第4話
[ユミルド樹林]
[へーリの森]より少し狭いこの樹林の最大の特徴は、幹が太く数十メートルはあるような木が、ところ狭しと密集していることだ。初めて訪れた人は、マアヌスの街から見ていたよりもずっと高い木に驚かされる。俺もまた、木の高さに驚かされている1人だった。
(おぉ、下から見てたよりもずっとでかいな……お、この木とかいいな。よし、んじゃ【採取】っと……あれ?回収できない?あ、倒木しかだめなのか……斧を買いに戻るのもやだしなぁ……作るか!)
そう思い立った俺は、【普通の木】と【良質な鉄】を取り出し、斧を作った。できた斧は【丈夫な斧】、Rの装備だった。ただ、【回復ポーション】のときと違い、右上に『NEW』と表記されている。
(なんだ『NEW』って?もしかして、俺が初めてこの装備を作ったのか?まぁいいや、木ぃ集めよ)
俺が斧を1振りすると、木に半分くらいダメージが入った。もう1振りすると、木のHPゲージが無くなり、木がその場から消えた。
俺の持ち物の中には【ベレの木】が300個、【ベレの葉】が250枚、【ベレの樹液】が1個入っている。
(【ベレの木】?てことは、この木から【ベレの樹液】が取れるのか。俺が1つしか回収出来なかったのは、【小瓶】が1つしか無かったからかな?
【ベレの葉】ってのが気になるけど、まぁ、目当ての木は手に入ったし、帰るか……ん?なんか足に引っかかってるな、糸か?)
俺の足には、とても細いが丈夫な糸が絡まっていた。俺がその糸の丈夫さに感心していると、急に糸が引っ張られ、俺は足を取られて樹林の奥に引きずり込まれた。
(なんだなんだ?お、止まった……おいおい嘘だろ……)
樹林の奥で糸引っ張っていたのは[フォレストスパイダー]という蜘蛛。しかも1匹じゃない。確認できただけで、6匹はいる。俺は逆さ吊りの状態からすぐに糸を切って地面に降りたが、既に囲まれている。
(1匹ずつ各個撃破していくしかないか)
俺はまず、真っ直ぐ突っ込んできた[フォレストスパイダー]に剣を真っ直ぐ振り下ろした。回避することなくそのまま体当たりをしてきた[フォレストスパイダー]は、真っ二つになって消えていった。
(まず1匹!次はあいつだ!)
俺は次の[フォレストスパイダー]を剣で切った。こちらも一撃で倒せたので、HPはそこまで高くないようだ。しかし、後ろから別の[フォレストスパイダー]に噛まれてしまった。ダメージはそんなに無かったが、視界の右上に、紫の泡のエフェクトがでた。『毒』だ。
(くっそ、毒か……早く残りの蜘蛛をやらないと俺のHPが尽きるぞ!)
俺は急いで次の[フォレストスパイダー]と距離を縮め、一撃で倒し、後ろから襲って来たもう1匹の攻撃を躱し、切り返した。あと2匹だ、と残りの[フォレストスパイダー]を探しているときだった。
視界の端で、何かが俺のところに飛んでくるのが見えたので、剣を振って回避しようとした。すると白い何かに当たった剣が、俺の手を離れていく。
(⁉くっそ剣が……)
どうやら、[フォレストスパイダー]が出した糸によって剣が絡め取られてしまったようだ。
(しゃーねぇ、いい感じの石を投げて、剣を取り戻すk……うぉ⁉)
俺が1匹に集中していると、後ろからもう1匹の[フォレストスパイダー]が糸を出し、俺の体を拘束した。
(くっそ、このままじゃ毒が回って死ぬぞ!……ん?入り口の方からなにか飛んで来る音がするぞ?)
入り口の方から飛んできたのは、1本の弓矢だった。その矢は寸分の狂いもなく、[フォレストスパイダー]の体を貫いた。
(うぉ、弓だ!東堂か?いやでも、あいつらはまだここに来れないし……誰か来るぞ)
木の影から出てきたのは、腰の高さまであるような長い金髪をポニーテールで結いた女性だった。身長は俺より少し高いくらいだ。
(どうやら、NPCのようだな……噂に聞くエルフってやつか?でも、エルフにしては耳が人間に近いな……そんなことより、助けてもらわないと)
「あの、すみません。これほどいてくれませんか?」
俺が声をかけると、女性はこちらを見て、ニコッと笑い、蜘蛛の糸をほどいてくれた。
(なんかNPCって、人間よりも話しかけやすいな)
「ありがとうございます。あの、エルフ族の方ですか?」
俺がそう聞くと、女性は笑いながら、否定した。
「違うわ、私は人間よ?『アルシア』って言うの。あなたは外の世界の人間よね?」
「あ、はい。佐藤要っていいます。助かりました」
「いいのよ、たまたま通りかかっただけだから、それより、はい、【回復ポーション】と、【解毒ポーション】」
(【解毒ポーション】なんてあるのか、作り方教えてもらおう)
「あ、どうも」
俺がポーションを受け取ろうとした時、アルシアさんの上から[フォレストスパイダー]が落ちて来た。そのことにアルシアさんは気がついていない。
「危ない!」
俺はとっさに斧を薙いで、[フォレストスパイダー]を吹き飛ばした。だが、斧ではダメージがあまり入らない。それに驚いたアルシアさんは大きく飛び退いた。
(くそ、剣をまだ拾えてないのに!こうなったら、ちょっと小さいけど、これでも喰らえ!)
俺が投げつけた石は[フォレストスパイダー]に直撃したが、ダメージを与えただけだった。
(くそ、ダメージが足りない!……やばい、毒がそろそろ……)
俺が毒のダメージで死にそうになっていることに気づいたとき、俺の後ろから矢が飛んできた。アルシアさんだ。やはり矢は綺麗に[フォレストスパイダー]の体を貫いた。
(なんとかなったみたいだな……もう、だめかも……)
「カナメくん、これ!」
アルシアさんが【解毒ポーション】をくれた。俺はすぐに飲み干す。
(あー、苦い。でも、毒のエフェクトがなくなったし、ほんとに効くんだなぁ)
「ありがとうございます。アルシアさん」
そう言って俺は自分の【回復ポーション】を飲んで、遠くに落ちていた自分の剣を拾った。すると、アルシアさんは笑顔で近づいてきて、
「呼び捨てでいいしタメ口でいいよ。それにしても、カナメくん、ありがとう!今度は私が助けられちゃったね!」
アルシアが、俺の手を取ってそうお礼を言ってきた。少し動くたびに大きな双丘もプルンと跳ねている。
(うわぁ……なかなか立派なものをお持ちのようで……目のやり場に困る。)
このまま見ていたい気もしたが、紳士な俺は、一緒に入り口まで向かいながら、気になっていたことを聞くことにした。
「あの、なんでここに?この樹林には何も無いって聞いたんだけど……」
「それは私もカナメくんに聞きたいわよ。私は木こりをやっているおじいちゃんの手伝いに来たの。ただ、途中ではぐれちゃって、迷っていたら要くんを見つけたの!」
「あ、俺も木を取りに。生産職やってて、木が必要になったから。んで木を取って、さぁ帰るかってときに、あの蜘蛛に捕まってさ」
「へぇ、そうだったの。それは災難ね」
「あ、そうだ、聞きたいことがあるんだけど……」
「なに?あ、彼氏ならいないわよ!」
「そうじゃないよ。さっきの【解毒ポーション】ってどうやって作れるんだ?」
「あぁ、なんだ、【ベレの葉】と【蜘蛛の毒】を混ぜたものを調合すれば作れるわ。【ベレの葉】があれば、状態異常回復系のアイテムはなんでも作れるわよ?」
(へぇ、そうなのか。【ベレの葉】って割と使えるんだな。いっぱい回収できてよかったな)
「ありがとう。帰ったら作ってみるよ……お、入り口に着いたな、アルシアのおじいさんは……」
「見つけたわ、おじいちゃーん!」
おじいちゃんと呼ばれた男性は振り向いて、こちらへ歩いてきた。
(ん?見たことのある顔……あ!)
「さっきはどうも。シュロさん」
「おや、さっきの少年かね。ええと……」
「あ、要って言います。佐藤要」
「そうか、カナメくんか。こんなとこで何をしてたんだね?」
「あぁ、ちょっと木が必要だったので、木を取りに来たんです。でも、途中で蜘蛛に襲われて、お孫さんに助けられました」
「助けられたのは、私もだからお互い様よ」
「そうか、アルシアを助けてくれたのか。ありがとうのうカナメくん。なにかお礼をしたいのだが、うちに寄らんか?」
「それがいいわ!さっきちょうどお兄ちゃんたちも帰ってきたところなの!ぜひ寄っていって!」
「あぁ、ありがとうございます。ただ、仲間が待っているので1回戻らないと……また来ますので」
「そうか?なら、お仲間たちも招待してくれても構わんが?」
(ダクニル地方から来たって言うと驚かれるかな?いや、いつかは言わなきゃいけないことだし、今言っちゃおう)
「あ、いえ、僕の仲間は[ダクニル地方]にいるんですよ」
そう言うと、驚かれるかと思ったが、そんなことは無かった。
「ほう、てことは[アシュヴィ山脈]を越えてきたのか」
「[アシュヴィ山脈]?」
「ソーマ地方とダクニル地方の間にある山脈よ。山脈や、大河を超えないと地方間の行き来はできないはずよ?」
(そうなのか、とりあえず話を合わせておくか……)
「あ、あぁ、そうなんだよ。あの山脈、[アシュヴィ山脈]って言うんだ」
「まぁ、また来なさい。今度は友人と一緒に山を超えて来るといい」
「はい、ありがとうございます」
「カナメくん、またね!」
「あぁ、また」
俺はそう言うと、天使像に向かった。
(そうか、あいつらもここに呼べるのか……でも、ここは第二の街だから、ダクニル地方でも第二の街に行く必要がありそうだな。他の地方にも行ってみたいな)
そんなことを考えながら、ザラマーナの宿に戻った。もうみんな戻ってきていたから、ギルドの設立は出来たようだ。
「おう、木ぃ集めてきたぞ。ギルド設立できたか?」
「お、要。お帰り、問題なく設立完了したよ」
「要、どうだい、俺のギルドに入らないかい?」
樋口が俺に勧誘の真似事をしてくる。俺は軽くあしらいながら、何かをしている東堂に問いかけた。
「わかったから早く招待してくれ。んで、東堂は何調べてたんだ?」
「あぁ、ランキングスコアの稼ぎ方と既出の武器とかを調べていたんだよ。今のところ、R以上のアイテムとか武器は1つしか無いから、今が稼ぎ時だぞ?」
「ああ、その1つ多分俺だわ……」
そう言って俺は、【丈夫な斧】を見せた。すると、中村が何やら計算を始めた。
「要、いまレベルいくつ?」
「ん、ええっと……おぉ、15だな。もうこんなに上がったのか」
「ありがと、多分今の要の個人ランクは100位くらいにいるんじゃない?」
「どれどれ……ホントだ。俺の個人スコアが1592でランキングが全体で98位だ……うお!1位は10000超えてるよ」
「でも、10000なんてすぐ超えられるよ!はい、招待したよー」
「お、ありがとう。んじゃ、早速武器作ってくか」
まずは1番素材を多く消費しそうな矢沢の大剣からだ。【良質な鉄】と【ベレの木】を使って出来た剣はRの【アムルソード】だ。これにもちゃんと『NEW』と付いている。俺はこれの持ち主を矢沢に登録した。
「お、750もスコアが上がってる。ありがとな、要!」
「んじゃ次は俺の刀作ってー」
「了解」
そう言って俺は刀を作ろうとした。そこで東堂が待ったをかける。
「【居合い切り】を使うんだったら、あんま重くない方が良いんじゃないのか?AGIがまだ少ないうちは、重たすぎるとスキルが有効活用出来ないかもしれないだろ」
「おぉー、確かにそうだね。軽い方が使いやすいかなぁ」
「んじゃ【普通の鉄】で作るか」
ということで、【普通の鉄】と【ベレの木】で出来た刀はR-の【金剛丸】だ。『NEW』装備である。
「おぉ!名前がなんかかっこいい!ありがとう要!」
「気に入ったの名前かよ……まぁいいけど。次は先に中村の杖を作るか」
「え?いいの?んじゃお願い」
俺は【ベレの木】で杖を作ろうとしたが、
(あれ?杖ってどうやって作るんだろう?)
「なぁ、杖ってどうやって作るんだ?」
「やっぱりそんなことだろうと思ったよ……木とかの素材で【杖の素】ってあるだろ?それを作ってから、最後に魔法使いが魔力を込めるんだよ。だから、【杖の素】の方を作ってくれればいいよ」
中村が教えてくれたが、東堂も知っていたようだ。あー恥ずかしい。ちゃちゃっと作って中村に渡すと、魔石みたいなものをはめた。すると、杖は光を放ち、形を変えた。名前は【アネモスメイス】で、R+の装備だ。
「おぉ、すげぇかっこいいな。はめた魔石って何なんだ?」
「あぁ、あれ?ほんとは魔法使いが魔力を込めなきゃいけないんだけど、俺のMPだと全部使っても中途半端な杖になっちゃうから、【風の魔石】を買っといたんだ」
「へぇ、そうなのか、【風の魔石】ってことは、風魔法以外は打てないのか?」
「そんなことないよ。風魔法の威力が上がるだけで他の魔法も使えるよ」
(そうか、中村は【風魔法(中)】を持ってたな)
「さて、東堂の弓も作るか」
「弓を作るには糸が必要だろ?今はまだ無いから後でいいよ」
「あ、いや、さっき【蜘蛛の糸】とってきたんだ。多分作れるよ」
「お、そうなのか。ならよろしく頼む」
俺は【ベレの木】と【蜘蛛の糸】を使い、弓を作った。【アイフェウス】と言う名前の、R-の装備だ。
「お、いい感じだな。ありがとう、要」
「おう、弓はいいんだが、矢はどうするんだ?」
「あぁ、矢は店に売ってるのを買うよ。何使っても結局【属性付与】で水属性の矢になるからな。作ってもらうにはコストがかかりすぎる」
(そういうことならまぁいいか。さて、最後は俺の武器だ。とりあえず盾と剣作るか)
俺は【良質な鉄】で剣と盾を作った。どちらも、R+で、【メタルソード】と【メタルシールド】だ。さっきシュロさんにもらった【ベレの樹液】を使って剣と盾をコーティングしてみた。他の4人は俺の作業を見ている。
(おお、割と難しいな……剣の方は出来たが、【武器破壊耐性(小)】か……お、盾の方は【武器破壊耐性(中)】がついたな)
俺の作業が終わったのを見て、東堂が質問してきた。
「おい、今塗ってたのはなんだ?武器に能力が付与されたようだが……」
「あぁ、これを武器に塗ると、武器破壊攻撃をされたときに武器の耐久が減りにくくなるんだって。後で、お前らの武器にも塗ってやるよ」
「いや、俺は弓だからいいわ」
「俺の杖も大丈夫。前衛の方が消費も激しいだろうし、健一と純の武器にやってあげたら?」
「そうか、んじゃ矢沢、樋口。もっかい剣貸してくれ」
そういうと、2人は剣を渡してきたので、【ベレの樹液】を塗った。
(よし、まぁまぁかな?流石に特大は出なかったけど)
「ほらよ。矢沢の大剣には【武器破壊耐性(大)】が、樋口の刀には【武器破壊耐性(中)】がついたぞ」
「おぉー、ありがとよ要!」
「いやぁ、これで俺がまーた強くなっちゃうなぁ」
「普通に使ってればいつかは壊れるけどな」
俺は、そう伝えて、作業を終えようとした。その時、あることが閃いた。
(そうだ、投げナイフでも作るか、でも普通の投げナイフだと【良質な鉄】が足りないな。【普通の鉄】を使うか?いや、でもなぁ)
俺がいいものがないかと、いろいろ持ち物を探していると、【さそりの毒針】を見つけた。
(ん?これと【良質な鉄】を調合すれば……)
早速俺は調合をしてみることにした。出来たのはR+の【壊鉄】という素材だ。しかも、1つの【さそりの毒針】と、3つの【良質な鉄】から6個も作れた。
(なんだこれ?まぁ増えたしいいか。これでとりあえず12本の投げナイフが作れるな)
俺はそう思い、投げナイフを作ったのだが、その性能に驚かされた。出来たのはR+の【デストロイダガー】、攻撃力は低いが、能力に【武器破壊(大)】があった。
(【武器破壊(大)】ってことは敵の武器を壊せるのか?これかなりすごくないか?あ、でも、攻撃用の投げナイフも作らなきゃな)
俺が驚いているのを見て、中村が質問してきた。
「要、その投げナイフの能力、何?」
「ええと、【武器破壊(大)】だって。多分、人型モンスターの武器とか壊せるんじゃない?」
「おお、でも攻撃力が低いな。まぁ、サポートにはちょうどいいだろ」
「ねぇねぇ、全員の武器も作り終わったし、これからなんか『ギルドクエスト』やりに行かない?」
リーダー(仮)の樋口がそう提案してきた。『ギルドクエスト』は、普通のクエストよりも報酬がいいらしい。その分討伐数などは多いが、みんなで分担すれば問題ないそうだ。
「『ギルドクエスト』を進めると『ギルドポイント』がもらえて『ギルドスコア』が上がるんだ。そのうち、【ギルドホーム】を建てられるようになるよ!」
「へぇ、その『ギルドスコア』ってのは俺らのランキングスコアとは違うのか?」
「えっとねぇ、俺らの個人のスコアの合計に、『ギルドポイント』を足したのが『ギルドスコア』だよ」
「なるほどな!……あれ?……てことは、今NEW武器かなり生産したから、もうかなりギルドスコア上がってんじゃないのか?」
「「「「あ!」」」」
矢沢に言われて気付いた俺たちは全員同時に『ランキング』を調べた。そして、全員が同じタイミングで驚愕した。最初に口を開いたのは、矢沢だった。
「おお!ギルドランキング3位か!すげぇな!」
「しかも、ダクニル内では1位だ。こんなにすぐに上がるんだね!」
「いやぁ、これも俺の活躍のおかげかなぁ」
「俺らは何もしてねぇだろ?全部要のおかげだろ?なぁ要?」
「お、俺、個人ランキング1位だ……」
そう、俺のスコアは11792、2位と1000ほどしか離れていないが、一応1位になった。みんなが口々に俺を褒める。
「おぉ!すごいじゃん要!」
「10000か……このペースならまだまだスコアを上げられるかもな」
「これさ、トッププレイヤー要がいるならボス行けちゃうんじゃない?」
「馬鹿かお前は。俺らのレベルはまだ10とかそのくらいなのに、推奨レベル15のエリアボスに勝てる訳ねぇだろ」
「んじゃ、さっき言ってたように『ギルドクエスト』やりに行こうぜ!」
矢沢がそう言ったので、俺たちは立ち上がり、出かける準備を始めた。俺はちょうど森の話で思い出したことがあったので、一応報告しようと思い口を開いた。
「あ、そうそう。ソーマ地方への行き方が見つかったよ」
俺が軽いノリでそう伝えると、みんなの動きが止まった。そして全員が一斉に振り向く。
「「「「どうして早く言わない‼」」」」
「あ、すみません……」
俺はシュロさんとアルシアに会ったこと、[アシュヴィ山脈]を越えれば、ソーマ地方に行けること、【解毒ポーション】を作れること
を話した。 【解毒ポーション】は作って見せた。『NEW』とついていたので、どうやらNPCの持っているアイテムでも、初めて作ったのものは『NEW』がつくようだ。
俺の話を聞いて、どうやら今後の方針が固まったようだ。
「とりあえず、ザラマーナのボスだな。それを倒してから山登りだ」
「いやぁ、女性と話せない要が話せる女性かぁ、どんな人だろうなぁ」
「NPCは大丈夫なんじゃないか?てか要、話を聞いていた限りだと、助けてもらっただけのヘタレじゃねぇか。そんな仲良くなったならもっとなんかあるだろう?」
「お前みたいにすぐ仲良くなれるわけないだろ。蜘蛛に苦戦してるところを助けてもらった。それだけだよ」
「いや、俺が何したって言うんだよ……」
文句を言う東堂を無視しながら、俺たちは『ギルドクエスト』をこなすため、[へーリの森]へ向かった。