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打算の畑  作者: さいこ
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立て看板

 はっきり言っておく。私はエッセイなど書きとうなかった。


 はあ?

 なんて思われたことかと察する。何故ならこの作品がエッセイだからだ。


 冒頭にインパクトを与える目的があったのは隠さないが、しかし嘘や詭弁ではない。

 私は見習いとはいえ創作をやる人間として、エッセイは書きたくなかったことは間違いない。


 だがそれは、エッセイというジャンルを忌み嫌っている訳でもなければ、己の内面を曝すことに抵抗がある訳でもない。むしろそういうのは好きだ。

 こうして言うのは開き直っているようであまり好きではないが、私は自己承認欲求の塊なので、脳内をぶちまけて見せつけることに幸せを感じる類の人種だ。字面がひどい。


 じゃあどうしてかというと、私の脳に浮かび上がるネタを他人にやりたくないからだ。我ながら恥ずかしい話だとは思っている。

 そこに理性的な言い訳はない。ただの独占欲のようなものだ。


 例えば私が空を見上げて、今日の空は散々踏みつけられて埃をかぶった大理石みたいだと思ったとする。

 すると私は、そのフレーズを独占したくなる。不用意にツイートなどして、他の人に転用されたくないなどと思ってしまう。理由は知らん。


 そういう訳で、私はこれまで自分の考えた事をメモ帳に溜め、時折創作のネタとして使っていた。今もまだそういった類のネタが私の携帯の片隅で燻っている。


 しかし、「書きたくなかった」などといった言い回しをしたことから分かるように、私は考え方を変えてみた。

 きっかけは私の尊敬するある友人のエッセイだ。


 心を打たれた、とはまさにこういう事なのだなと心底思った。その衝撃のついでに、私はエッセイの執筆を忌避することをやめた。

 ちょうど風に煽られて倒れた自転車のかごが、地面に叩きつけられて歪むのと同じだ。


 私の心の内を書き連ねることで、それを見た誰かのコメントが私の栄養になるかもしれない。発想の転換や新たな着想をもたらすかもしれない。あるいは、私のそれが無言の誰かの作品に取り込まれて、更にそれを見た私が何かを得るかもしれない。

 そう考えてみることにしたのだ。


 まあ、そんなものは建前でしかないっていうのは自分でも気づいているわけなのだが。




 話は変わるが、私はある時先生に「畑ノート」というものを課せられた。

 毎度授業の頭を三分間ほど削って、何かを書くのだ。


 絵でもいい。メモでもいい。エッセイでも詩でも、日記でもファンタジーでもいい。

 何かを書くのだ。


 そうしているうちに、その楽しさに気がつく。自分の心の内にある何かを文字にして世界に解き放つことの心地よさが分かる。

 まるで楽器を演奏するかのような心地。音に関わるそれを音楽というのであれば、文に関するこれは文楽と言っても良いのではなかろうか。いや、今適当に考えただけだから深く突っ込まないでほしい。


 私はエッセイを書こうと思った時、その楽しさを思い出した。

 何に縛られるでもなく、ただアドリブでベースの弦をはじき、鍵盤を押し込むような執筆をまた味わいたくなった。




 ここは、自らのアイディアを解き放つことに対する抵抗を解消する建前としての打算が肥料としてまかれた畑。

 故に、打算の畑。


 下書きなしのエゴイズムに満ちた私の本心が芽を出す場所です。

 言葉は狂い、文章は歪で中身はもっと汚いかもしれません。

 メモ帳のような場所ですが、何か感じる事があれば何でも言いつけてください。

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