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第27話

 俺たちは東堂たちが先に向かっていた弓職人の家に来ていた。本当はここで弓の作り方を確認し、問題があるようなら指導をすはずだったのだが……何故か、弓職人の男性と谷口が喧嘩をしていた。


「おいおい……何してんのこの人たち?」


「おう、要。そっちは終わったのか?」


「あぁ、なんか変なのが取り憑いてたみたいでな。それで、何してんの?」


「お願いです!お願いですから!1杯10000G、いや、20000G払いますから!」


「こらほどはだめだ!おめもこれがうぢの村の唯一の強みだって言ったべ!それにおらだちはお金なんか使わねぇ!」


「そこをなんとか!お願いします!」


 谷口が男性に縋り付いているところを見ると、何かまた金を稼ぐ方法を思いついたんだろう。俺が呆れていると、東堂が【小瓶】を渡してきた。


「ん?なんだこれ?」


「谷口が土下座してまでも欲しいものだ。ま、うちのギルドでこれを使いこなせるのはお前だけだけどな」


(俺にしか使いこなせない?一体なんなんだ?なになに……【妖樹の蜜】《装備品に塗り込むとランダムで1つのステータスを低下させる。また、他のステータスを大幅に上昇させる》……へぇー、これはすごいな)


「読んだか?いくつかうちのギルド用にそれをいくつか貰ったんだ。これで俺らの武器を強化してくれよ」


「オーケー。そういや俺の武器が壊れてさ。自分のを作るついでにみんなの武器も新しく作ろうか?」


「お、それなら俺の弓も頼む。中村、お前はどうすんだ?」


「俺は魔石がないと作りようがないからまた今度お願いしよっかな?」


「カナメくん!私の弓も作ってー!」


「……私はこの前作ってもらったからパスで」


「私は武器とか使わないからなぁ……もったいない」


 ここにいるギルドメンバーが口々に俺に告げる。今のところ弓を2張作るだけだが、多分後で前衛の3人の分の武器も作ることになるだろう。


「はい!さっきフィリーから切った枝だよ!これで作れるかな?」


「ありがとうアルシア。んじゃ早速……」


「あ、要くん。私の弓と東堂くんの弓の種類って変えられたりするかな?」


 アルシアが俺の耳元でそう囁いた。東堂は谷口を抑えに行ったためここにはいない。


「ん?まぁ素材に使う鉱石を変えればできるだろうけど……なんでまた?」


「私と東堂くんがお揃いじゃのぞみちゃんが可愛そうでしょ?だからお願い」


「あぁそういうことか。りょーかい、んじゃまずアルシアの分から……」


 俺は【妖樹の枝】と【良質な鉄】を使って東堂の弓を作る。出来たのはまんま【エルフの弓】だ。俺は【妖樹の蜜】を塗ってからアルシアに渡す。


「はい、これでどうかな?」


「おお!これかっこいいね!ありがとうカナメくん!」


「どういたしまして。さて、東堂の分だけど……お、素材に使う鉱石の種類を変えればいいのか……」


「お、そういうことならこれ使えるか?」


 様子を見に来た東堂が青い石をとりだした。【青の魔石】と言うらしい。


「あれ?東堂、これどうしたんだ?」


「この前クエストの報酬で【青の魔石】の原石を手に入れたんだ。精製してから谷口に売りつけようとしてたんだが忘れててな。せっかくだしこれで作ってくれ」


(クエスト?……あー、そういやこいつ一人でよく出掛けてると思ったら、クエストをやってたのか)


 俺は納得して東堂から【青の魔石】を受け取った。



 俺たちは同じギルド、同じ家にいるといっても、普段やることはみんなバラバラだったりする。

 東堂はいつもコツコツとソロクエストを消化している。そのためお金や【青の魔石】のような少しレアなアイテムを沢山所持しているらしい。


 中村や優香さんや和泉さんはフィールドの調査隊に参加することが多い。既存のフィールドから新しい遺跡などが見つかることが分かってからはギルド同士で協力してフィールド探索が行われているようだ。

 前衛の3人はほぼ毎日フィールドに潜ってモンスターを狩っている。おかげでレベルはかなり高く、3人での連携もかなり取れるようになっていた。

 俺はというと、ルドリスさんに手合わせしてもらったり、[ナルス洞窟]に鉱石を取りに行ったり、他の人の武器の修理用の素材を集めたりしているのだ。



(あれ?そういえばアルシアは普段何してんだ?……ま、いっか。さて、東堂の弓を作って……よし、出来た)


 俺は青く光る弓を東堂に渡した。名前を【ブルースター】というそうだ。これも【妖樹の蜜】を塗って渡す。


「ちっ、スピードが下がりやがった。それだけは落ちてほしくなかったんだが……お、水魔法を付与した時の威力が上がるみたいだな。ありがとよ。そろそろあいつら帰ってくるんじゃねえか?」


「あー!キッツ!この暑さの中外で道の整備とかやってられっかよー!」


「それな!途中で永田ちゃん休憩に行ったのに俺らは休憩無しなんて理不尽だよな!」


「うっさいわね、あんたたちがシャベルでバンドの真似事してるのが悪いんでしょ」


 東堂と話していたちょうどその時、道を作りに行っていた3人が帰ってきた。3人とも汗だくなのを見て男性がタオルを差し出す。


「おーおっさん、サンキューな。それより東堂、それ新しい武器か?」


「そ、俺が作ったんだよ。お前らの武器も作ろうか?」


「お!それなら俺の新しい相棒も作ってくれ!」


「俺も俺も!ちょうど武器が壊れそうだったんだよ!」


「オッケー。椛さんはどうする?そのガントレット、かなり傷んできてたんじゃない?」


「そうね、ついでだしお願いしようかしら」


「え?でもモミジちゃん、この前新しいガントレットを買っ……むごご……」


「アルシア、ちょーっと黙ってなさい」


 何かいいかけてたアルシアの口を椛さんが塞ぐ。よく分からないが、とりあえず樋口の刀から作り始める。


「【金剛丸】は黄色がかってる色だったし、今度は銀色の刀作ってくれよ!」


「やっぱ見た目重視なのか……ええと……お、【良質な銀】か」


「お!銀いいね!それ使って作ってくれよ!」


「え、でも銀は柔らかいしなぁ……鉄と混ぜればいい具合になるか……?」


俺は疑問に思いながら刀を作成する。できたのは【妖刀・白銀丸】だ。【妖樹の蜜】を塗ると、耐久力が下がってしまった。


(妖刀?ってことは秘めた力でもあるのか?てかただでさえ柔らかいのに、さらに耐久力下がったってすぐ壊れんじゃないか?)


「おー!妖刀か!なんかかっこいいな!」


「あれだろ?それで主人を斬ろうとしても斬れないってやつだろ?」


「まじで?よっしゃー!俺がこの刀の主人だって見せてやらァ!」


 矢沢に煽られて樋口が右手に持った刀を左手に振り下ろす。刀は左手をすり抜け……ることなく、樋口のHPを4分の1ほど削った。


「うあぁ!痛え⁉なんだよー!やっぱ斬れんじゃねえか!」


「えー?そうなのかー。まだお前のこと主人って認めてないんじゃね?そういや、前の剣どうするんだ?まだ壊れてないだろ?」


「ふふーん!俺は二刀流で行くぜ!佐々木小次郎みたいにな!」


「二刀流で戦ってたのは宮本武蔵だと思うよ?」


 樋口の間違いを中村が訂正する。それを横目に見ながら、矢沢の大剣を作る準備をしていると矢沢が俺に近づいてきた。


「なぁ要。俺さ、槍使ってみたいから作ってくれよ」


「槍?なんでまた急に……」


「いやさ、この前クレルとクレナさんが薙刀使ってんの見たら俺も長いやつ使いたくなってよ。攻撃力が高いやつ頼むわ!」


「攻撃力が高いやつねぇ……分かんないけど、とりあえず作るか」


 俺はとりあえず【良質な鉄】を使って槍を作る。出来たのは【コルヴィーチェ】という槍だ。【妖樹の蜜】を塗るが、攻撃力は下がらなかったので文句は言われないだろう。


「お!出来たか?どうだ?高火力な武器になったか?」


「あぁ。ま、流石に大剣よりは攻撃力は出ないけどな」

(【良質な鉄】で作ったからそんなに強い槍じゃないけど……まぁ黙ってれば分かんないだろ)


 俺はそう思い、次は椛さんのガントレットを作ろうと椛さんの方を向く。


「椛さんはどんなガントレットがいいとか、希望はある?」


「特にないわ。カラフルなのは嫌だから普通のにしてもらえるかしら」


「了解。んじゃ【良質な鉄】を使って……と。こんな感じかな?」


 俺は完成した【ゲルダグローブ】に【妖樹の蜜】を塗って椛さんに渡した。


「あんた、いい仕事するわね。ありがと、大切に使わせてもらうわ」


 椛さんは手につけて感触を確かめてから俺にお礼を言った。どうやらお気に召したようで、顔を明るくしてガントレットを眺めている。


(さて、俺の剣を作るか……あれ?……【良質な鉄】がもうない⁉嘘だろ、いっぱい取ったと思ってたのにな……しゃーない、とりあえず少しだけある【良質な鉄】となんかで武器を作るか……)


 俺は自分のインベントリのなかで1番使えそうな鉱石を探す。あったのは【良質なルビー】くらいだったが、仕方がないのでこれで剣を作る。

 出来た【ルージュソード】に【妖樹の蜜】を塗っていると、樋口が様子を見に来た。


「おぉ!赤い剣か!かっこいいな!強いのか」


「どうだろ……いや、考えるまでもなく今までの剣より弱いな。まぁオルペンスに着くまでのつなぎには使えるかな」


「ええー、そんなかっこいいのに作り直すのかよー。もったいねぇ」


「お、佐藤、剣買う?いいの入ってるよ?それよりちゃんと攻撃力も高いやつ!さぁ買った!」


 俺の足元を見た谷口が剣をいくつか取り出して机に並べた。


「いや、なんならすぐにでも作れるし、間に合ってるから」


「ちぇ、今日はうまく行かねぇなあ」


「あぁ、【妖樹の蜜】の交渉も失敗したんだ……」


「くっそー、まぁまた来るか……さて、そろそろオルペンスに向かうけど、そっちは準備できてる?」


「あぁ、俺らは行けるぞ」


「あら、もう出発されるのですか?」


 空を飛んでいたフィーアさんが人間の大きさに戻った。東堂がギルドを代表して、フィーアさんの前に立つ。


「お世話になりました」


「いえ、お世話になったのはこちらの方ですわ。また遊びに来てくださいな」


「ええ、是非」


 俺たちは樋口たちが作った道を歩いてオルペンスへと向かった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺たちはオルペンスの近くで野営の準備をしていた。谷口曰く、明日の昼には到着するような距離だそうだ。


「明日には着くんなら夜の間も移動すればいいんじゃねえの?」


「もうこの時間だと街の門も閉められてるし、こんな時間に森から入ったら即通報されるからよ」


 矢沢の疑問に椛さんが答える。すると、東堂が椛さんの違和感に気がついた。


「おい永田、いつもは野営んときはガントレット外すのに今日は外さなくていいのか?」


「は?そんなの私の勝手でしょ。付けてるのはただ単に……」


「……佐藤くんにガントレット作ってもらったのが嬉しいからずっと付けてる……」


「ちょ⁉違うわよ⁉勝手なこと言ってんじゃないわよ和泉⁉ただオルペンスが近くて気が緩んで来てるから警戒してるだけよ!」


 椛さんが和泉さんにそう言ったとき、森の奥の方からガサゴソと音が聞こえた。


「ほら!ああいうのをすぐに対処するためよ!【発勁】!」


「ちょ!まだ何がいるか分からないのに……」


 椛さんは音のした方向に発勁を打ち込んだ。和泉さんが【索敵】をしたようで、敵の数を俺たちに告げる。


「……人が4匹いる……でも人造人間」


「はぁ?人造人間がなんでこんなところにいるのよ?」


「……あと倒れた人が1人」


「それを先に言いなさいよ馬鹿ぁ!」


「とりあえず助けに行くぞ。前衛4人、お前らは人造人間の処理だ。中村と高崎は倒れてる人の救助だ。俺たちはもう一人ここに招き入れる準備をするぞ」


「「「了解!」」」


「……距離は50メートルくらい」


「分かったわ。あんたたち!行くわよ!」


 東堂の支持に従って俺たちは動き始める。俺たちが向かった先には、フードを被った人が倒れていた。周りにいる人造人間が武器を向けている。


「こらー!人を襲ってんじゃねぇ!」


 樋口が大剣を振り下ろそうとしていた人造人間に2本の刀の【居合い切り】をぶつける。しかし、二刀流にまだ慣れていないのか、ダメージは前とあまり変わらない。


(こいつら、前の人造人間とは違うな……長橋工業とは無関係か?)


「……佐藤くん、多分親玉は前と一緒だけど、種類が違う」


「種類?まぁいいや。中村、和泉さん!先にその人を東道たちの方へ連れてって!」


「……了解」


「オーケー、そっちはよろしく」


 俺が中村と和泉さんに支持を出す。2人と怪我人が去ったのを見て、椛さんが話しかけてきた。


「佐藤くん、あいつらと戦ったことあるんでしょ?なんか弱点とかないの?」


「いや、普通の人間と一緒だよ。急所は首とか心臓とか……」


「よっしゃあ!一撃で仕留めたらァ!」


 矢沢が新しい槍をぐるぐると回して目の前にいたレイピア使いの女の人造人間の心臓を一突きした。槍はきれいに胸に突き刺さる。しかし、女は動きを止めることなくレイピアを矢沢に向けて突いてくる。


「うわ⁉おい要!心臓刺したけど死なねえぞ⁉」


「HPはちゃんと減ってるから幻影魔法ってわけじゃないだろうけど……もしかして……」


 俺は気になったので、矢沢に向かってレイピアを突き刺している人造人間を剣で吹き飛ばそうとした。人造人間が少しよろけたところを矢沢が大剣を降り下ろす。HPは半分くらい減ったようだ。


「あれ?……あー、そういうことか?」


「ちょっと、何が分かったっていうのよ!」


「こいつ……多分ロボットの類だ」


 俺はそう言った。3人ともキョトンとしているのでそう思った根拠を話す。


「ええっと、俺はこいつらが中身の詰まってない人形だと思って吹き飛ばそうとしたんだよ。でも、すげぇ重かった。鉄の塊みたいに」


「それ、ただ体が重いだけの人間なんじゃねぇか?」


「それなら心臓を刺してんだからもう死んでるはずよ。他にヒントもないんだし、あいつらはロボットだと思って戦うしかないわね」


「うーん……よく分かんねぇけど、壊せばいいんだな!」


 矢沢がそう言ってさっきHPを削った人造人間に斬りかかった。俺も別の人造人間へと走っていく。


(あれが鉄製だったらこの剣じゃ歯が立たなそうだな。いや、要所要所を狙えばいけるか?……お、この前作った【鉄球】がある。これなら壊せるか?)


 俺はいつか使うだろうと思って作っておいた鉄球を取り出した。【良質な鉄】の塊なのでかなり重いはずだが、【強肩】の効果で軽々と持ち上げられている。

 目の前の人造人間が弓矢を放とうとしている。俺は矢を盾で受け、人造人間の心臓と首の間を目掛けて【鉄球】を投げる。


 ただでさえ重い球がかなりのスピードで飛んでいく。人造人間の左肩に着弾した鉄球は体に大きな穴を空け、後ろへ飛んでいった。


(うお⁉すげぇ威力⁉……あ、やっぱりロボットだったのか)


 俺は体の中から出ているケーブルのようなものを見て確信する。残りHPも少ないので止めを刺そうと近づく。しかし、俺が近付くとロボットは走って逃げてしまった。


(あ、逃げられた。まぁいっか。他のみんなは……げ、ちゃんとみんな仕留めてんのか……)


 俺は少し気まずいがみんなの元に戻る。矢沢と樋口はロボットを完全に破壊して爆発したようだが、椛さんが対峙したロボットは四肢がもぎ取られ、身動きが取れないようにされていた。


「椛さん……これ……」


「な、なによ。東堂くんとか和泉に見せれば何か分かるかもしれないでしょ?」


「ええと、一応聞くけど……どうやったらこうなるの?」


「……腕ひしぎと膝十字固め……」


 俺たちは取れた四肢を見て戦慄する。樋口はいたずらを自重しようと思ったようだ。


「ま、まぁとりあえず戻ろっか。倒れていた人も気になるし」


「そうね。戻りましょ」


 俺たちはロボットを抱えて野営場所まで戻った。倒れていた人が肉を頬張っている。倒れているときは分からなかったが、体の大きな人のようだ。


「あ、要帰ってきた!どう……うわ⁉何それ⁉」


「あぁ、さっきの敵だよ。どうやらロボットだったみたい……あ、大丈夫でしたか?」


「うん。ありがとねー要」


 俺が倒れていた人に声をかけると、手を止めて俺にお礼を言った。俺の名前を知っていることに疑問を抱いていると、男性はフードを取った。


「よ、要、矢沢、樋口。3ヶ月前ぶりくらい?」


「「「か、か、唐橋〜‼」」」


 俺たちは大きな声を上げて驚いた。そこにいたのは、中学まで同じ学校で高校から長橋工業に行った唐橋哲也だった。


「久しぶりだな!元気だったか?」


「お前また太ったんじゃねー?」


「長橋工業はどうだ?共学なんだろ?」


 俺たちは矢継ぎ早に質問を飛ばす。唐橋は飯を食いながら返事をする。それを見ていた椛さんが話しかけてくる。


「ねぇ、このデブ、あんたたちの知り合いなの?」


「直球だね……唐橋哲也、俺たちと同じ学校だけど、長橋工業高校に転校したんだ」


「はぁ?さっきの長橋工業高校の回し者でしょ?あんた、なんで襲われてたのよ?」


「うーん……話すと長くなるんだけど……珍しい鉱石を手に入れたら、『長橋工業』の幹部たちに献上しろって言われてさ。なんとかオルペンスから逃げてきたんだよ」


「そういうことか。てことは、このロボットはお前らんところのか」


「あぁ、幹部のロボット学のエキスパートが作ったんだよね。かなり頑丈に作られてたはずなんだけど……これはちょっと……」


「何よ!こうするしかなかったのよ!」


 四肢の取れたロボットを見て唐橋が戦慄する。それを見ていた樋口が唐橋に近付いていく。


「なぁ唐橋、俺の刀がすぐに耐久度減っちゃってよお。どうにかならない?」


「ちょっと見せて……ふむふむ……ここを直せば……」


 唐橋は【武器作成用ハンマー】を取り出し、樋口の刀を何回か叩いた。すると、刀は輝きを取り戻した。武器の名前も【白銀丸・改】となっている。


「おおー!すげぇー!ありがとうよ唐橋!」


「どういたしまして。素材も余ってるからね」


「あ、唐橋、素材余ってる?」


 俺は唐橋の言葉を拾って聞き直す。今の武器では攻撃力に不安が残るのだ。


「素材なら余ってるけど……武器なら作るよ?」


「まじで?んじゃお願いしようかな?」


「オッケー。ならちょっと立って……よし」


 俺は唐橋に武器を作ってもらう。【ミスリルソード+(プラス)】というアイテムだ。


「ミスリルソード……プラス?このプラスってなんだ?」


「あぁそれね。それは特注品(オーダーメイド)の印だよ」


「オーダーメイド?」


「うん。人それぞれの腕の長さとかって違うからそれに合わせた武器を作るんだよ。ちょっと時間はかかるけど、その人に合った武器が出来るから攻撃力とかがちょっと上がるんだ。最も、その人専用だから他の人が使うと使いにくいだろうけどね」


「へぇ、それって俺でも出来るのか?」


「そっか、ここの生産職は要か。えっと、まずは……」


「おいおい、明日もあるんだからもう寝るぞ」


 生産職同士の会話で盛り上がろうとしたところに東堂が水を指す。オルペンスの案内が出来ると言うことなので、明日唐橋を連れてオルペンスに向かうことを決め、俺たちは床に着いた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


[次の日]


「とーうちゃくー!」


 俺たちは午前中にオルペンスの街へと到着した。ここは宗教が栄えている街とのことで、それの影響か建物はすべて真っ白だ。


「いやーお前ら、ほんとにありがとうな!おかげで予定の半分くらいの日程で完成したよ!じゃあ俺らは営業の許可証もらってくるから、またな!」


 谷口たちはそう言って営業の許可を取りに行った。俺たちは観光をする予定だったので移動をしようとしたとき、俺たちの元へ2人の聖女が駆け寄ってきた。


「ラジエル様を信仰致しませんか?」

「ミカエル様の加護をお受けになりませんか?」


 急な出来事で話を飲み込めていない俺たちは、突然現れた聖女の話を聞いてみることにした。

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