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『永遠の茶話』

作者: ひろち

40代頃の女性を、やはり同じ年頃の男が口説いている。

カフェと食事、どちらでも利用できるイギリス風と称する店内は、外国人のウェイターが行き交い、8割程の席が埋まっていた。

女性は、きちんとした身なりで、特別に目立ちはしないが、落ち着いている。

そんなところに惹かれたのか、男は少し力が入り過ぎているのが傍目にも分かった。

女性は、ブランド品も持っているがこだわりはなく、車は国産の車に長く乗っているらしい。

男は、仕事が順調で、大きくはない会社なので退職までには取締役にもなれるだろうとアピールする。

女性は、興味を引かれた様子もなく、紅茶をカップに注いで飲んでいる。取り澄ました風でもない。趣味も映画を観たり、読書、手芸。旅行にはたまにしか行かないと言う。

にこやかだが、多くは話さない。

男は攻めあぐねた体になってしまい、そんな様子に女性は意外な笑顔を見せ、男はそれを見て少し恥ずかしくなってしまった様だった。

少し間が空いた時、離れた席で若い男数人が大声で笑い出した。悪い話をしているに違いなく、男も含め、周囲の客達は眉をひそめる。

女性の様子は全く変わらなかった。

「ああいうのって、絶対、続かないですよね?」

男は、普通の話だと思って、ええ、まあ、そうですね、などと答える。

だが、女性の話は続いた。

いつからか、無意味な事はしたくないと思い始めて、では無意味とは、どういう事か?昔、流行ったスカートは今となっては意味がない。北朝鮮やテロが騒ぎを起こすが、数年後には、騒ぎは終わり、今の騒ぎは無意味になる。あの若い子達も一生、あんな態度を取り続けはしない。良い事も、悪い事も、過ぎてしまえば無意味になる。継続しなかった事の意味は失われる。だから、継続する事だけに意味はある。

「そう、思いませんか?」

女性はカップを口に運び、男は何度も頷いている。

男は、女性の話に深く引き込まれている様に見えた。

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