におくさんびきのこぶた
いっぱいあるとすごそうにみえる
昔々、あるところに仲の良い子豚の兄弟がいました。2億3匹はいつも平和に暮らしています。
ある日、母豚が兄弟に言いました。
「お前達ももう立派な大人。これからは自分達の家を建てて自由に暮らしなさい」
ウオオオオオオオオオオオオ!
2億3匹は大層喜び、歓喜に打ち震え、その歓声は空を震わせる程でした。2億3匹はそれぞれ別の家を建てることにしたのです。母豚はその一言を全員に伝えるためにエネルギーを使い果たし、衰弱死しました。
長男は怠け者で面倒ごとが嫌いだったので、7000万匹の弟達を虐殺し、その死体で家を建てました。
七千万二男はずる賢かったので、7000万の弟達を使って豪邸を建てました。弟達は弱みを握られ、不眠不休で働かされたので完成する頃にはほとんどが過労死していました。七千万二男は残った弟達とバーベキューをして豪邸の完成を盛大に祝いました。弟達は豪邸の完成を涙ながらに喜んだそうです。
末弟は優しい心を持っていたので、6000万の兄達に開拓を願い、それぞれが持てる土地を分け合いました。力自慢の兄には土木作業を頼み、賢い兄には開発と文明の発展を、明るく、お喋り好きな兄にはそこら辺の雌ブタを引っかけてくるように頼みました。
そんなこんなで各々が楽しく過ごしていると、そこに2億1匹の狼が通りがかりました。
「なんだこの家は? 美味そうじゃねえか」
狼の群れは長男の家を食べ尽くし、生きていた長男が醜く逃げ惑うのをゲーム感覚で奪い合いながら全て食べ切りました。腐肉の一片も残さず、骨塚の山と化した長男の家を後に、狼達は長男が命乞いついでに吐露した七千万二男の元に向かいます。
「チッ! ここは少ねえな」
七千万二男の家は豪邸でしたが、そこに住むのは数匹の痩せ細った豚だけでした。
狼達は数匹で残っていた豚をペロリと平らげました。しかし、七千万二男はいち早く危機を察知し、末弟のいる家に向かいました。
末弟の家は、最早家ではありません。
国家でした。
七千万二男は長槍を持った門番に止められ、事情を説明して漸く末弟の元に事態を報告しに行きます。
「ありがとう兄さん。疲れたろう?少しゆっくりしていくといいよ」
末弟は毒の入ったワインを差し出します。
七千万二男はそれを飲み、やがてゆっくりと眠るように死んでいきました。
さて、狼達はというと。七千万二男の僅かな匂いを辿り、末弟のいる国に辿り着いたのです。
「来ました! 迎撃します!」
櫓から狼の姿を視認した見張り豚は、そう言って弓兵部隊に合図をしました。
曲射された弓の豪雨は、狼達の命をたちまち奪っていきます。
しかし、狼達も負けてはいません。残った狼は真っ直ぐに門に向かっていき、思い切り息を吹きかけました。数千万匹分の息吹は小さな竜巻となって木製の門を破壊します。
狼達は勇み足で国に侵入し、餌を求めて駆け回りました。
しかし、広大な国領であるのに、子豚の1匹も見つかりません。狼達はやがて、豚共が国の中央にある城に避難したのだと察します。
1億匹以上の狼が集まり、一斉に息を吹きかけます。しかし、先程と違い城門はびくともしません。
「まさか、鉄か!?」
1匹の狼が叫ぶと、狼達の間に動揺が広がりました。豚共が鉄を使うなど考えてもいなかったのです。
こうして狼達はこのまま攻め入ろうとする者達と手を引く者達の間で意見が割れ、互いに数を減らし合いました。
生き残ったのは、手を引こうとした者達でした。
「俺達はもうお前達を襲わない」
そう言い残し、数百万匹の狼達はとぼとぼと引き上げて行きました。
こうして生き残った末弟の国は、いつまでも平和に繁栄していきましたとさ。
圧倒的ハッピーエンド