誰かの内なる心の声
そして、今退部届けを出した僕だが、顧問はあっさりとそれを受け取った。
きっと、あまり上達しない僕を必要としなかったのだろう。それがなんとなく悲しかった。自分は要らない存在だと強く思い知らされたような気がした。
そして、次は何故か憤りを感じた。けれど、それは何かはよく分からなかった。というか、あまり考えたくなかった。
なにかよく分からない気持ちを忘れさせるために、僕はゲーセンに寄って、一人でカラオケにも寄って、帰りに自分のお気に入りの漫画を買い、帰ってからは、ゲームもして。とにかく気分を紛れさせた。しかもそれがとても、とても楽しかった。
部活という概念がなくなったからか、不思議な負い目に解放され、とても気持ちがよかった。
ゲームにも飽きて寝ようとした時、声が聴こえた。急に、なんの前触れもなく、声が聴こえた。
ーー「お前はそれで楽しいのか?」ーー
ーー「お前はそれで満足なのか?」ーー
ーー「お前の本当の幸いは、幸せはこんなものだったのか?」ーー
何度も何度も僕に問いかけてくるその声は、どうも耳に残った。それが妙に腹正しかった。
この声の主は誰なのか、という疑問よりも、先に苛立ちを覚えていた。
「うるさいうるさいうるさい」
「お前はそれで楽しいのか?」
「…ああ、最高に楽しい気分だな」
「 お前はそれで満足なのか?」
「…ああ、充分さ。これ以上ない満足な一日だったよ」
「お前の本当の幸いは、幸せはこんなものだったのか?」
「………」
ふざけて答えた質問だったが、それだけには応えられなかった。答えたかったけれど、無理だった。応えられるだけの答えを僕自身は持っていなかったから。
枕に顔を埋め、あの声を聴くまいとして、何度も叫び続けた。なぜ、聴きたくないのかという理由さえ考えられ無かった。
その嫌な質問は鳴り止まなかった。まるで、僕自身が自分に語りかけているかのように、そんな気がした。
ーーーそしてあの質問の答えを考えようとした瞬間、この声は自分の気持ちだったんだと僕は実感したーーー
ーー「お前の本当の幸いは、幸せはこんなものだったのか?」ーー