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第26話

 宴を行った次の日、俺たちは弓職人の男性に弓を作る工程を見せてもらうことにした。いざというときに戦う武器が貧弱では話にならないからだ。


 ちなみに、セイコー商会と俺以外の前衛の3人は壁の一部に穴を開け、村の中に道を引く準備をしている。俺は一応このギルドの生産職なのでこっちで話を聞くことにした。


 男性はまず木を取りに行くと、【妖樹フィリー】へと案内してくれた。


「これがおらだぢの御神木【妖樹フィリー】だ!どうだ?すごいべ?」


「いや……これはちょっと……」


 東堂が苦虫を噛み締めたような顔をした。御神木といって男性が指さした木は枝が好き勝手に伸びていて、葉っぱも生い茂っている。なにやら良くない気も溜まっているようだ。その様子を見たアルシアが弓職人の男性に詰め寄った。


「なんでここまで手入れを怠ったんですか!他の木はちゃんと手入れしてあるのに!」


「ご、御神木さ触れるどおらだぢは死ぬんだ!今までもそうやって何人ものエルフが死んでぎだんだ!」


 男性がアルシアに言い返す。すると、男性の持っている籠の中からティーアさんが飛び出してきた。


「その人の言っていることは本当ですわ。わたくしが村長になってから、何人もの木こりがフィリーの手入れに挑戦いたしましたの。ですが、木に触れた途端に皆苦しみ、命を落としていますの」


「そんな……木に触っただけで死んじゃうなんて早くなんとかしないと!」


(あー、アルシアはマアヌスのツリーハウス出身だからな。木が枯れることは家が無くなるわけだし、そりゃあ必死にもなるか)


「待て。木に触ったら死ぬのをどうにかするって、何か考えはあんのか?」


「ええっとぉ……それはまだちょっと考え中で……」


「なら手っ取り早く燃やせばいいだろ。中村の魔法かなんかで」


「それは絶対だめ!」


「ってもやれることがなんもねぇんだろ?それなら他のエルフが被害を受ける前に切り倒すか焼くかすべきだろ」


「うぅ、そうだけど……」


「決まったな。中村、この木を……」


「な、なぁ、エルフって森の妖精なんだろ?だから邪気が溜まった木に触ると死んじゃうだけで、人間なら大丈夫だったりしない、かな?」


 俺は中村に指示を出そうとした東堂にそう提案した。もちろんダメ元だが、本気で御神木のことを思うアルシアを少しでも助けられたら、と思ったのだ。


 東堂は少し考えたあと、納得したように、


「確かに一理あるな。ならうちのギルドで1番邪気が溜まっている永田に触らせてみるとしよう」


 と言って、ギルドチャットで椛さんを呼び寄せた。うちのギルドで1番は東堂じゃないかと思ったが、口にはしない。


(よし、これでアルシアが何か方法を考える時間稼ぎにはなっただろ。俺も何か案を出せればいいんだけどなぁ)


 俺がそう思っていると、すぐに椛さんたちが【妖樹フィリー】の前にやってきた。


「ちょっと、急に呼び出してなんの用よ?」


「わりぃな。ちょっと永田の力が必要でな」


「はぁ?あんたたちは弓を作るって話だったじゃない。なんで私が必要なのよ?」


「いいから。そこのでかい木の幹に触ってくれ」


「ったく……なんだっていうのよ……」


 椛さんはしぶしぶ木に触れた。その瞬間、木から紫の煙が吹き出し、椛さんの腕を弾き飛ばした。


「ちょ⁉なによこれ⁉ドッキリ⁉なんかエフェクトついてダメージ入ったわよ⁉」


「……!椛に『呪い』のエフェクトがかかってる」


「『呪い』?なによそれ?」


 驚いている椛さんに和泉さんが説明を始めた。俺も良く知らないので【回復ポーション】を椛さんに渡してから和泉さんの話を聞く。


「……ダメージとしては毒がちょっと弱い感じしか入らない……ただ、毒と違ってポーションとか回復魔法で解除出来ない……」


「ったく、面倒くさいわね。ずっと回復してなきゃいけないじゃない」


「……『呪い』の効果があるうちは【回復ポーション】や私の回復魔法が効力を示さない……」


「はぁ⁉それじゃあどうすればいいのよ⁉」


「……今すぐに取れる手段はただ1つ、王子様の抱擁だけ」


「お、王子様⁉あ、あんた、ふ、ふざけたこと言ってんじゃ……」


「HPがあと4分の1を切った。さぁ早く」


 和泉さんの話を聞いて、椛さんが顔を真っ赤にして慌て始めた。話を聞いていたアルシアと優香さんも顔を赤くしている。

 樋口と矢沢が椛さんの前で膝をついて手を差し出しているが、椛さんの眼中にはないようだ。逆に、中村と東堂は全く興味が無さそうだ。


 俺が椛さんがどうするのか気になってボーッと椛さんを見ていると、椛さんと目が合った。椛さんは俺を見て顔をより赤くしてから目を逸らした。


(あ、俺は選ばれなかったのか。分かりきってたけど、ちょっと凹むな……)


「さぁ椛、早くしないと死んじゃう……HPがなくなってる……」


「うぅ……えと……」


「和泉さん、そこまでにしとこ。椛さん困ってるから」


「痛っ……椛が誰を選ぶかくらいは見たかったのに……」


 中村が和泉さんの頭に軽くチョップを入れた。俺たちがなんのことだか分からずにキョトンとしていると、中村が説明をしてくれた。


「実はね、『呪い』にそんな面倒くさいことをする必要なんか無いんだよ。回復魔法だって使えるし、時間が経てば勝手に効力が切れるし」


「はぁぁ⁉和泉!あんた何してくれてんのよ!」


「……別に間違った方法じゃない」


 椛さんは和泉さんの胸倉を掴むが、和泉さんはそっぽを向いた。それを見た中村が呆れたように補足の説明をする。


「うーん……確かに他人との接触で自分の『呪い』の効果は無くなるけど、別にハグである必要もないし、何なら同性でもNPCでも大丈夫なんだよね」


「……接触面積が大きい方が早く『呪い』が無くなるとか……」


「そんなこともないよ。第一『呪い』が他の人に移るだけだからね。大人しく時間経過を待ったほうが早いよ」


「和泉ぃ、覚えてなさいよ……あ、『呪い』の効果が切れてるわね。しっかし、なんなのあの木?呪われてんなら切り倒した方がいいんじゃないの?」


 椛さんがティーアさんにそう聞いた。ティーアさんは困ったような顔をして返事をする。


「いえ、御神木である【妖樹フィリー】を切り倒すことはエルフの破滅へと導くと言い伝えられていますの。ですから、これを切ることは村人の不安を煽ることになりますわ」


「そうは言ったってなんもしないのも危ないじゃない。なんか対策できないの?」


「そうですね……フィリーにかかっている『呪い』の原因が分かれば対策もできるのですが……」


「原因が分かれば対策はできるの⁉」


「えぇ、おそらくは。ただ、原因を解明するのは相当大変かと思われますわ」


 アルシアがティーアさんの言葉に食いついた。そして、【妖樹フィリー】の前に立ち、なにやら呪文を唱え始めた。


「〈アルラネ・デロリ・カルターラ〉!」


「アルシア?急にどうした……うわっ!」


 俺がアルシアに問いかけようとしたとき、【妖樹フィリー】が光り、半透明の人の上半身のようなものが生えてきた。痩せ細った女性のような体つきをしていて、体からは紫の煙が


「うお⁉なんだこれ⁉アルシアちゃん!お前何したの⁉」


 矢沢が驚いて剣を抜いた。しかし、アルシアは気にせずに【妖樹フィリー】に近づいて話しかける。


「ねぇあなた、何があったの?私に話してくれないかな?」


「ウゥ……ダテンシ……ノ……ウ…………エダ……キ……トル……ノロイ……トケル……」


「やっぱりそうだったのね。私が今助けてあげるから、少しだけ待っててね」


 アルシアがそう伝えると、木から生えていた体が木の中へ戻っていった。


「アルちゃん!今の何⁉アルちゃんの幼馴染⁉」


「えぇ?違うよー!今のは【妖樹フィリー】!この木の精霊だよ!」


 喋った木を見て樋口が動転しているのか、アルシアにトンチンカンな質問をした。アルシアは笑いながら説明をしてくれた。


「んっとね、木とか山とか川とか、そういう自然には精霊が住み着いているの。私は精霊さんたちを呼び出して話を聞くことが出来るんだ!」


(へぇ、アルシアはそんなスキルを持っていたのか。精霊とか、まだよく理解できてないけど……)

「つまり、精霊ってのに木が腐った原因を聞いたってこと?」


「うん!そうだよ!」


「しかし、呪いとは生き物が天使から受ける罰。木が呪われるなんて聞いたこともありませんわ。幸いフィリー様が対処方法を教えてくださったものの……」


「ま、その辺の原因はおいおい調べるとして、まずはこの木の枝を切るのが先だな。アルシア、こっちは任せた」


「東堂、アルシア1人じゃきついだろうし俺も残るよ。【回復ポーション】を大量に持ってんだろうし、必要なら斧とかも作れるしさ」


「ほう……確かにそうだな。じゃあ要はここだ。永田たちは谷口たちの方へ戻れ。俺たちは弓作りの続きを見に行くぞ」


「「「おーう」」」


 東堂の指示を聞いて、全員が移動する。残された俺の元にアルシアが近づいてくる。


「手伝ってくれてありがとね、カナメくん!一緒に頑張ろうね!」


「おう。それで、まずはどうすればいいんだ?」


「うん、どこの枝が呪われたのかここからじゃ分からないから、先に周りの邪魔な枝を落として行くつもりなんだ。要くん、鋸作れる?」


「お安い御用だよ。ちょっと待ってて……」


 そう言って俺は鉄と木を取り出し、鋸を作った。というか、ゲーム内で鋸も作れると言うことに俺は驚いていた。


「は、はい。これでいいかな?」


「うん!ありがと!」


 そう言ってアルシアは細くて邪魔な枝を切り始めた。低いところに生えている細い枝は触れても『呪い』の効果は発動しないようで、アルシアがどんどん切る枝を俺が回収していった。しかし、段々枝が高くなってきてアルシアの背では届かなくなってきたようだ。


「うーん……あれ以上高いところが届かないなぁ。カナメくん、あれ届く?」


「いや、俺身長はアルシアと変わらないし、むしろ手足の長さならアルシアの方が長いだろうし……お恥ずかしい」


「あーそっか……んじゃあカナメくん!肩車して!」


「え?肩車……ってうおぁ⁉」


 アルシアは俺の肩の上に飛び乗った。今度はちゃんと座っている。そのまま作業を再開したが、俺は別のことを考えるのに精一杯だった。


(別に脚フェチって訳じゃないけどこれはヤバイ……何か、何か別のことを……だめだ!どうしても意識しちゃう!)


「カナメくん?おーい、カナメくーん」


「ん?……あ、あぁ!ごめん!どうしたの?」


「どうしたってほら!枝が切れたから受け取って!」


「あぁそうか、ごめんごめん!今受け取るから……うゎ⁉」


 俺がアルシアから枝を受け取ろうと上を向いたとき、視界にアルシアの大きな胸が飛び込んできた。


(こっちもやばいな⁉上向かないようにしないと……)


「カーナーメーくーん!枝受け取ってってば!どうかしたの?」


「いや、なんでもな……ちょ!アルシア!覗き込まないで!姿勢が……うお⁉」


 ずっと枝を受け取らない俺を不審に思ったのか、アルシアは俺の顔を覗き込もうと体を前に倒した。しかし、そのせいで重心が前に傾き、俺は前に倒れ込みそうになった。


「わわっ⁉危ない!」


「ぐぇ⁉アルシア!首!首しまってる!」


 驚いたアルシアが脚で俺の首を締めた。俺は真っ白で程よく筋肉がついているのに柔らかいアルシアの脚の感触を感じる余裕などなく、必死の思いで目の前の【妖樹フィリー】に捕まった。『呪い』など気にしている場合ではない。


(あっぶねぇ……上にアルシアがいるのに転ぶところだった……ん?なんだあれ?なんか紫の煙を噴いてるな……あれが呪われてるっていう枝か?)

「アルシア!大丈夫?」


「うん!私は平気だよ!ごめんね、私が体を前に倒したせいで……」


「いや、気にしないで!それよりほら、あの枝見て!」


「ん?……あ!フィリーの言ってた枝だ!あれを切り取ればいいのかな?」


「そうだね。でもかなり高いから『呪い』のダメージ覚悟で登るしかないか……アルシア、俺が行ってくるよ」


「ううん、私が行ってくるよ。木を切るのは得意だからね!カナメくんは下から【回復ポーション】を渡してくれる?」


「あぁ、そういうことならお願いしようかな?」


俺は力仕事を女性にやらせることに罪悪感を感じていたが、木を切ることに関してはアルシアの方が得意だと思うので、大人しく下で待っていることにした。


少し待っていると、アルシアが目的の枝に到着したようだ。


「うわっ!この辺はほんとにひどいなぁ……早く切り落としちゃおっと!」


 アルシアはそう言って、時々俺から【回復ポーション】を受け取りながら呪われている枝を切り落とした。


「よし!これで治るはず!カナメくーん!枝を落とす……きゃあぁ!」


「アルシア!」


 枝を切った切り口から突然、ボールに蝙蝠の羽が生えたような生き物が飛び出してきた。アルシアは驚いて木から落ちてしまう。俺は急いでアルシアの下には入り込み、アルシアをキャッチすることに成功した。


「カナメくんナイスキャッチ!ありがとね!」


「あぁ、それよりあいつは?あれが妖樹を呪っていたのか?」


「あれは堕天使の使い魔だよ。あいつがフィリーを呪ったのに間違いなさそうだね」


「てことはあいつを殺せばいいんだな。アルシア!後衛は任した!」


「あぁ!そんなに近づいたら……」


 俺が使い魔に向かって走っていくと、アルシアが後ろから何か大きな声で叫んだ。俺が気にせずに剣を振り下ろそうとしたとき、使い魔は甲高い鳴き声を上げた。


(うわ⁉耳が痛ぇ……HPも少し減るのかよ……)


「カナメくん!1回下がって!」


 俺はアルシアに言われて一度退く。その間にアルシアが弓矢を放ち、使い魔の羽を撃ち抜いた。


「あいつ、たまにあのうるさい声で攻撃してくるの。だからこれ付けて!」


 そう言ってアルシアは俺に【耳栓】をくれた。俺がすぐに付けようとするとアルシアが手で制した。


「それね、周りの音とかギルドチャットとかが全く聞こえなくなるの。だから周りを警戒するのも心がけてね」


「え?それじゃあアルシアとの連携はどうすればいいんだ?」


「それは私達の絆でなんとかなるよ!前は頼んだよ!」


「絆ってそんな曖昧な……まぁいっか。後ろは任せたぞ」


 俺はそう言って【耳栓】をつけ、堕天使の使い魔へと走って行った。

 使い魔は空を飛んで逃げようとしたが、片方の羽をアルシアに撃ち抜かれているせいでうまく飛べないようだ。俺はもう片方の羽めがけて剣を振り下ろす。羽は根本から斬れて地面に落ちた。

 続けて、両羽が使えなくなった使い魔を斬ろうとしたその時、羽を無くして丸くなった使い魔の体から新しい羽が生え、使い魔が空高くへ飛んでいった。


(ちっ、逃げるのか……うぉ⁉攻撃してくんのかこいつ!)


 逃げるのかと思っていたが、空高く飛び上がった使い魔は急降下しながら、光弾を飛ばしてきた。俺は盾で受けながら、急降下してくる使い魔を刺そうとする。


 その時、使い魔の横から弓矢が刺さった。俺はアルシアの方を見て、軽く手を挙げる。アルシアは笑いながら手を振り返してくれた。何か言っていたようだが、耳栓のせいで声は聞こえない。

 俺は弓矢が刺さった使い魔に向かって剣を振り下ろす。使い魔のHPは残り4分の1程度だ。すると今度はピタリと動かずにこちらに光弾を打ってきた。心なしか、少しずつ体が膨らんできているような気もする。


(……ん?なんか膨らんできたな……こいつ爆発するんじゃ⁉)


 俺がそう思いながら光弾を受けていたとき、後ろから肩をポンポンと叩かれた。アルシアだ。耳栓を外せというジェスチャーをしているので俺は耳栓を外すと、アルシアが凄い勢いで話し始めた。


「カナメくんカナメくん!あいつHPが無くなりかけると爆発するの!爆発を防ぐにはあいつの心臓を一撃で止めなきゃいけないんだけど……」


「なるほど、りょーかい。心臓ってどこにあるの?」


「え?目と目の間から刺せば確実に心臓に届くけど……」


「よっしゃ。ちょっとやってくるわ」


「ま、待ってカナメくんが行くの⁉私が狙ったほうが……」


「こんな光弾が飛んでる中で弓矢を当てるのはきついでしょ。俺が近付いてやってくるから、ちょっと待ってて」


 俺はアルシアにそう伝えて、使い魔のもとへと走って行った。使い魔が光弾を放ってくるが、跳ね返して爆発するのも怖いので、ある程度躱しながら走っていく。


(ちっ、全部躱すのはやっぱ無理か。HPが半分以上減ったぞ……でもこれだけ近付ければ……うらぁ!)


俺は堕天使の使い魔の眉間めがけて剣を突き刺した。心臓にあたったかは分からないが、使い魔は紫色の煙を吐き出しながら潰れ、光となって消えた。


(っしゃあ!なんとか爆発せずに済んだか……でも『呪い』にかかっちゃったか……)


「カナメくん!早く回復しないと!『呪い』の効果が!」


(そうだ。早く回復しないと……ん?なんか背中に柔らかな感触が……)

「ア、アルシア?何を……?」


「何って、カナメくんの『呪い』を解かなきゃ、死んじゃうよ!……よし!これで治ったはず!」


アルシアは俺の背中に抱きついていた。俺は吹き飛びそうな理性を無理矢理保ち、アルシアに問いかける。


「で、でもそれじゃアルシアに『呪い』がかかるんじゃ……?」


「うん!でも私HP満タンだから気にしないで!」


「そっか、ありがとう……あれ?もう治ったんだよね?」


「いいから大人しくしてて!もう少しこのまま……」


アルシアがそう言って俺の背中に頰を当てる。その時、椛さんの怒声が聞こえてきた。


「アルシアー‼︎あんた何してんのよ⁉︎」


「あ、やっほーモミジちゃん!道作り終わった?」


「休憩しにきたらあんたたちがイチャついてたから注意しにきたのよ!さっさとやることやりなさい!」


「木の浄化なら終わったよ! それに私も『呪い』かかっちゃったから休憩ー!」


「終わったんなら東堂くんたちのところに行きなさいよ!佐藤くんも!あんたうちの生産職ならさっさと弓の作り方学んで来なさいよ!」


「わ、分かった!……あれ?俺の剣は……」


「はぁ?あんたの剣?……これのことかしら?でもボロボロの柄しかないわよ?」


「え?そんなことは……うわっ……これ俺の剣だ……」


俺は椛さんからボロボロの柄を受け取った。確かに俺の【メタルソード】の柄だ。多分『呪い』の効果を受けて壊れてしまったのだろう。


(しゃーねぇ。あとで作り直すか……あれ?アルシアは……)


俺が周りを見渡すと、アルシアは【妖樹フィリー】に話しかけていた。先程まで紫色をしていたフィリーは、透明感のある薄い緑色をしている。


「これで大丈夫!もう呪われた枝も処理出来たよ!」


「アァ……アリガトウ……」


「うん!どういたしまして!じゃあまたね!」


アルシアはフィリーに挨拶をして俺の元へ戻ってくる。俺たちは東堂たちのいる、弓職人の作業場へと向かった。


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