初めてのクエスト(後編)
ギルド近くの酒場は日も暮れてきた今の時間、クエストを終えた冒険者で賑わっている。探しているシルバはいつも酒場の中心にある席に座っているのだが今日はまだいない様だ。俺達は店内で待つことにした。
「メイリンさん、シルバさんってどんな人ですか?」
「シーちゃん?そうだねシーちゃんはさっきも言った通りやんちゃなんだ。いつもあちこちでケンカを売ったりしていて、最初会ったときは怖かったけど、一緒にクエストを受けたりしてシーちゃんと仲良くなってからは結構優しかったりするんだ。見た目はツインテールの小さな女の子なんだけどもう成人してて背のことを言うと怒るから気を付けてね。」
「わかりました気を付けます。」
バン!
酒場の入口にあるドアが勢いよく開けられる。騒いでいた周りの客も一瞬静かになった。そして入口から現れたのはシルバだった。シルバは機嫌の悪そうな雰囲気でいつもの席に座った。タイミングが悪かったかな機嫌を直さないとお金の話なんてできないな。そんなことをよそにメイリンはシルバに話しかけた。
「シーちゃん久しぶり!」
「おお、メイリンそれにゲイルも居るじゃないか。どうしたんだ?」
おや、思ってたより機嫌悪くないかも。
「いや~ちょっとね聞きたいことがあるんだけど、最近ナリアってゴロツキとケンカした?」
「ナリア?ああ、アイツか、ボコボコにしたけどそれがどうした?」
「そいつからお金は取った?」
「ああ、取ったよ。アイツ意外と金持ってて驚いたんだ。」
「そのお金なんだけど実はね・・・」
メイリンは事情をシルバに説明した。
「なるほどな。で、私に金を返せって言うのか?嫌だね。」
「シーちゃん!」
「いつも言ってるだろ、私に何か言うときはこれでってな。」
シルバは拳を前に突き出した。ケンカってことか。やれやれ。
「わかった。俺が相手するよ。」
「ゲイルか、前にやられた借りがあるし、いいだろうやろうぜ。」
俺達は酒場の外に出た。俺は剣をメイリンに預けシルバと向き合った。いつでもこいという風にシルバが手で合図する。俺はジリジリと間合いを詰めていく。シルバは我慢できなくなったのか殴りかかってきた。俺は右手でその拳を掴むが、シルバは体を捻り俺の手を振りほどくとともに回し蹴りを繰り出してきた。俺はそれを脚でガードする。
「さすがゲイルやるな。じゃあこれはどうだ。」
シルバは地面を蹴り上げ砂煙を巻き上げる。ペッぺ。砂が目や口に。俺が煙たがっている隙にシルバは両拳で乱打してきた。くっさすがレベルは80といったところか攻撃が鋭く重い。女の子に手を上げるのはちょっと心苦しいけど本気を出すか。〝疾風迅雷〟俺は高速でシルバの後ろに回り込むと首の後ろに手刀を入れ気絶させた。ふう、これでお金を返してもらえたらいいけど。それからシルバが目を覚ますまで待つことにした。
「う~ん、痛たたた。どうやらゲイルに負けたようだな。ちぇ。」
「でも前より強くなってたよ。攻撃が鋭くて重たかったし。」
「いいよ負けは負けだ。で、金だっけ、ほらよ。」
シルバから指輪の代金である銀貨2枚を受け取った。
「力付けておくからまたケンカしようぜ。じゃあな。」
シルバは酒場へと戻っていった。これで指輪を返してもらえそうだ。それから俺達は装飾品屋に向かった。装飾品屋の店主は約束通り指輪を売らずに待っていてくれていた。お金を渡すとお疲れさんと労ってくれた。意外といい人だったかも。そして、ゴードンさんの家に戻り指輪を渡した。
「ありがとうございました。大切な指輪が戻ってきて本当に良かったです。」
ゴードンさんは本当に嬉しそうだ。そしてゴードンさんからクエスト完了報告書を受け取り、その報告書をギルドの受付に渡して報酬の銅貨3枚を受け取った。
「これでクエスト完了ですね。思ってたよりもいろいろありましたが楽しかったです。」
ソアルは満足そうだ。簡単なクエストだと思っていたけどシルバの相手までするはめになるとはな。銅貨3枚じゃあちょっと安い気がする。まあそんなことより腹が減ったな。皆に早くどっか食いに行こうと提案するとしよう。