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第12話

水曜日に11.5話を投稿しました。本編との順番は関係ありませんが、よろしければそちらもどうぞ。

「あれー?要くんたちじゃん!やっほー!」


「あれ?由依さん?」


 男たちの後ろから顔を出したのは由依さんだった。後ろには細野さんもいる。


「部長、知り合いですか?」


「うん!この人たちは私とのぞみちゃんが取材させてもらってた『ガーディアン・デ・ゲブラー』の皆さんだよ!」


「なっ⁉あのゲブラーの方たちですか⁉」


 1番前にいた眼鏡の男が驚いている。後ろの方もざわついているようだ。男は俺たちの方を向いて頭を下げた。


「どうも初めまして。梅崎新聞部の越山宏光(こしやまひろみつ)と申します」


(ん?梅崎は女子高のはずじゃないのか?)

「あの、どこの学校の生徒ですか?」


 俺が聞くと越山くんの代わりに由依さんが応えてくれた。


「うちの生徒じゃないわよ。彼らは真城高校の生徒だよ。新聞を書きたいって言うからギルドを作ったの!」


「あ、『梅崎新聞部』ってギルド名か」


「それよりも、何しにきた?って聞くまでもないか」


「はい。数日前にピラミッドを見つけたので準備をしてから中の調査をしようと思いまして」


「あーそうだ!要くんたちどこ行ってたの⁉みんながエリアボス倒してからすぐに来たのに何処にもいないんだもん!で、どこで何してたの⁉」


 由依さんが詰め寄ってきた。俺が後ろに下がると砂が入っていた木の宝箱を倒してしまった。蓋が空いて砂が溢れ出る


「あーあー、やっちゃったよ。ま、どうせ砂だし適当に集めてっと……」


「ん?ちょっといいですか?」


 俺が砂をかき集めていると越山くんが近づいてきて、砂を少し手にとった。疑問に思った東堂が問いかける。


「あー、それはここのボスを倒したときに手に入れた宝箱から出てきたんだが……何か分かるのか?」


「ふむ……これは多分【防腐剤】ですね。この街は食品が腐りやすいのでこれは高く売れますよ」


「まじで⁉どれくらいの値段かとか分かる⁉」


 お金になるとわかった瞬間樋口の目の色が変わった。俺も人のことを言えないが。越山くんは【小瓶】を取り出し、その中に砂を詰めた。


「多分相場で売ればこの瓶1つだけで2500Gは下りませんよ。この箱1つの【防腐剤】を全部詰めれば5万、いや、10万は行くかも……」



 そう聞いた途端に樋口と矢沢が越山くんと木箱の間に体を滑らせ、木箱を守り始めた。


「こら!馬鹿みたいに見られるから辞めなさい!」


「だめだ!これは俺らが取ったんだ!誰にも渡さないぞ!」


「誰も取らないわよ。取られたら取られたで犯人を完膚無きまでに叩きのめして、倍の金額をせしめればいいじゃない?」


「おお!それもそうだな!」


 永田さんが2人を抑えているようにみえるが言っていることがエグい。やっぱり脳筋のようだ。


「何よ?」


「いいえ?何でも?」


 永田さんに睨まれたので俺は目を逸らした。越山くんは笑いながら、


「流石に取りませんよ。ただ、新聞部なのでどんな敵が居たかとか教えて下さいね?」


 と言った。仕事熱心なことだ。

 中村と東堂が新聞部の相手をしている間に俺たちは【防腐剤】を【小瓶】や即席で作った【麻袋】に詰めて、新聞部と一緒にピラミッドを出た。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺たちは新聞部と一緒にギルド支部に向かった。宿でもいいのだが、宿には氷魔法がエンチャントされていないため暑いのだ。


 何でもエンチャントのonとoffの切り替えが出来ないので、夜は冷え込むベルリナの宿に氷魔法はいらないとのこと。


 ギルド支部にはアイテムを買い取りをおこなっていて、そこなら適正な価格での取引ができるのだ。

 俺たちが【防腐剤】を持ってギルドの受付に持っていこうとすると、突然プレイヤーに話しかけられた。


「へい!そこのお嬢さんら、その砂俺に売らない?」


(なんだ?新手のナンパか?)


 俺たちが振り返ると男の人が立って手招きしている。俺たちが怪しんでいると優香さんが声を上げた。


「あれ?功太郎くん?」


「よ、西田!やっぱりモミちゃんと高崎も一緒だな!」


「モミちゃん言うな!」


 どうやら3人の知り合いのようだ。俺が優香さんに問いかける。


「知り合い?」


「うん、去年同じクラスだったの。でも今年は違うクラスのはず……もしかして!」


「そ、はるばる[ウランダ大河]渡ってきたってわけ。今は成宮と『セイコー商会』ってギルド作って商売やってんだ」


「へぇ!美保ちゃんも来てるの?」


「いや、あいつはまだ他のメンバーとヘイムガナ地方にいるよ。僕はギルドホームを買うために出稼ぎよ」


「ちょっと待って⁉あなたヘイムガナから来たの⁉私新聞部の千田由依!ちょっとお話を……」


「待て待て待て、ごちゃごちゃしてきたから1回席をとって話を1個ずつ纏めよう」


 優香さんたちと友人さんが盛り上がっているところに由依さんが割り込んでわちゃわちゃしている。見かねた東堂が由依さんの首根っこを捕まえてそう切り出した。



 俺たちは席をとって話を1つずつまとめることにした。ちなみに、新聞部は由依さんとのぞみさんだけ残って他はみんな帰ったようだ。


「さて、僕の自己紹介から。僕は谷口功太郎!『セイコー商会』のリーダーをやってる者だ。よろしく!」


「『ガーディアン・デ・ゲブラー』のリーダーの樋口純、とゆかいな仲間たち!」


 樋口が適当に自己紹介をする。ツッコむのも面倒なので俺たちは話を進めた。


「まぁとりあえずそれでいいだろう。それで、これを売れって話だったか?」


「そうそう、それ【防腐剤】でしょ?相場より高く買うよ?」


「え⁉何で分かるんだ⁉」


 俺は声をあげて驚いた。何故この人が麻袋の中身を知っているのか。俺が不審がっていると、谷口くんは笑いながら応えた。


「あぁ、そんな警戒しないで。その荒い麻袋から砂が漏れてたから、それを見ただけだよ」


「あぁなるほど……って、作りが甘くて悪かったな」

(そんな見ただけで【防腐剤】だなんてわかるのか?……いや、越山くんも分かってたっけ?)


「そんでそんで?相場だとこれ瓶1つで2500Gなんでしょ?いくらで買ってくれんの?」


 樋口がお金の話を持ち出した。相変わらず抜け目のないやつだ。ため息をついた永田さんが樋口に悪態をついた。


「はぁ……お金の話になると元気になってバッカじゃないの?」


「なんだと!モミちゃんだってさっきからそわそわしてるくせに!」


「してないわよ!あと、モミちゃんって言うな!」


「……永田、さっきからキョロキョロそわそわしてる」


「べ、別にあれは周囲に変な奴がいないか警戒してただけだし!」


 高崎さんに指摘されて、永田さんは苦しい言い訳をした。それを見ていた谷口くんが手を打って、何か閃いたように言葉を口にした。


「そうか!モミちゃんは久しぶりに僕に会えたから嬉しくてそわそわしてたんだね!」


 と言い放った。その瞬間、谷口くんが視界から消えた。永田さんの【発勁】で吹き飛ばされたのだ。


「調子に乗るんじゃないわよ!このロリコン!」


「椛ちゃん、それは美保ちゃんに失礼だと思うんだけど……」


 永田さんを止めに入った優香さんがそう呟いた。多分成宮美保(なりみやみほ)さんはロリなのだろう。

 俺が驚いたのは、矢沢に手を借り立ち上がった谷口くんのHPは4分の1も減ってなかったのだ。


(レベル52の樋口でも半分は減るのにあれしか減ってないのか⁉いや、そもそも1人で大河を渡ってきたってことはかなりの実力者なんじゃ……)


 高崎さんが回復魔法をかけると、谷口くんは椅子に座り、話の続きを始めた。


「ええと、【防腐剤】の値段だったよね?それなら瓶1つあたり5000Gで買い取るよ!」


 谷口くんは相場の倍の金額を出してきた。東堂はそれを怪しみ、理由を聞いた。


「おい、相場より高いがなんでそこまでして【防腐剤】が欲しいんだ?」


「あー、やっぱ疑われるかぁ……実はヘイムガナの第2の街の[ドルーナ]には[ウェルミナ牧場]ってのがあるんだけど、そこの牛乳がまじで美味いのよ!でもすぐに腐っちゃうからあまり流通してなくて」


「あぁ、なんとなく分かったわ。それを売って金になるから儲かるって話ね」


「ご名答!さっすがモミちゃん!」


「だからモミちゃん言うな!」


(あー……なんか樋口に近いものを感じるぞ……)

「でもさ、俺ら多分【小瓶】に全部詰めたら300個分くらいあるけど、全部買うのか?」


「ふっ、うちの商会を舐めるなよ!実は今僕の手持ちはこんだけあるのだ!」


 そう言って谷口くんはVサインを出した。


「はぁ?20万?」


「甘いよモミちゃん。その10倍さ」


「だからモミちゃんって……て、200万⁉」


 俺は驚愕した。何人かで集めたとはいえ、この数週間で200万も貯める奴がいるなんて考えられなかった。


「……功太郎は発想の天才。美保は取引の天才」


「商売をやらせたら成宮と僕なら無敵。まさに『成功(セイコー)商会』だな!」


(あ、セイコーの成は成宮さんの成、功は谷口功太郎の功ってことか!)


「あんた、な、何でそんなに大金稼げるのよ⁉」


「黙れモミちゃん……よし、俺たちも【防腐剤】を使いたいからな、少し残して全部売ろう。また【防腐剤】を取りに行くだろうが、それも買い取ってもらえるか?」


「あんたにも【発勁】打ち込むわよ!」


 東堂は声を荒げている永田さんを無視して話を進めた。


「ん?まだ【防腐剤】を取りにいくんか?」


「【防腐剤】が取れたダンジョンで【オレンジのチェストプレート】ってのをゲットしたんだが、どうやら他の部位があって始めて効果があるようでな……」


「はー、なるほど……なら全部売っちゃった方が得だぞ?今からそこの新聞部の口塞ぐけど、どっかから情報が漏れて【防腐剤】が大量に流通したらこっちもそんな高値で買えなくなるし」


「それ言っちゃったら、功太郎くん損するんじゃないの?」


 優香さんがそう言った。確かに、美味しい牛乳が取れる牧場の利益を独占してから【防腐剤】の流通量を増やせば、安く買った【防腐剤】で大量の利益が得られるはずだ。しかし、谷口くんは声を落として、


「ここだけの話、【防腐剤】はまだ世間には出回ってないのよ。だからここで独占的に商売が出来れば、うちも大儲けなんだよー。今後被ったオレンジ色の装備も買い取るし、どう?」


 と言った。牛乳の利益があまり得られないのか、はたまた【防腐剤】にそれだけの価値を見出しているのかは分からないが、彼のことだから何か策があるのだろう。俺たちにもメリットしかないので、東堂が快く受け入れた。


「よし、全部売ろう。今後ともよろしく頼む」


「もちろん!こちらこそよろし……」


「ちょっと待ちなさい!私たちは新聞部よ!美味しい情報を独占なんかさせないんだから!」


 東堂と谷口くんが握手をしようとしたときに由依さんが立ち上がり声を上げた。どうやら、情報をバラす気満々のようだ。


「そうか、なら俺らがソーマ地方に言った話と、谷口くんがヘイムガナからきた話は出来ないな。残念だ」


 東堂は由依さんの口を他地方の情報で塞ぐことにしたようだ。由依さんの心が揺らいでいる。すぐに谷口くんは東堂の意思を読み取った。


「呼び捨てでいいよ。ええと……」


「東堂だ」


「あぁ東堂ね。さて、折角僕が[ウランダ大河]で遭遇した巨大な亀の話とかあったんだけどなぁ。聞きたくないようだし、場所変えよっか?」


「そうだな。俺らも[ソーマ地方]限定イベントに参加した話があったんだが残念だ。よし、俺らが泊まってる宿で取引を行うことにしよう」


 谷口と東堂は示し合わせたかのように席を立った。俺たちも続いて席を立つ。


「ああぁ、待ってぇ!」


 由依さんが近くにいた中村にしがみついた。それを見た東堂らニヤリとして振り返った。


「お?黙ってる気になったか?」


「ちょっと!元々この話は公開する約束だったでしょ!話が違うじゃない!」


「あ?お前らの持ってきた情報と交換っつったはずだろ?いいもん持ってきたのか?」


 東堂が腕を組んで由依さんを睨みつける。由依さんは少したじろぎながらも、腰に両手を当て胸を張って東堂の問いかけに答えた。まだ何か考えがあるようだ。


「あるわよ!とっておきの情報が!実は……」


「要らん」


「何で⁉」


 話を聞く前に東堂が一蹴する。声が裏返り、目を丸くして驚いてる由依さんを見ると、どれだけ自身があったのかが伺える。


「だってその情報、どうせそのうち新聞に載るだろ?お前らは情報の独占なんかしないんだもんなぁ?」


(なるほど。確かに新聞部が持ってる情報は由依さんの性格からして全て公開するだろう。そうすると数週間前の交渉は成立しないというわけか)

「東堂、お前あの時ここまで考えていたのか。すげぇな」


「ま、あの時はそんな考えてなくて、さっきふと思いついたんだけどな」


 俺が東堂を褒めると、東堂はタネ明かしをしてくれた。それを聞いた由依さんが唸っている。


「ううぅ……私たちは情報を公開する新聞部なのに……のぞみちゃーん、助けて〜!」


「えぇ!あわわ、ええと……い、いくら東堂さんのお願いでも情報を公開しない訳には行きません!私たちは新聞部です!」


 のぞみさんが力強く言い切った。交渉成立を確信していた東堂の顔が強張った。流石の東堂もこれ以上交渉出来るカードが残っていないようだ。


「ふむ……どうしたものか……」


「よーし!ここはゲブラーのリーダーの俺に任せなさーい!」


 樋口が自信げにのぞみさんに近づいた。のぞみさんは少したじろいだが、樋口が耳元で何かを囁くと、のぞみさんは目を大きく見開き由依さんに詰め寄った。


「由依ちゃん!他地方に行く方法を聞こう!」


「えぇえ?の、のぞみちゃん?」


「それで、【防腐剤】のことは絶対に黙ってよう!ね?」


 急なのぞみさんの代わりように度肝を抜かれて由依さんが慌てている。急な掌返しに驚いた俺は樋口に近づいていった。


「おい樋口。お前、のぞみさんに何言ったんだ?」


「んー?もし黙っててくれたら東堂と1日デートする権利あげるって」


「おい、勝手に人の名前を……まぁ今回は交渉が成立しそうだから良しとするか」


 樋口がドヤ顔で東堂の方を向いているが、東堂は無視をしている。

 結局、交渉は新聞部が折れ、ピラミッドの存在を黙っていることで話がついたようだ。


「あーもう!わかったわよ!黙ってるから他地方の情報ちょうだい!」


「よし、いいだろう。まずは……」


 東堂たちが取材を受けている間に、俺たちは砂を【小瓶】に詰めながら谷口に話を聞いていた。


「谷口、200万なんて大金どうやって稼いだんだ?」


「んー?簡単よ。長橋工業高校の奴らが『長橋工業』ってギルドで武器を作って販売してるのは知ってるだろ?その武器は違うみたいだけど」


「あぁ、聞いたことはあるよ。よくこれが長橋工業の奴らが作ったものじゃないって分かるな」


「もし『長橋工業』が佐藤たちに武器を渡してたら、君たちが勝ったときに大きく宣伝するはずじゃん?あの武器はうちで作ったぞーって」


「でもそれが無かったから俺たちの武器は違うと。すごい。そこまで見てるんだね」


 中村が感心しているが俺には引っかかることがあったので、隣にいた矢沢に問いかけた。


「なぁ、『ダクニル戦争』って俺らが菅原たちと戦ったときのことか?」


「うん?知らね」


(聞く相手を間違えた……)


 俺がそう思っていると永田さんが小さくため息をつきながら教えてくれた。


「その時のことよ。掲示板でよく話題になってるのに、あんたたちなんも知らないの?」


「掲示板?」


「はぁ?それも知らないの?ったく、これだから馬鹿は……」


「まぁまぁモミちゃん、それでその『長橋工業』だけど、武器を作る素材ってどうしてるか知ってる?」


 永田さんに睨まれながら、谷口が続きを話し始めた。といってももう話の根幹に近く、みんなが察しているのだが。口を開いたのは優香さんだ。


「功太郎くん、もしかして……」


「そう!ゲーム開始2日目からずっと僕たちは『長橋工業』に鉄や木を売ってるんだよ!しかも、ヘイムガナ地方と隣のスプンタカトル地方と両方でね!」


 谷口はそう言うと高笑いをして手元に200万Gを出した。すごい額だが、俺たちがこの半分以上を貰うと思うと、体が震えてきた。


「そういえば、あんたギルドホーム買うとか言ってたわよね?200万もあれば十分なんじゃないの?」


 永田さんが問いかけた。谷口はお金をしまい誰も予想していなかったことを口にした。


「足りないよ。街をまるごと買うんだから」


「「「はぁ⁉」」」


「流石に今すぐは無理だけどね。ここのエリアボスを倒すと、ダクニル地方とヘイムガナ地方が1つになるじゃん?そこの住宅区を全部買って一部を賃貸みたいな感じにしようかと思ってるんだ。多分3000万くらい?必要じゃない?」


 俺は開いた口が塞がらなかったが、同時にこの男ならやってのけるんじゃないかという期待があった。各地方で高校生が切磋琢磨している中、ひたすらお金を集めているプレイヤーがいるとは神楽坂涼介も思わなかったのではないだろうか。


 そんな話をしていると、ようやく【防腐剤】が入っていた箱が空になった。東堂の方も終わったようだ。


「お、終わった?じゃあ僕はこれ全部持ってヘイムガナに帰るよ。はい東堂、【小瓶】304個分でちょうど152万Gだな」


「おう……さて、この大金を誰が管理するかだが……」


「え?東堂が管理すんじゃねぇのか?」


「俺もやることが多いからな。使えねぇギルドリーダーの代わりに東奔西走しなきゃいけないからな」


 矢沢の質問に答えながら、東堂は俺たち全員を見回し、優香さんに近づいた。優香さんはきょとんとしている。


「西田、お前にお金の管理を任せてもいいか?」


「え?私?」


「いや、無理そうならそれでもいいんだけどどうする?」


「ううん、お金の管理をするのはいいけど、なんで私なのかなぁって。中村くんとかの方が向いてそうじゃん?」


「あぁ、中村だとお金が必要なときに偏頭痛で休むとまずいからな。前衛4人は論外な。残り3人は……」


「ちょっと待てぃ!俺たちが論外ってどういうことだ!あ!?」


 樋口が東堂に食い下がった。どうやら論外と言われたのが気に食わなかったようだ。東堂は呆れたように口を開いた。


「樋口……お前自分がお金の管理出来ると思ってんのか?」


「ったりめえよぉ!俺はギルドのリーダーだぞー!」


「お前、中3の学年末の数学何点だっけ?」


「ゔっ!……べ、別に関係ねぇだろ!ちょっと悪かっただけだし!平均点だって割と低かったし……」


「ちょっとじゃねぇよ!2()4()()は!なんだよ!矢沢の半分、要の四分の一じゃねぇか!」


「ぎぇあぁぁ!やめろぉ‼」


 樋口は耳を塞いでその場にしゃがみ込んだ。しかし、俺はともかく、引き合いに出された矢沢はたまったもんじゃないだろう。東堂は気にせず話を続ける。


「とまぁ、同じ理由で矢沢もだめだ」


「ちょっと!自慢じゃないけど私数学はできる方よ。なんで私まで論外なのかしら?」


 永田さんも自分が論外であることが気に食わないようだ。


 東堂は永田さんの方をじっと見つめ、フッと鼻で笑って目を逸らした。

 椅子から立ち上がり東堂に襲いかかろうとした永田さんをアルシアが羽交い締めで止める。


「離しなさいアルシア!あいつ殺す!殺してやる!」


「わぁぁ!落ち着いて椛ちゃん!東堂くんもなんかあったんだよきっと!」


 騒いでいる椛さんには目もくれず、東堂は笑いながら話を戻した。


「さて、冗談はこれくらいにしとくか。真面目な話、死ぬと持ち金の半分をドロップするから前衛が大金を持つのは危険なんだよ。

 そういう意味でも、最悪自分の身を自分で守れる西田が適正だってこと。ギルドホームを作れたらそっちに移せばいいからな。分かったか?」


「ま、いいだろ。俺ら馬鹿にお金の管理は無理だ。なぁ!樋口!永田!」


「あんたたちと一緒にすんじゃないわよ!……ま、どうであれ優香が1番適任でしょうね」


 矢沢と永田さんは納得してくれたようだ。樋口は知らん。


「話纏まった?また【防腐剤】集まったら呼んでよ!じゃ、僕はギルドホームのためにお金を集めるかな!またな!」


 黙って俺らのやり取りをみていた谷口はそう言い、優香さんに152万Gを渡して帰っていった。俺たちも帰路についた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「いやぁ、ギルドホームかぁ……要くん、私たちも建てよう!ギルドホーム!」


「ギルドホームかぁ……まだ空いてる土地なんかあるのかなぁ?」


 宿に戻ってきた俺たちはギルドホームのことについて話し合っていた。ちなみに東堂は帰る前に顔を赤くしたのぞみさんに、


「あ、あの!予定のない日を教えても、もらってもいいですか⁉」


 と聞かれ、対応をしていたので邪魔をしたら悪いと思い俺たちは先に帰って来たのだ。


「どうせ建てるならもっと後でいいじゃない。[ザラマーナ]に空いてる土地なんかもう無いわよ?」


「……どうせなら人が少なくてオーシャンビューの場所がいい」


「おぉ!海いいね海!」


「どうせ今回で金が一杯入ってきたんだ!でっかい城建てようぜ!」


「いやいや、俺たち9人だから、そんな大きくなくていいんじゃない?」


 俺たちが思い思いに話していると、東堂が帰って来た。すると、樋口と矢沢が東堂に、


「「東堂!ギルドホーム建てようぜ!」」


 と言った。帰ってきたばかりでそんな提案をされた東堂は少し面食らっていたが、すぐに真顔になり、樋口たちを諭した。


「金はあるが、場所がねぇだろ?いい場所があったら考えてやるよ」


「くっそー……そうだ!さっさと次のエリアボスを攻略すればいいんだよ!そろそろ海のフィールド来るっしょ!」


「そうね。それなら今すぐレベル上げに……」


「ねぇ?要くんこの前お兄ちゃんのいる騎士団の支部に行ったんだよね?」


 永田さんと矢沢が立ち上がったのを遮るようにアルシアが俺に聞いてきた。俺が答える前にアルシアが続けて話す。


「お兄ちゃんの今いるファルパーラ支部からは海が見えるって言ってたよ?」


「はぁ⁉要てめぇ!なんて黙ってたんだよ!」


 樋口が俺に詰め寄ってきた。


「いや、確かに土地はあったんだけどね。騎士団の人たちでも苦戦するようなタコがよく出るんだって。それにマアヌスと違ってすぐにみんなが行けるような場所じゃないし……」


 俺が弁明すると中村が、


「あ、移動の話なら大丈夫だよ?要が行って土地を買って、そこをギルドホームってことにすれば俺たちも行けるから」


 と教えてくれた。


「ほら!なんでもとりあえず案があったら言いなさいよ!大抵なんとかなるんだから!」


「い、いや、移動出来てもあの騎士団でも対処に手こずったタコがよく出るらしいし……」


「タコなんて殴り飛ばせばいいでしょ!あんたは根性が足りないのよ!根性が!」


「はぁ……すいません……」


 俺が理不尽に怒られている間にも東堂たちはファルパーラにギルドホームを建てる前提で話を進めていた。


「よし、要。お前は明日150万Gを持って買えるだけの土地を買ってこい」


「ちゃんと海が見えるとこ買ってこいよ!」


 樋口が俺に付け足しの要求をしてきた。もうタダのパシリである。


「俺は菅原から40万徴収してくる。アルシアと西田は新聞部から大工に関する情報をもらってきてくんねぇか?NPCでもプレイヤーでもいいからよ」


「はーい!」


「了解だよ」


「残りの奴らはもう1回ピラミッドに行って【防腐剤】を集めてこい。谷口のことだ。明日には100万くらい稼いでんだろ……さて、今日はもう遅いし寝るか」


「そうだね。じゃあまた明日」


 優香さんたち女性陣は自分たちの部屋へと戻って行き、俺たちも床につくことにした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「じゃあな要!いいとことってこいよ!」


 樋口たちピラミッドに向かう組に見送られながら、俺はベルリナの天使像の所へ向かった。


(うーん、いい土地なんて俺にはよく分からないしなぁ……とりあえず、騎士団のファルパーラ支部に行くか……)


 俺はそう思い、ファルパーラに転移する。目を開けるとそこは騎士団のファルパーラ支部だった。


(あれ?なんでここに……あ、前はここから帰ってきたから、ここが登録されていたのか)


「お、アルシアのところのか。こんなとこに何のようだ?」


「あ、ルドリスさん。どうも、実は……」


「ちょうどいい。お前も手伝え。今は1人でも多く戦えるやつが必要だ。付いてこい」


 ちょうど通りかかったルドリスさんは俺を連れて小走りで外に向かった。よく見ると、前と違い騎士団員全体の空気が張り詰めている。


(なんだ?またタコでも出たのか?)


 俺はルドリスさんに連れられて外に出ると、その光景に驚いた。


 街からは火があがり、空は真っ黒な雲で覆われていて、雲の中から黒い生き物がゆっくり降りてきている。また、200人ほどの騎士団員がずらりと並んでいるのだ。


「な、なんですか⁉あれ⁉」


「あぁ、堕天使の軍勢だ。数分前に街に降りてきてな。急がねぇと死傷者が出るだろう。今から副団長が団員に指示を……ほら、来たぞ。お前は少しここで待ってろ」


 ルドリスさんはそう言って壇上にいるアルカルネさんの横に向かった。ルドリスさんが来るのを見て、アルカルネさんが話を始める。


「今、堕天使の軍勢がこの街を襲っている!すぐに周辺の街からも援軍が来るが、それまでみんなには住民の避難と堕天使の討伐を行ってもらう!

 自分の配属の連隊長に持ち場を確認次第、すぐに移動だ。健闘を祈る!」


 アルカルネさんはそう言って壇上から降りた。他の団員も自分たちの連隊長の元へと向かう。


 少し待っていると全員の編成が終わったようだ。ルドリスさんとアインダさんが俺に近づいてくる。


「お前はアインダと同じ[フランドの丘]……1番敵の数が少ないだろうフィールドだ。アインダについていけ」


「わかりました。よろしくお願いしますね、アインダさん」


「はい、よろしくお願いします。さて、私たちも行きましょう」


 50人ほどのアインダさんの部下たちと一緒に俺は天使像を使い、フランドの丘へと移動した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 丘の上では何人かの騎士団員が戦闘をしている。こちらを見ていた1人の団員が大声で状況を知らせた。


「堕天使の数、凡そ150!数分後に第ニ波が到着します!」


「ではみなさん、戦闘を始めてください!」


 アインダさんが声をあげる。それに続いて騎士団員も突撃していった。


(うお⁉みんな早いなぁ……げっ!こっちにも来たぞ⁉)


 俺は襲ってきた堕天使の放った火の玉を躱し、首に向けて剣を振り、首を飛ばした。一撃で動かなくなる辺り、1体あたりはあまり強くないのだろう。


(お、これ余裕じゃね?まぁ数が多いのは大変か……)


 俺は近づいてくる堕天使を切り捨てながら、乱戦が行われている丘の上に向かった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺たちが戦闘に入ってから数分で、堕天使軍は1匹もいなくなっていた。


(すげぇな、そんな慌てふためくことでも無かったんじゃ……あ、ここは数が少ないのか)


 俺がそう思ったとき、空から堕天使が降りてきた。しかし、今までの真っ黒な堕天使と違い、1体だけ紫色のオーラを纏っている。その中でも一際大きい堕天使が声をあげた。


「おいおい、ひでぇなぁ、雑魚堕天使共!俺様が出ないとなんもできないとは、な!」


 堕天使は丘に無数の雷を落としてきた。俺はたまたま直撃を避けられたが、雷が止まり視界が晴れると、立っている団員は数えるほどしかいなかった。

 また、雷を落とした張本人以外の堕天使も全て雷でやられていた。


「はっ!騎士団員も雑魚ばっかかよ!ったく……俺の名はイブリース!もっと俺を楽しませてくれよぉ!」


 そう言ってイブリースは地上に降りてきた。俺はなんとか立っているが、HPはほとんど残っていない。そう思っていると、アインダさんが近づいてきた。


「大丈夫ですか?あ、あの、【超回復ポーション】、どうぞ。あとは私がやります」


「あ、ありがとうございます、アインダさん」


 俺はアインダさんにもらった【超回復ポーション】を飲み、俺は一歩下がった。すると、イブリースは俺の方を見て、


「あぁ?お前騎士団員じゃねぇな?ま、いっか。ここにいるんだから敵だよなぁ!」


 と言い、俺に襲いかかってきた。


「やめなさい!私が相手です!」


 アインダさんは俺とイブリースの間に入り、両手をかざすと、空中に浮いたおびただしい数の氷柱がイブリースに襲いかかる。イブリースは雷を放って氷を砕くが、いかんせん数が多すぎて、いくつもの氷がイブリースに突き刺さる。



 氷魔法は水魔法の上位魔法だ。[ベルリナ]のギルドホームでは冷房代わりにも使われているが、当然攻撃としての性能は水魔法よりも高い。その代わりMPの消費が激しく、詠唱の時間もかかるらしいが、アインダさんは詠唱せずに魔法を使っている。



「っ!てめぇ!背中のポールアックスは使わねぇのか!」


「見た目に騙されないことですね!【エレメントロック】!」


 イブリースが雷を落とすために飛び上がったのを見て、アインダさんは妨害魔法をかける。どうやら相手の魔法を防ぐ魔法のようだ。技を失敗したイブリースはイライラして、直接アインダさんに襲いかかる。急降下したイブリースがアインダさんに踵落としをする。


「っ!近接戦も出来るとは……」


「見た目に騙されないことだなぁでかいの!【バインド】!はぁっ!」


「っ!ぐはぁ!」


 アインダさんはバインドをくらい、イブリースに殴られて後ろに大きく吹き飛んだ。


「アインダさん!」


「おらおらぁ!よそ見してると死ぬぞ!」


 アインダさんを吹き飛ばした勢いそのまま、イブリースは俺に殴りかかってきた。


 俺はイブリースの拳を剣で弾き飛ばすが、すぐに反対の拳で殴りかかってくる。


(くそっ!攻撃が重てぇ!一発もくらわないようにしないと……)


 俺は咄嗟にしゃがみ込み、そこから剣を振り上げた。剣はイブリースの胴体を切ったが、HPは殆ど減らない。


「お?そんな攻撃じゃあ俺は殺せねぇよ!」


 イブリースは俺に【発勁】を飛ばして来た。俺は【発勁】は見慣れているので難なく躱したのだが、【発勁】が直撃した地面が軽く抉れた。


(はぁ⁉永田さんでもあんな威力出ないぞ⁉……まずは腕を落とせれば!)


 イブリースは俺に近づいてくる。俺は、殴ろうとしている右腕に狙いを定めて剣を振った。しかし、イブリースの体が硬すぎて、剣は浅いところを切っただけだ。イブリースは何度も攻撃を邪魔されて青筋を浮かべている。


「ちっ!クソが!」


 イブリースは苦虫を噛み締めたような表情をしている。俺はそれを見て、もう一度腕に攻撃をくわえようとした。

 しかし俺が腕に剣を降ろうとすると、左手で剣を振っている右手を掴まれてしまった。そのままイブリースの右膝が俺の腹めがけて飛んでくる。


「おっと危ねぇ、うらぁ!」


 俺は膝蹴りをもろにくらった。この場から退避したいが右手を掴まれているため逃げられない。


(ちっ。こりゃあ死ぬな……せめて少しでもダメージを……)


 俺が逃げることを諦め、少しでもダメージを与えようと左手に【投げナイフ】を持ったときだった。


「イブリースとやら、その子を離せ。殺されたくなければな」


 丘のふもとに騎士団の鎧を着た女性がいた。後ろには10人ほどの団員がいる。顔はよく見えないが、アルカルネさんが言ってた援軍なのだろうか。


「なんだぁ?このガキを殺したら相手してやっから黙って待ってろクソ女!」


 イブリースが騎士団の女性に向かって怒鳴り、俺にもう一発膝蹴りを入れようとした。

 その瞬間、イブリースの右手が俺を離した。否、右肩ごと消し飛んでいた。女性は、イブリースの真後ろに転移し、イブリースの右肩を消したのだ。腕が無くなった肩からは煙が出ている。


「ぎやぁぁぁ‼き、貴様!何をした⁉」


「何。ちょっと光魔法を貴様の右肩にぶつけただけだ。次は頭を飛ばすぞ?」


「っ!くそがっ!」


 イブリースは素早く地面を蹴り、羽を使って空へ逃げようとした。しかし、女性がそれを許さない。


「逃がすと思ってるのか?死ね」


 放たれた光の玉がイブリースを貫く。イブリースは地に落ち、光となって消えた。


(うわ!すげぇ……あ、それより……)

「あの、助けて頂いてありがとうございました」


「いや、礼には及ばない。私はヴァルリア騎士団の副団長のレアナという。1人でよく耐えたな、少年。それより、ルドリスは何処にいるか分かるか?」


(副団長⁉だからあんなに強かったのか!)


 レアナさんは周りをきょろきょろと見ている。ルドリスさんに用があるようだ。副団長と大隊長同士、大事な話があるのだろう。


「あ、あの、ルドリスくんなら他の所で戦ってると思うよ。ここには僕の隊と彼だけで来たから……」


 バインドが解けたアインダさんが恐る恐る近づいてくる。レアナさんは丘の様子を見渡し、状況を確認するとアインダさんに問いかけた。


「アインダ、なんで幹部級の堕天使が出てるのに君の連隊だけなんだ?おかげで多くの団員がボロボロじゃないか」


「あー、その、数が少ないから大丈夫だろうってルドリスくんとアルカルネさんの判断で……」


「なら仕方ない。では私はルドリスの所へ行く」


 レアナさんはそう言って転移していってしまった。何か急ぎの用でもあるのだろう。俺たちも天使像を使ってファルパーラ支部に戻った。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 支部に戻ると、先程までの慌ただしさはなく、前のようなのんびりとした空間に戻っていた。


(よかった。どこも大きな被害は無かったんだ。あ、そうだ。土地を探さなきゃ。とりあえずアインダさんにでも聞くか……)

「アインダさん、俺たちギルドホームが欲しくてこの辺に土地を……」


「おい、離れろ」


 俺がアインダさんに相談しようとすると、ちょうど天使像からルドリスさんが帰ってきた。……何故かレアナさんが腰に抱きついているが……。


「ひどいよルドくーん!私すごい急いてきたんだからご褒美あってもいいじゃーん!」


「ねぇよ、俺から離れろ、そして帰れ」


「ねぇ?ちょっとチュッてしてくれるだけでいいからぁ。それが恥ずかしいならギュッてしてくれるだけでいいからぁ!」


「おい、俺が副団長になったらお前を騎士団から追い出すから覚悟しとけ」


「え?まだまだ引退する気はないけど……それってもしかして寿退職するってこと?ルドくんなりのプロポーズ?キャー!もう、ルドくんったらシャイなんだから!」


「殉職しろ」


 何やらさっきまでのレアナさんとは全くイメージが違う。俺が困惑していると、アインダさんが教えてくれた。


「レアナちゃんは私たちと同郷なんですが昔っからルドリスくんが大好きでしてね。一般人がいないところではいつもああなんです」


「いや、一般人の俺がいますけど……」


「気付いて無いようですね。ま、そのうち静かになりますよ。それより先程、何かおっしゃってませんでした?」


「あぁ、そうだ。この辺でギルドホームを買うのに適した土地ってありませんか?」


「ギルドホームですか?ちょっと待ってくださいね。この辺りの地図を……」


 そう言ってアインダさんは机の上に地図を広げてくれた。それを見ていたアルカルネさんが近づいてくる。


「へぇ、ギルドホーム買うんだね。で、お金はどれくらいあるんだい?」


「えっと、150万Gあって、海がみえる場所がいいんですが……」


「ふむ、この建物の隣は……いや、朝からずっとうるさいし、辞めといた方がいいね」


「しかしこの辺は殆どオクトパス種がたまに発生しますし……」


 アルカルネさんとアインダさんが真摯に考えてくれている。

 そこにルドリスさんと、ルドリスさんの背中にしがみついているレアナさんが来た。


(あれ?なんだレアナさん、一般人の前でもくっついてるじゃん)


「レアナちゃん、一般人がいるのにそんなにくっついてて大丈夫?」


「そういやそうだ。そいつは団員じゃねぇぞ?」


 アインダさんとルドリスさんがそう言う。レアナさんは俺の格好ををじっくり見たあと、顔を赤くしてルドリスさんの背中から飛び降りた。姿勢だけは凛々しいが、相当恥ずかしかったのか声も震えている。


「やや、やぁはじめまして、わた、私はふ、副団長のレア、レアナだ。よよろしく」


「レアナちゃん、さっきも自己紹介してたよ?」


「これに懲りたらもうどこでもくっつきまわるのはやめ……」


「あ!もう君にはバレちゃったし、ルドくんといちゃいちゃしてても大丈夫だ!」


 閃いた!という顔をしてレアナさんはルドリスさんに体を擦りつけ始めた。


「ちっ、それで、なんの話だ?」


「あぁ、実は……」


 ルドリスさんに事情を説明すると、ルドリスさんは迷うことなく、ある一点を指さした。


「ここの丘なら海にも降りられるし、見晴らしも良く、タコも攻めてこない。しかも周りの人はいないのにそこそこ土地の値段も安い。超有料物件じゃないか?」


「へぇ、いいですね。んじゃそこにしよ……」


「いや、ルドリスくん、そこの土地って……」


「おいおいルドリス、そこは騎士団の建物を建てるために買った土地じゃないか。しかもまだ開拓途中だし」


「こいつは俺たちに混ざって堕天使の討伐を手伝ってくれた上に、幹部級のやつの時間稼ぎもしたんだ。これくらいの報酬はあってもいいだろ」


「ふーむ……よし、ええと名前は……」


「あ、佐藤です。佐藤要」


「よし、サトウくん。君があの土地の開拓ともう1つの場所の道の整備を手伝ってくれたらそこの土地全てを150万Gで売ろう」


「あ、はい!ありがとうございます!」


 アルカルネさんから許可が降りた。これで本来の目的は達成したのだ。


 なお、開拓作業が終わったのはその日の夜遅くで、連絡を1本もいれなかったためベルリナでみんなに……特に永田さんにこっぴどく叱られるのであった。

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