告白と告白
由樹「姉様、ハンカチ持ちましたか?」
由利「うん」
由樹「お弁当ちゃんと持ちましたか?」
由利「うん」
由樹「課題やり忘れてないですか?」
由利「うん…?」
由樹「姉様、代えのナプ…」
由利「うるっさいわねぇ!!あんたは私のお母さんかいっ!」
由樹「弟です。」
由利「しーーってるわよぉ!!」
由利「…いーから行くわよ!」
玄関先での漫才のようなやり取りを終え、これから学校に行こうという所。ノブに手をかけたそのとき
由樹「姉様、忘れ物ですよ。」
由利「…え?なんか忘れてたっけ?」
チュッ
由利「!?」
振り向き様に唇を奪われた。
由樹「行ってきますのキスじゃないですか」ニコッ
唖然とした反面、またかという落ち着いた自分がいるのが解せない…!玄関でイチャイチャは姉弟のタブーだとゆーのに…ガチャンガラガラ
って、私を置いて行こうとするな!
由利「ちょ、ばかぁ、おいてくなぁぁあ!」
私は弟にはかなわない。
由利「いい?外じゃあ姉様禁止よ!なんか悪目立ちするから!」
由樹「…では、姉者?」
由利「忍者?使わないわよ」
由樹「姉貴!」
由利「そんなキャラじゃないでしょ?次!」
由樹「ゆりっぺ!」
由利「…!なんかいいけどあだ名じゃない!」
由樹「…おねーちゃん?」
由利「はうあッ!」
ストレートが決まった。正直萌えた
由利「な、なんか人前で言われるのは恥ずかしいわねそれ」(^-^;
由樹「じゃあ…由利?」
由利「…ん、それっぽいかも。」
由樹「姉弟っぽいですね!」
由利「…だって、姉弟だもの。」
個人的に最後から二番目のは好みである。なんか姉冥利に尽きるっての?
由利「…あ、」
みさき「おっはよーーお二人さん!仲良く二人で登校ですかぁー?」
由利「おはよーみさき。あんたいっつも朝からテンション高いわよね。」
みさき「それが取り柄だもの!弟くんもおはよ!昨日はちゃんと挨拶してなかったよね?あたしは筧みさき。姉様とは小学校からの付き合いなんだ~」
由樹「ね、…由利がいつもお世話になってます。」
みさき「すごいねーホントに弟くんだねー似てるねー!…あれー?姉様じゃないのー?」
由樹「禁止されちゃいました。」
みさき「えーもったいない。せっかく面白かったのに!」
みさき、おもしろがるな。
みさき「でもさ、」
みさき「なーんか、ますますカップルだと思われちゃうじゃんね?」
由利「は?てか、ますますって何よ!!」
みさき「うちの学園の王子様が女の子と帰ってたって、昨日から持ちきりなんだよ?」
由利「えっ?なんでよ?」
みさき「知らないのー?由樹くんすごいんだよ?うちの学園男の子に耐性ないからさ、その日のうちにファンクラブが出来たとかなんとか」
すごくおもしろそうにみさきは話す。ぜってー楽しんでるなこの子。
みさき「あんたも今朝からにやにやしてるし、それはそれはたのしそーに登校してるんだもん。リア充感?っての?溢れてるわよ!」
由利「わたしはそんな光のあたった生活してないわよ!リア充?抹殺対象だわそんなの!」
由利「それに…にやにやなんかしてないんだから。」
みさき「…」
由樹「…」
えっ
由利「…あたし、にやにやしてた?」
由樹「それはもう朝から。」
みさき「会ったときにはすでに。」
由利「……////!?」
なによ!それじゃわたし彼氏と登校できて喜んでるきゃわいー(笑)な女の子みたいじゃない…!!
みさき「…春、来たね。」
由利「じゃかぁあしぃぃぃぃぃ!!」
みさき「あっはっはぁははっ!!」
由樹「(^_^)」
いつにもまして騒がしく学校へと向かう道。心なしかいつもより短く感じたのだった。
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みさき「どーっっこいしょぉお!!」
由利「おっさんか」
みさき「にしても、弟くんの人気は底知れずだねぇ?」
由利「(流された!?)」
みさき「学校つくなり女の壁が出来てたね。挨拶何人にしたんだろ?今年の他の男の子も災難だねぇほんと~」
ケラケラと楽しそうに言ってるけど、その取り巻きの女の子何人かに睨まれてたんだからね?私達。上級生も混じってたし女の先生もチラ見してたんだからね?「一体どうゆう関係??」みたいなかんじで。この子の保護者ですけども?
蒼衣「由利ちゃん」
由利「わービックリした!相変わらず気配を感じさせないわねあんた。始業式から風邪なんて災難だったね?」
蒼衣「そんなことより」
由利「(そんなこと…?)」
蒼衣「男と歩いてたってほんと?」
お前もか…!!ってか目がこわいんですけどぉ?
蒼衣「ワタシノシラナイトコロデユリチャンヒドイ…」ボソッ
由利「え?なんて?」
蒼衣「誰なの?何処までしたの?いっしょに寝たの?」
みさき「あーおーいー!おはよ!久しぶり」ニコッ
蒼衣「ねぇみーちゃん?由利ちゃんが男と歩いてたってほんとなの…?」
みさきがわたしに目配せしてきた。こうなると私には蒼衣を止められないから、うまく説明してくれるだろう…あーたすかる。
みさき「そだよ?その子と私も一緒に学校来たもん。」
蒼衣「え」
みさき「しかも、昨日は同じ屋根の下で一夜を明かしたのだーっ!」
蒼衣「フォア⤴️!?」
みさき「一つ下のすっごいイケメンくんだよ❤️」
みさきは満面の笑みでこちらをみている。ややこしくしてくれたなぁ……もう。
蒼衣「ふぇ…由利ちゃん……」
ちょーっと!そんな涙目にならないでよぉ…私が悪いことしたみたいじゃん!
由利「あーもう!違うっては蒼衣~私はただ弟と一緒に来ただけなんだから!」
蒼衣「…お と う と ?」
みさき「ごめんごめん!そーだよ由利の弟くんと来ただけ!」
蒼衣「由利ちゃん弟くんいたの?私知らなかったよ?」
みさき「それはかくかくしかじか」
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蒼衣「…そっか小さい頃に海外に……」
ぐすん。
蒼衣「由利ちゃん…会えてよがっだねぇぇぇえうぇ……」
由利「ちょ、なかないでよぉ!別にそんな感動秘話がある訳じゃないんだから!それに、手紙とかは出してたんだし…お母さんも友達もいたから全然寂しくもなかったのよ?」
どおどお!そんなに感動することかなぁ?…まぁ、私もいきなりのことでビックリしたし正直気まずさがもっとあると思ってたんだけどさ。生き別れってほどお互いを知らないわけではないし、二人で暮らしてくことは受け入れちゃってるし。
みさき「まー、これで由利の自堕落な生活が少しは矯正されるといーね!」
由利「やっぱ私って生活感ないかな!?」
賑やかにわいわいしてると授業の開始を告げるチャイムがなった。今日もノートのはしっこに芸術作品をしたためるか…
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みさき「あーおなかへったー!!おひるだー!」
由利「あんた各授業終わる度お腹減ったしか言ってないじゃない。」
みさき「思ったことは口に出してこうかと。今年度の目標!」
由利「だとしたら出会ったときから出来てたわよそれ 」
蒼衣「いっつも二人のやり取りは楽しいね」
私達は晴れてれば中庭、雨なら屋上に続く階段(屋上は閉鎖されてるから人通りが少なくて穴場なのだ!)でお昼を食べている。例により今日も中庭に向かってるんだけど…なにあれ。
由利「…人だかり。」
みさき「公開告白か!?」
蒼衣「いろんな学年の人がいるね?」
きゃーきゃーうっさいわね…誕生日に顔面にお菓子をぶつけ合う野蛮な風習が流行っていたこともあったけど、これもそんなやつじゃないの?陽キャラは楽しそうでいーわね。
水筒のお茶を飲みつつ軽く冷めた目線を送る。
みさき「って、あれ由樹くんじゃんか!」
蒼衣「え…あの方が…!」
由利「ブッッ!!」
あんたが原因かいっ!お昼時にあわよくば一緒に食べようと集まった有象無象に質問攻めにあってるようだ。
「ずっとドイツにいたんだ~!すごいね!」
「ドイツ語しゃべって!」
「好きな食べ物ってなぁに?」
「好きな女性のタイプはどんなの?」
「お弁当作らせて!」
「い、いま付き合ってる人とかいるんですかぁー?」
「「キャーー!!!」」
由樹「お付き合いしたことはまだありません。」ニコッ
「「キャーーー!!!」」
由樹「僕は和食が好きですが洋食も中華も食べますよ。好き嫌いはない方ですので。ドイツ語は実はめっきり喋れないんです。ドイツに行ってからも日本語に囲まれて生活していたので。お弁当は気持ちは嬉しいのですが作るのが好きなのでまたの機会に。」
あんたは聖徳太子か!!
「好きな女性のタイプ…ですか。」
由樹「…姉のような人、ですかね。」
「「キャーーーーーーーーー!!」」
由利「ーッッ!!///」
みさき「愛されてんじゃん!」
蒼衣「(え、由利ちゃんの面影めっちゃあるやん…!どうしよ美しすぎてたまらんわ…!)」
由利「ね、場所うつさない…?」
みさき「いーじゃんおもしろいじゃん!もっと観察してようよ!」
蒼衣「うちも!」
なんなの二人して…あと蒼衣関西弁でてきてるわよ。ま、時間も限られてる事だしさっさと食べてしまおう…
みさき「てかさー?由利がお弁当なんて珍しいじゃない?」
由利「ま、まぁたまにはね…」
パカッ パコッ
みさき「なんで開けたのに蓋しちゃうのさ?」
蒼衣「お弁当寄っちゃってたの?由利ちゃん?」
由利「…」
みさき「てい」カポッ
三人「あ…」
みさき「…あっはっはっはひゃぁははっ!!」
蒼衣「…とっても…キュートですね❤️」
そこにはハムをつかった大きなハートが象られていた。人参もハート型で野菜や肉との色味もよく、まるで幼稚園の子供のお弁当に気合いを入れたお母さんが作ったようだった。
由利「(由樹…めーっっっちゃかわいいの作ってくれたわね!?
私はあなたより年上なのに何よこれ!!)」
みさき「…こ、これ由樹くんでしょ…ちょ、超かわいーじゃん…箸ケースまでハート柄だし…ふふっ…似合ってるよ…」
由利「そんな笑い堪えながら言わないでよ!」
蒼衣「弟さんお料理上手なんですね!」
由利「ん…まぁ上手だと思うわ…わたしなんかより。」
わいわいしながらも昼食を取り始めた。相変わらず私の弟の回りには女の子の壁ができていた。あ、このハンバーグおいしい…
みさき「それにしても由樹くん、やり手だねぇ?」
由利「どーゆーことよそれ?」
みさき「好きなタイプですか…それは姉です!っての!」
由利「も~掘り返さないでよ~…で、それがどしたのよ?」
みさき「学園の王子様ポジションを確立させつつさらに!弟属性まで振り撒いて上級生もメロメロでしょう?」
由利「そんなもんなの?あんなシスコン宣言しといて……恥ずかしいだけじゃないの」
蒼衣「姉と弟…相思相愛でとっても尊い…」
由利「いーつあたしが由樹のこと好きっていったのよ!?」
みさき「まーべつに嫌いじゃないんでしょ?」
由利「…そりゃ、…まぁ。///」
蒼衣「めっさかわええなこの子」
みさき「蒼衣、心の声もれてんぞ」
みさき「まー、あたしの弟もねーちゃんすきーって言ってくれるよ?」
由利「あんたんとこはまだちっちゃいじゃない!上の子が小学校入ったばっかでしょ?」
蒼衣「写真見せてもらったね!二人とも可愛かったよ~」
みさき「うん!二人とも将来私をお嫁さんにしてくれるみたいだよ!」
すこし照れた顔でそんなこと言う。みさきは弟の話するときとっても女の子らしくて幸せそうな顔をする。可愛いなちくしょう。それに比べ私はわーわーうるさいかなぁ?…も少し由樹に対する接し方を改めようかしら…
みさき「まだまだ手のかかる子達だけどね。この前も風呂あがってろくに拭かないで出てくもんだから家中ビショビショだったんだから!いーなー由樹くんは風呂上がり全裸で家のなか歩き回らないでしょ?」
由利「ば、んなわけないじゃない!!いったいあんたの弟といくつ離れてると思ってんのよ!」
みさき「由利は下着で歩き回るじゃない。」
由利「最近はしてません!!……なぜ知ってる?!」
みさき「えー、じゃあ背中流しっことかしないの?」
由利「しーまーせん!ってかあんたまだ一緒にお風呂はいってるの?」
得意科目体育系女子のみさき。体は細身だか胸がしっかりとあって羨ましい体してるから弟くん達の精神衛生上よくないのでは…?
みさき「中学くらいまでならいけるっしょ?」
蒼衣「その頃私達成人してるね」
由利「やめてあげなさい。弟くん達のためにも」
みさき「えーー?」
ふと、ある人物に目が止まる。
十文字聖那
長い髪はふわふわとウェーブがかかってて女子にしては背が高い。姿勢よく歩く姿は品の高さがにじみ出ていて、うちの学校の有名人だ。いいとこのお嬢様らしいがあまり自分の話はしないらしくミステリアスな雰囲気をただよわせている。
由利「生徒会長」
蒼衣「あら、お昼時に珍しいですね?」
うちの生徒会は忙しいらしく、昼休みは役員の半数が生徒会室で雑務をこなしているらしい。ましてや会長はだいぶレアキャラだ。
「聖那さんこんにちは!」
「聖那様…」
「聖那さん、珍しいですね!」
「今日もお美しい…」
「…抱いて!!」
生徒はみな思い思いの挨拶をしている。その美貌はもちろん、演劇部の部長としての顔も持ち合わせておりファンは多いのだ。
聖那「ごきげんよう」
挨拶を返しながらも歩みは一直線でゆるぎない。その先には
みさき「あれー?会長も由樹くんが気になるのかな?」
そ、そんな!あんな美人さんになんか勝てるわけないじゃない!!…ってなんで張り合ってんのよ私。
蒼衣「顔…近い…///」
みさき「おーっとキスかぁー!」
由利「へ!」
遠目にも二人の顔が被さってみえる。なんなのキス魔ってキス魔を呼ぶものなの!?
生徒会長はにっこりして去っていった。と、同時にチャイムが昼休みの終わりを告げていた。
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由樹と会長が…なんで…キス…
昼食後の眠気を感じる間もなくもんもんと二人の事を考えてた。
別に由樹が誰とキスしてようが自由なんだけどさぁー…もー
蒼衣「心ここにあらずって感じですね」
みさき「弟くんのことそんなにショックだったの?」
いいじゃない。由樹にちゃんと彼女ができたら(恋人ごっこ)なんて変な関係も解消して、普通の姉弟らしくいられるじゃない。それに会長は誰もが認める高嶺の花子さんだもの。なんも心配いらない。姉として見守ってあげるのが最善の選択よ
みさき「おーい由利ー」
蒼衣「由利ちゃーん」
由利「…ブツブツ」
ガラガラッ
みさき「ゆーりー」
蒼衣「ゆーりーちゃーん」
スタスタッ
由樹「由利」
由利「っひゃい!!」
びーっくりした!!…いきなりくるんじゃないわよ…
みさき「やー由樹くん!」
蒼衣「こんにちは、由樹くん」
由樹「お二人ともこんにちは」
由樹「由利?どうしたのボーッとして。もう帰る時間ですよ?」
由利「…あれ?授業おわってたのか…」
由樹「なーに寝ぼけてるんですか。夜更かしでもしてましたか?」
由利「…何でもないわよ!」
由樹「…何を怒ってるんです?」
みさき「姉の心弟しらず」
蒼衣「座布団一枚」
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そのままみんなで帰って来て、ちょうど二人と別れたところ。
由利「ね、由樹」
由樹「何ですか?」
由利「お弁当ありがとね。とっても美味しかったわ」
由樹「それはよかったです。」
由利「でもさ、ハートはちょっと遠慮してもらいたいかな…」
由樹「由利はハート好きでしょ?」
由利「いくつの時の記憶よ!いやまぁ可愛いんだけど私もいいお年頃じゃない?ちょーっと恥ずかしいかなぁって…」
由樹「わかりました。でも、ハートの下着いっぱい持ってるじゃないですか?」
由利「んなっ!…だからぁなんで知ってるのよ!!セクハラ!」
由樹「姉弟なのでノーカンです」ニコッ
ほんとに楽しそうにしやがってこのっ…!と、前置きはこのくらいにして…
由利「…あのさ。お昼に生徒会長に会ってた…?」
由樹「見られてましたか。」
由利「…なに、してたの?」
由樹「何、ですか?ただ、生徒会に入らないかと耳打ちしてきただけですよ。」
由利「え、それだけ?キスは?」
由樹「キス?してないですけど。由利とだけです。」
それもどうなのよ
由利「…あ、あれぇ?勘違いだった…!?」
由樹「たしかにとっても近くにきて耳元でささやいて来ましたけどね。角度によってはそう見えちゃったかも知れませんね。」
由利「あは…あははっそっかー!良かった!」
…なにが良かったんだろ。私、何を心配してたんだろ…?
へんなの!
由樹「…由利は、生徒会長と僕がキスしたら困るんですか?」
由利「っべ、べつに!そーゆーんじゃないし!」
由樹「安心してください。これからも由利だけにしますから。」
由利「だーめ!恋人じゃなくて私達姉弟なの!…由樹はカッコいいし、女の子に人気なんだから彼女でもつくんなさいよ…」
由樹「由利はそのほうが嬉しいの…?」
由利「…うん。あ、姉として弟の幸せを案じてるんだからね?」
由樹「…そんな悲しそうな顔で言われても、説得力ないですけどね。」
うっそ。どうも私は顔に出やすいみたいだなぁ~。でも、言ってることは正しいはずなのになにが嫌なの?…私がワタシをわかんないよ…
由利「……。私は…」
由樹の事が
由利「由樹の事…」
好きになっている。
由利「…でも、でも!今日からお家でもキスはダメだよ!」
戻れなくなる。こんな関係をつづけたら。私はきっと、きっと由樹と一線を越えてしまうから。
由樹「…姉様がそこまで言うなら。」
相変わらず弟が何を考えてるのかわかんない。今だって、悲しいのか、さして気にしてないのか。私の心はかき混ぜられちゃって渦を作っている。あ、なんかいまの詩的じゃん。
会話もそこそこに家につく。二人でただいまと平静を装う私はいまどんな風にみえてるのかな。
何事も無かったかのように振る舞う。いつもどうり。これが正しい姉弟なのになんだか最初に会ったときより気まずい。意味わかんない。
由樹「姉様お風呂用意できましたよ。」
由利「…う、うん!わかった!」
はぁ…
二人「いただきます。」
学校でのことを二、三報告しあって談笑。普通。
由利「由樹のご飯はいっつもおいしいね!次はあたしも作ってみようかな!」
由樹「それはよかったです。でも姉様はお料理苦手と伺ってましたが…?」
由利「いやー、試みるんだけどどうもうまくいかなくてねぇ?お母さんには台所禁止とまで言われちゃったし」
由樹「よっぽどのことしたんですね」(^^;
由利「だーかーらー!由樹には実験台になってもらうから!」
由樹「…勘弁してください姉様。」
普通。とっても普通。
そろそろ寝ちゃお…
由利「由樹、また明日ね。お休み。」
由樹「姉様、おやすみなさい。また明日。」
普通におやすみって言って
普通の朝を迎える。ほんとに普通。そして理想…
のはず。そうじゃなくちゃいけない。わかってる。
なのに…
由利「あたし…なんで、泣いてるの…」
やりどころのないイライラが布団を歪ませる。バタバタ。
由樹がキスしてくれた。男の子からのキスなんて初めてで、ビックリした。大切なファーストキスは弟…だなんて残念。…だなんて全然思えなくてむしろ嬉しかったのを覚えてる。
私の生活感がないから彼氏役をするだなんて変なの!と思ったし数年ぶりにあったからまだ姉弟として自覚が足りてないだけで男性として見ちゃうのはダメだと、自分に言い聞かせてた。
それでも、それでも…
好きだなんていってくれることが嬉しくて。
キスしてくれたときの顔がとても優しくて。
同じ翠色の目が、私をみてくれてるのが堪らなく嬉しくて…!
…生徒会長とキスしてなかったことに安心して…
どうしようもなく、
私は…由樹に恋をしてしまったんだ。
由利「…すき。」
由利「…すっ…すきだよぉ…由樹ぃ…」
言葉がこぼれるのと同時に、涙のダムも崩れてしまった。
由利「う…ぅうぁ……ぐすっ…ぁあ…あぁっ…!」
必死に押さえようとしても手の隙間からこぼれ落ちてしまう感情。滲んで灰色の視界、ただ浮かぶのは最愛のその人。
ふと、ゴンゴンと強めのノックが扉を打つ。
由樹「姉様!…大丈夫ですか!」
扉越しに由樹が焦っているのがわかる。
…だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ、だめ…!!
いまあなたに会ったら私は…私は…っ
由利「…だ、だめ!!…はいらないで…。その、ちょ…ちょっと足の小指をぶつけちゃっただけだから…」
うわずった声で適当なことを吐く。…ガチィ…キー
由樹「…開けますよ、姉様…。」
いつもは閉めてる扉に鍵をかけ忘れたみたい。こんなときに限ってほんと私ってやつは。
由利「だぁっ!…だめって…いったじゃんっ…」
由樹「そんな姉様をほっといておける訳ないじゃないですか。」
由利「…ばか…。」
由樹「…僕が、姉様を困らせてしまったみたいですね。」
由利「……」
由樹「僕は姉様が好きです。小さい頃から。そのときの記憶は確かに曖昧なものですが姉様の優しさだけは覚えてるんです。」
由樹「僕が病弱なため、姉様との距離が開いてしまって悲しかったんです。物心がつきはじめの僕はこの気持ちは恋だなんてわかりませんでしたが、強く立派になって姉様に会いに行こう。いっぱい勉強して利口にしてたらきっと、姉様に会えるんだと思って生きてきました。」
…由樹がこんなに自分のこと話してくれるなんて。
由樹「…ついに、チャンスが来たんです。日本の学校に通わせる手続きが上手くいきそうだと。父様から聞いたとき、僕はどうしようもなく喜びました。自室に戻ってから跳び跳ねるくらいにはね。」
由樹「そして、姉様と二人暮らしが出来るようになりました。久しぶりの姉様は、面影はあるもののとても綺麗になっていて僕は照れちゃいました。なんだか恥ずかしくて、でも、いてもたってもいられなくて抱きついてしまいました。姉様は暖かくて、変わらず優しい目をしていました。」
背後からの不意打ちを受けた私はそりゃもう驚いたっけ。何事と思ってめっちゃ睨んだんだけどあんたには優しそうに写ってたのね。みさきにさんざんからかわれたっけ…
言葉を選んでるのか、なにやら悩んだような顔を見せる由樹。視線で話の続きを促すと、決意をしたかのように口をひらいた。
由樹「僕の姉様への初恋は、片思いで終わらせるつもりでした。」
由利「…え…っ?」
由樹「僕たちは姉弟です。結婚はできません。…それはわかっています。僕は家族としてではなく、一人の女性として姉様が好きでした。だから、理屈っぽく言って彼氏の真似事をしました。…本当の姉様の彼氏にはなれないから、悪戯したくなってしまったんです。」
そんな風に思ってたんだ。
由樹「そんな僕のわがままが、姉様をこんなにも困らせてしまっていたなんて知らずに。とても愚かなことです。」
由樹「…大切な姉様に嫌われてしまうことは、本当に、本当に嫌なんです。だから…その、謝って…仲の良い普通の姉と弟でいさせて欲しいんです。」
由利「…ちがっ、嫌ってなんかないの…」
由樹「…姉様、ごめんなさい。姉様の気持ちを弄ぶような事をして…」
由利「…由樹…こっちきて。」
姉様に促されるままベッドへ、眼を赤くしてる姉の隣に腰かけた。
由利「私は…ね…」
由利「いや、私もね…、由樹の事が好きなの…」
由樹「……え…?」
由利「…初めはさ、からかわれてむきになって。そんな姉と弟として普通のやり取りだったの。でもね、なんだか心引かれちゃって。馬鹿だな私。久々に会ってそんな間もないのに由樹の事が好きになっちゃってたの。」
由樹「…そんな…っ」
由利「一目惚れ…とは違うんだけど、もともと知ってたし…あぁ!なんてゆーのかな…うまく…伝えられないんだけど…その…」
由利「好き。」
由利「弟としてじゃなくて一人の男性として。もっとあなたの事が知りたいの。優しくしてほしいの。抱き締めてほしいの。」
由樹「あ…ぁ…」
由利「キスしてほしいの。」
由樹「…姉様…」
僕は言葉が出ない。こんな…都合よすぎる。
由利「大好き。」
僕は何か言おうとして、
それは叶わなかった。
大切な姉の顔を視界一杯に捕らえ、暖かさを感じている。
由利「…ん…ちゅ……ん…っはっ…ぁっ…」
迫る舌にされるがまま、僕の口内は犯されていた。
スキンシップのそれではなく、男女のそれ。ときおり歯が当たってしまう。ぎこちない恋人の真似事。
由樹「…くっ…はぁ…っ…ね…姉様…だめ……です…っ」
由利「ん…はぁっ…、私を、こんなにしたのは由樹なんだからぁ…」
由利「…責任、とってよね…?」
甘い言葉に脳が焼き切れそうだ…。僕がうんと頷けば、夢に思っていた関係になれる。でもそれは姉様を不幸にしてしまう。けど…
由樹「姉様…可愛い…」
沼に堕ちてく。もう二人とも正気ではないかもしれない。
こんどは僕から求めに行く。衝動のまま押し倒し、覆い被さる僕に姉様は虚ろな目になり体が一瞬強ばった。押さえる腕に力はなく、これからされることに覚悟を決めたようだ。
由樹「…姉様が…可愛いのがいけないんですから…っ…!」
体か触れ合う。心臓の音が自分のものか彼女のものか分からないくらい近くて…
由樹「姉様…」
由樹「…姉様」
由樹「……姉様?」
由樹「えっ…姉様…!?」
力のないその体は、意識が飛んでいた。
由樹「…えっ…え?大丈夫ですか!姉様!」
由樹「姉様ーーーーっ!」
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ん…意識が覚醒する。朦朧とした頭が徐々にクリアになり、体が疲れとダルさを訴えてくる。力がはいらない。
…ここはどこだろう?
手に暖かさを感じる。愛しい。
由利「あ……由…樹ぃ…」
由樹「…っ!姉様!…よかった、気がつきましたか。」
由利「あれ、私…?」
由利「…由樹。」
由樹「はい。」
由利「…どこまで…シたの?」
由樹「いえ…その、お陰さまで一線を越えずに済みました。」
由利「…好きにしていいのに。」
…もうやめて下さい。死んでしまいます。
由樹「きょ、今日はもう寝ましょう。姉様」
由利「ゆーき」
由樹「…はい。」
由利「返事、聞いてないんだけど」
由樹「…僕の気持ちはお伝えした通りです。」
由利「…ごっこじゃなくてね、由樹の、由樹だけの女になりたいの…。思い出なんかにしないで、ほんとに…彼女にしてほしい…」
由樹「…すみません。」
由利「由樹は私のことは今も好きなんだよね…?」
由樹「も…もちろんです!…ですから、僕と…その、弟と付き合うつってことは…姉様を傷つけてしまうので…」
由利「私はあなたと付き合えたら幸せなのに…?」
どうしてそんな…僕のほしい言葉ばっかりくれるんですか…
由樹「…」
由利「…うん、由樹は優しいね。…そうやって悩んでくれるのも私のこと考えてくれてるんでしょ?…だから、」
にこりと微笑んでこっちを見る姉。普段より大人びて見えるのはどうしてだろう。
由利「こんなこと言ってる私だけど、それでもさ、お料理も出来ないし洗濯物貯めがちだし…夜更かしもしちゃうし頭も良くないからさ…由樹、面倒見てくれる?…一緒に暮らしてくれる…?」
由樹「…えぇ、そのために僕は日本に帰ってきました。姉様といられることが僕の望みでしたから…。」
由利「ふふっ…言ったわね…。面倒見てくれるって。」
???
由樹「…はい。…?」
由利「…まだね、ごっこでいーの。でも…」
もたれ掛かる姿勢から真っ直ぐにこっちを向く。頬は赤らんでいて仄かにシャンプーの匂いを纏っている。寝巻きはすこし着崩れていて見た目のわりにある胸と下着がちらっと…
あぁ、可愛いな。僕の姉は。
由利「絶対、好きになってもらうんだから…ねっ!」
照れ混じりの笑顔で言わないで下さい。
もう、とっくに大好きです。
きっかけは僕の悪戯のせいだから、自業自得なんだろうけど…
……とんでもないことしちゃったな…………。
なーんて、こんなにやけた顔で言っても説得力ないよな…。