は勉学に励みながらも、友達と遊んだり、部活を頑張ったり、それなりに高校生活を楽しんでいた。
悩みもあったが、今思えば些細なこと。
本当の苦労は知らず、気付かないまま親から学校から世間から守られながら、ぬるま湯の様な環境で生きていたのだ。
そう、異世界に転移させられるまでは。
進路を悩む帰り道、突然に自分の周囲が光ったと思ったら、空間に吸い込まれ様な感覚で、気付けば知らない草原にいた。
そこで、恐いくらい冷酷で、悲しくなる程優しく、王様ような気高さと、憎らしいけど可愛いいスライムに出会うことになる。
異世界に転移したのは、偶然なのか必然なのか。
運命の悪戯で、異世界に転移した自分。
そのスライムは、俺が産まれるずっとずっっと前に、誕生した。
俺のひい爺さんひい婆さんよりも、その更に遥に昔だ。
想像出来ないくらい永い永い時を生き抜き、数奇な運命を辿ったスライムの半生。
俺は、あるスライムについて語ろうと思う。