第1話
目を開けると、俺は1人で白い部屋にいた
(何だここ?ここでキャラメイキングをするのか?)
そう思っていると、女の人のような声が聞こえてきた。いや、頭の中に直接届いたような感じがした。天の声かな?
《名前の登録とキャラメイキングをして下さい》
(おぉう、頭の中に直接声が聞こえてるのはゾクゾクっとするな。しかも、目の前に名前の入力欄が出てきて、それをタッチして操作するのだ。本当にすごい技術だなぁ。
それより名前か。えぇと確か、何かあったときに対応できるように本名にしろっていってたっけ?んじゃ、『佐藤 要』と。次は顔か。顔をいじるのはちょっと恥ずかしいからそのままでいいかな)
確認ボタンを押すと、また天の声が届いた。
《では、動きのテストをします。赤いエリアまで軽く走って下さい》
天の声にも慣れてきたぞ。白い部屋の先に赤い四角い場所が出た。あそこまで走れってことかな?軽く走ってに到着すると、天の声が聞こえた。
《次のエリアまで全力で走って下さい》
(今度は全力か。だけど赤いエリアがさっきより遠いな。まぁ本気で走るか……遠いな。まだあるのか)
すると、目の端の方に小さく数字が見えている。走っていると数字が減っていて、今600Mを切った。エリアまでの距離だろうか?そう思っていると、すぐにエリアのポイントに到着した。目の端に意識をやると、数字が0になっていた。
(やっぱり距離か。しかし、全力疾走をしたのに全然疲れてない。ゲームの中だと、疲れないのか)
そう思っているとまた天の声が聞こえた。
《これで最後です。その場でバク宙をしてください》
(はぁ⁉バク宙なんてしたことないぞ⁉いや、ゲームの中だからできるのか?とりあえずやってみるか……うりゃ‼)
俺は戸惑いながらも、地面を強く蹴って体を後ろに反った。特別運動神経が良いわけではないが体が思い通りに動き、きれいな着地を決めた。
(……おぉ、出来た。いやー架空の世界ってなんでもできるんだなぁ)
《これでチュートリアルは終了です。チュートリアルクリア記念に【スキルガチャジュエル】を5つプレゼントいたします。お疲れ様でした》
やっとチュートリアルが終わった、と思ったら目の前が一瞬真っ暗になり、目の前が明るくなった時、俺は大きな広場のような場所にいた
[ダクニル地方 ザラマーナ 中央広場]
(ここが俺たちの始まりの街か。あまり大きな建物はないな。
いや、1つだけすごい大きい建物が遠くに見えるな。教会か?たしか、七大天使の1人、ゼラキエルの守護化にある地方なんだよな。だから死んでも、ゼラキエル様があそこの教会で復活させてくれるらしい。まぁ、設定とかはどうでもいいか)
俺は周りを見渡す。俺と同じように、キョロキョロしている人がたくさんいる。見慣れた顔の奴らもちょくちょくいるから、皆同い年の高校生で、8時のチャイムと同時にログインした人たちなのだろう。
(それよりも街の中央らしいこの広場は広いなぁ。そりゃ、他校も含めて、200人ちょっとがここから始めるんだから当然か。さて、あいつらと合流しなきゃな。メールを入れてみるか……)
俺は事前の操作説明に載っていたメール機能を使って、4人にメールを送る。どうやら、俺がちょうど4人の真ん中にいるようだ。ここで集合しようと提案し、俺は皆を待つ。
(しかし、本当にすごいなぁこの世界。建物も現実と違いがあるようには見えないし、風も吹いている。こんな世界にモンスターなんかいるのか?
……そうだ、チュートリアル記念のスキルガチャとやらを引こう。というか、スキルってなんだ?使える魔法が増えるってことか?まぁ何かしら出来ることが増えることには違いない)
メニューを開くと、『ガチャ』という項目があるのでそこをタッチする。
ジュエル1個で1回引けるそうだ。あと、ジュエルを10個貯めて、10連ガチャを引くと、1回おまけがついてくるようだ。今すぐ引くか、あと5つ貯めるか迷ったが、今引くことにした。このガチャで出たスキルで俺の職業を決めればいいと思ったからだ。
ガチャガチャ ポンッ!
目の前に映し出されたガチャガチャのマシーンを動かすと、本物の赤いカプセルが出てきた。中には紙のようなものが入っている。
(これがスキルか。えーと、記念すべき1つ目は……)
【採取】・・・薬草や鉱石の採取が出来る。
(非戦闘用のスキルもあるのか。だけど1発目は戦うためのスキルが出てほしかったな。まぁいいや。あと4回あるんだ。良いのでろよー)
ガチャガチャ ポンッ!
【強肩】・・・ものを遠くに投げられる。
(強肩?ものを投げるのがうまくなるのか?もういっちょ!)
ガチャガチャ ポンッ!
【水魔法(小)】・・・水魔法を少し使える。
(お、魔法だ!早速使ってみよう……コップ1杯分くらいの水が出た。小ってついてるし、育てればもっと出るのかな?いや、このスキルとは別で【水魔法(中)】があるかもしれない……次だ次!)
ガチャガチャ ポンッ!
【生産速度上昇(中)】・・・生産の速度が上がる。
(初めての銀色だ。生産速度上昇ってことはものを作るのが早くなるってことだよな?俺、このままだと生産職になってしまう。生産職ってどんな武器を使うんだろう?てか、戦うのか?)
そんなことを考えていると、中村たちがきた。1人だけ顔をいじってる奴がいるが、あれが樋口だろう。他の奴らは変わらないようだ。
「よう、樋口。随分イケメンになったな」
「ういっす。俺はもともとイケメンだろ?あ、東堂の方がまだイケメンかな?」
「くだらねぇこと言ってんじゃねぇぞ樋口」
「またまたぁ、謙遜しちゃってー」
「そんなことより要、チュートリアル記念のガチャ引いた?」
いつも通りの樋口と東堂のやり取りを見ていると中村にそう聞かれた。
「今ちょうど引いてたとこだよ。4回引いたから、あと1回引けるよ」
「ま、どうせ要のことだからRスキルばっかだろ?俺はVR1つにSR2つ出したけどな!」
「R?VR?」
「お前、ちゃんとヘルプ読んでねぇのか?メニューの『天使の教え』ってところに色々書いてあるぞ」
多分矢沢にバカにされたのだが、何を言われたのかよく分からない。そんな俺の様子を見かねた東堂に言われて、メニューを開き、そのまま『天使の教え』をタッチする。
『スキルにはレア度が3段階存在します。下から順に赤色のR、銀色のVR、金色のSRが存在します。また、スキルは、一度に8つまでセットできますが、セットしていないスキルはアイテムと同じ扱いとなり、他人への譲渡が可能になります』
「読んだか?んで、どうだ?」
「読んだけど、俺だってVR出たぞ。1つだけ」
「え⁉要、VR出たの?良かったじゃーん。今までの不運を取り返すような幸運が来て」
「こんなんが今までの埋め合わせでたまるか!」
茶化してきた樋口に、軽く怒った素振りを見せる。中村が俺に問いかけてくる。
「それで、なんてスキルが出たの?」
「ん、あぁ、なんか【生産速度上昇(中)】だってよ。結局今のとこ1個も攻撃スキルが出てないんだよ。あ、【水魔法(小)】は出たけど、水がコップ1杯分くらいしか出ないから使えないんだよ」
「え、お前【水魔法(小)】のか?だったら俺にくれないか?代わりのスキル上げるからさ」
「ん?良いけど、何に使うんだ?」
俺は東堂に問いかける。こんな小量の水しか出ないスキルがなんの役に立つのか分からないからだ。
「俺が出したSRのスキルで【属性付与】ってのがあるんだけど、【水魔法(小)】があれば、俺の弓矢に水属性が付与されるんだよ」
(なるほど、俺が持ってるよりも、必要としている人に使ってもらった方がいいだろう。てか、東堂は弓を使うのか)
「おう、いいけど、お前は何のスキルをくれるんだ?」
「あぁ、VRの【泥棒】ってスキルをやるよ」
俺は顔をしかめる。東堂のことは信用しているが、ハズレスキルを押し付けられているような気がする。一応、東堂に内容を確認する。
「【泥棒】ってどんなスキルなんだ?」
「あぁ、このスキルは、敵を直接攻撃で倒したときに、普通のドロップアイテムとは別に、なんかアイテムをドロップするってスキルなんだよ。だから、弓を使う俺とか、魔法使いの中村とかが持ってても意味がないんだよ」
(なんだ、悪いスキルじゃないのか。ならまぁいいか。だったら俺は剣とかのほうがいいのかな?他の人とはかぶらないほうがいいな。他の奴らはなんの武器なんだろう?)
「いいよ。交換しよう。それで、中村と東堂は分かったけど、矢沢と樋口はなんの武器を使うんだ?」
俺は矢沢と樋口に使う武器を聞いてみる。すると矢沢が、どこで手に入れたのか、大きな剣を取り出して、話し始めた。
「俺はVRの【大剣術(中)】が出たから大剣をつかうぜ!ちなみに1つ目のSRの【連続詠唱】のスキルは中村に渡して、代わりに【跳躍】をもらったぞ!」
「俺は剣士だよ。元々剣道をやってたし、たまたま【居合い切り】のスキルも出たからねぇ」
(そうか、なら俺は片手剣とかにしようかな?ヒーラーがいないけど、治癒魔法が出た人がやればいいだろう)
「んで、要はなんの武器にするの?」
「そうだな、とりあえずの間は片手剣でも使おうかな。もし何かいいスキルがでたら、そっちの武器を使えばいいだろうし。あと、せっかく【生産速度上昇(中)】が出たし、生産職としても働こうかな」
「そうか。なら、スターターパックは【鍛冶セット】を選びなよ。スキル【鍛冶】と【細工師】、あとはアイテムの【加工ハンマー】がもらえるよ」
「スターターパック?なんだそれ?」
またもや聞いたことのない単語が出てきて、俺は首をかしげる。俺の様子をみた中村が、説明をしてくれる。
「ゲームを始めたときに何か1つもらえるんだ。その中身は職業ごとに違ってて、弓セットなら弓、魔法セットなら杖、みたいにその職業にあったスキルや装備がもらえるんだよ」
(なるほど、そんなものがもらえるのか。他にも【魔法セット】や【弓セット】とか色々あるな。……【商人セット】なんてのもあるのか。誰が使うんだこれ……お、あった、【鍛冶セット】、これだな)
タッチすると、【鍛冶】と【細工師】、それと【加工ハンマー】を手に入れた。この【加工ハンマー】は鉄製品から木工品までこれ1本でできるそうだ。
ちなみに、武器や防具はレアリティの分類がスキルよりも少し細かいらしい。また、スキルと違い、品質があり、同じVR装備でも、VR+とVR-では、攻撃力や耐久力に差が出るらしい。これはレアリティの高いものほど大きな差が出るんだそうだ。
「んじゃ早く、要のスキルガチャの最後の1回引いてよー。ま、どうせRなんだろうけど」
「うっせーなぁ。見てろよ樋口、俺はSR引き当ててやるからな」
「SRもピンキリだし、SRが出たとしても、ひどいスキルかもな!」
矢沢の言葉を聞き流しながら、俺は【スキルガチャジュエル】を使った。
ガチャガチャ ポンッ!
(ん?なんだこれ?)
出てきたカプセルの色は虹色。中から出てきたスキルの名前は【チャミュエル】と書かれている。ただ、今までのスキルみたいに能力が書かれていない。バグか?
「そんで、なんていうRスキルだった?」
「おいおい、樋口。要はSRを出すって宣言したんだ。Rスキルと決めつけるのは良くないだろぉ?」
「いや、なんか、虹色のカプセルから【チャミュエル】ってスキルが出たんだけど……」
俺のハズレを期待していた樋口と矢沢が『何言ってんだこいつ』みたいな目で見てきたので、みんなにスキルを見せてやった。
確かにスキルは虹色で、レアリティはURとなっていた。樋口と矢沢は唖然としている。東堂は『天使の教え』でURスキルについて調べているようだ。そんな中、中村が何か思い出したように話を始めた。
「確か、チャミュエルってのは天使の名前だったような気がする。何の天使かは忘れたけど」
「え⁉てことは、めちゃくちゃすごいスキルなんじゃないの?要、ほんとに運使い果たしたんじゃない?」
「まぁ、そのスキルのことは黙っとけよ。マジで超レアスキルかもしれないから、このことがばれたら目立つだろうし、良からぬことを考えてる奴らの標的になるかもしれないからな。あと、一応運営に報告メール入れといたぞ」
「おう、ありがとう」
(そうか、東堂の言うとおり、もしかしたら超レアスキルの可能性もあるのか。でも、スキルの能力が書かれてないから使いようがないんだよなぁ)
「んで要、そのーチャミ、チャム、チャ……」
「チャミュエルな」
「そう!それの能力って何なんだ?」
矢沢がチャミュエルって言うのを諦めた。確かに言いづらいけどな。俺は、【チャミュエル】には能力が書かれていないことを伝えた。
まぁそのうち分かるだろ。
とりあえず俺たちは、俺の剣を買いに[ザラマーナ 商業区]へ向かった。俺の手持ちのお金は3000Gしかなかったので、2500Gの【安物の剣】しか買えなかったが、まぁそのうち自分で作ればいいだろ。
その後、レベル上げがてら、武器の扱いの練習をしようと、近くの[へーリの森]へ向かうことにした。
その途中で、クラスメイトの菅原孝典にあった。菅原は明るく、クラスのリーダー的存在でみんなを引っ張っていた。
ただ、菅原は成績もあまり良くなく、少し自分本位なやつだったから、いつでもみんなあいつの言いなりって訳では無かったけど。俺は去年クラスが同じだったから面識があるけど、中村たちは知らないかな?
「お、要!どこ行くんだ?」
「よう、菅原。今から[へーリの森]に武器を使う練習をしにいこうと思ってな」
「そうか、頑張れよ!あぁそうだ要!俺、堤下のG組の奴らを集めて、ギルドを作るんだよ。ただ、ギルドには定員があるから、面接をするんだよ。明日やるからお前らも来いよな!」
「ギルド?そんなもんあるのか」
「んだよ、知らねぇのかよ!ま、いいや。明日の午前11時に[ザラマーナ 中央広場]な。遅れんなよ!」
そう言って、菅原は去っていった。ギルドというものがよく分からないが、仲間が増えるのはいいことだろう。
「ギルドか、大きいギルドに入れるに越したことはないよな!」
「やっぱり、大きいギルドに入れるのは大事だよね。努力して、幹部とかになれば自分のやりたいようにギルド運営とか出来て楽しいよ」
よくゲームをやる矢沢と中村はギルドに入ることは賛成のようだ。
「ちぇー、俺がギルドを作って、1番にラスボスを倒してやろうと思ってたのになぁ」
「お前の作ったギルドなんか誰も入らねぇよ」
樋口は自分でギルドを作るという野望があったらしいが、東堂に一刀両断されてた。
「それより、面接って言ってたけど、何を聞かれるんだろう?それに定員ってどれくらいなんだろう?」
「定員はギルドレベルを上げれば増えるが、一番最初は30人らしい。そこからギルドレベルが1上がるにつき10人ずつ定員が増えるらしいぞ」
「面接は、面接なんだから自己アピールとか、志望動機とかじゃないかな?」
なるほど。うちのクラスは43人だから、13人が最初に落ちるのか。んで、面接は自分のスキルとか、職業とか聞かれるんだろうけど……
「な、なぁお前らは何のスキルをゲットしたんだ?」
不安になった俺は中村に声をかける。中村は『装備一覧』を確認しながらスキルを読み上げていった。
「俺は【火魔法(小)】、【風魔法(中)】、純からもらった、【雷魔法(小)】の、3つの属性魔法をゲットしたよ。
あとの2つは、健一と交換した、同じ魔法を連続で使える【連続詠唱】と、詠唱の量を減らせる【詠唱短縮】だよ。あと、スターターパックからは【普通の杖】と【普通のローブ】、【MP量増加(小)】が出たってくらいかな」
(ギルドに魔法使いはいっぱいいても意味があるし、中村は採用されるだろうな)
MPというのは、魔法や、スキルを使う時に消費するものだ。ただ、【強肩】や【鍛冶】のように、MPを消費しないで使えるスキルもある。MPは無くなっても、ペナルティは無いらしい。
これはゲージで示されていて、同じように|STとHPがあるが、STはスタミナのことで早く走ったり、【跳躍】を使ったときに消費する。無くなると約10秒間体が動かなくなってしまう。
HPは体力で、無くなると死亡で、教会から再復活することになる。また、MPと違い、HPは自動で回復しない。しっかりと回復する必要があるのだ。
「俺は【大剣術(中)】、HPが自動で回復する【自動回復】、中村と交換した、高く飛べる【跳躍】、【防御力増加(中)】だぜ!。
ただ、ラスト1つがほんとにやべぇ。SRのスキル【獣人化】だ!。これは一定時間、自分の全ステータスが倍近くになる能力なんだとよ!ま、その代わりと行ったらあれだが、スターターパックから【大剣術(小)】がでちゃったけどなぁ……あ、あと【普通の大剣】な」
(【獣人化】ってすごそうだなぁ。こいつも受かるだろ)
後で調べて分かったことだが、ステータスにはSTR、VIT、INT、MDEF、AGI、MND、LUK、DEXの8つがある。この中のMNDというのは、敵からのデバフの効果を軽減、無効化するというもので、数値はレベルや武器、防具によって左右されるとのことだ。
「俺はねぇ、【居合い切り】と中村に交換してもらった、斬撃を衝撃波として飛ばせる【ソードスラッシュ】、遠くにいる敵を見つけられる【索敵】、考える速度が上がる【思考速度上昇(小)】……そういやこれ何に使うんだろうねぇ。んで、【武器耐久度増加(中)】だよー。スターターパックからは【刀術(小)】と【普通の刀】がでたよー」
(こいつは剣道が出来るからなぁ。採用されるだろ。【索敵】ってのも大事だしな)
武器や防具には耐久度があり、これが無くなると、破損状態となり、攻撃力、防御力、その武具の能力を失う。
破損した武具は修復することでまた使うことができる。『耐久度があるゲームってのは珍しいよな』とは、中村の言葉だ。
「俺は、普通だよ。お前がくれた【水魔法(小)】と【属性付与】の他に、移動速度が上がる【移動速度増加(中)】、気配を消して移動ができる【隠密】、狼を召喚出来る【召喚術(狼】】だった。スターターパックは弓のやつにしたから【弓術】と【普通の弓】だ」
(これが普通?こいつは狼を召喚できるし、水属性の弓矢打てるし、隠密行動できるし、こいつも大丈夫だろう……やばい、俺だけ落ちるかもしれない……)
「要、お前落ちるかもって思ってるんだろ?」
俺の考えを読んだ矢沢がニヤニヤしている。
「心配ねぇよ!どんなゲームであっても、生産職ってのは必要な職業だ!あまり戦えなくても、面接に落ちることはねぇだろ!」
「まぁ、保険のためにレベルも上げとくべきだよ。レベルが高ければ、十分戦力だからね」
矢沢と中村がそう言う。確かに、普通は誰もやりたがらない生産職は貴重な職業だろうから、需要は尽きないはずだ。
(でも、やっぱレベルも高い方がいいよな?よし、面接のことは一旦忘れて、[へーリの森]で武器の練習だ!)
俺たちは[へーリの森]へと足を踏み入れた。




