冒険者仲間
カルストの町に着く頃には太陽が西に傾き出していた。
ぐ~、ぐ~、ぐうぅ~。
うぅ腹が減って死にそう。ソアルを見るが何ともなさそうだ。俺と同じで昨日の朝食から何も食べてないのに。魔物と人間の違いかな?何にしてもまず飯屋に行きたい。ソアルと何処に行くか話になったので、俺は迷い無く飯屋と言った。
ヒヒーン。
レクレイが馬車を適当な場所に停めた様だ。馬車から降りる。
「ゲイルさんは昔この町に居たんですよね?オススメのご飯屋ってありますか?」
「そうだなぁ、オススメと言っても俺は冒険者ギルドの隣にあった食堂しか行ったことが無いからなぁ。」
「じゃあ取り敢えずそこに行きましょうよ。」
俺の案内で俺の馴染みのある食堂へと向かった。ソアルは歩きながらキョロキョロとしている。昨日怖いって言ってたからなぁ。そんなに不安にならなくてもいいのに。食堂に近づくにつれていい匂いがしてくる。うんうん、この匂い。食堂はカウンター30席、テーブルが20個とそこそこ広い。普段は冒険者の客でいっぱいだが昼食の時間帯を過ぎていたためかガラガラだった。俺達は壁際のテーブル席に座った。
「う~ん何にしようかな。」
ソアルはメニュー表を見て迷っているようだ。ソアルは5分くらい悩んだ末にオムライスに決めた。注文を済ませて料理を待っているとこちらに向かって歩いてくる短髪の女の子がいた。そしてそいつは俺に気付くと、涙を流しながら抱きついてきた。
「生きてた、生きてたんだね。ゲイル~。」
「メイリン!」
「良かった。魔王を倒すって1人で飛び出したから心配で心配で。」
「ごめんな。」
俺はメイリンの頭をポンポンと叩いた。
「ゲイル、戻って来たってことは魔王は倒したの?」
「いや、そういう訳じゃないだ。」
「あの~ゲイルさん。そちらの方は?」
「ああ、すまない。こいつはメイリン。俺の冒険者仲間だ。」
「どうも、メイリンです。」
「こっちはソアルとレクレイ。何と言うか、俺の今の雇い主って所かな。」
「どうも。」
「雇い主ってことは冒険者辞めてその人の護衛になるの?何で?ゲイルなら一番の冒険者になれるのに。ねえまた一緒に冒険行こうよ。」
「そう言われてもなぁ。」
「その女がゲイルをたぶらかしたのね。許せない。そこのソアルだっけ、私と勝負しなさい。そして私が勝ったらゲイルを自由にして。」
「おい、メイリン!」
「ゲイルは黙ってて!どうしたの怖じ気づいたの?」
「面白そうですね。わかりました勝負しましょう。」
「ソアル様!」
「大丈夫ですレクレイさん。メイリンさん、勝負って何をするんですか?」
「1対1の剣術勝負よ、もちろん寸止めだけど、相手から一本取るか、参ったと言わせたら勝ちよ。」
「わかりました。」
俺達は料理を食べた後、町の外れにある広場に移動した。はぁ~何でこうなったんだ。寸止めだからお互い怪我はしないだろうけど。ソアルって剣を持ったことあるのかな?まあ見守るとしよう。ソアルとメイリンは剣を持ち向き合った。レクレイの合図で勝負が始まる。メイリンは正面からソアルに突っ込んでいく。それを見たソアルは剣を縦に振った。メイリンは難なく避け、ソアルは勢い余ってそのまま地面に剣を突き刺した。
「もらった!」
しかしその後だったソアルが刺した剣の先から大きな地割れが発生したのだ。幸い人や建物はなかったので何の被害もないが、さすが魔王といった所だろうとんでもない威力だ。メイリンはその光景を見て固まっている。その隙を見てソアルが剣を振った。
「えいっ。私の勝ちですね。」
「あっあなた一体何者なの?」
「秘密です。」
勝負が決まった。ソアルの勝ちだ。ソアルは嬉しそうにニコニコしている。
「ねえソアル、そんなに強かったら護衛なんて要らないでしょ。ゲイルを自由にしてもらえないかな?」
「メイリンさん・・・。」
「メイリン、俺はなソアルに命を助けてもらったんだ。(実際は見逃してもらっただけだけど。)その借りを返さないといけないんだ。(実際は呪いがあるから逃げられないだけだけど。)」
「そう、そうなんだ。無理を言ってごめんなさい。」
「いいですよ、メイリンさん。それはそうとさっきの勝負私が勝った時の条件を言ってませんでしたね。メイリンさん私今旅行中なんです。その旅行の間一緒に旅をしませんか?」
「ソアル・・・。行く、行くわ。」
ソアルの一言でメイリンが旅の仲間になった。レクレイは頭を抱えている。そうだよなただでさえ面倒な旅行なのにパーティーにもう1人人間が増えるんだもんな。俺はレクレイの肩をポンポンと叩いた。まあ俺としては仲のいい冒険者仲間が増えるのは楽しくなっていいと思う。
「改めましてメイリンです。冒険者をしていてレベルは67です。剣術と回復魔法が少々使えます。これからよろしくね。」
これからますます賑やかになりそうだ。