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魔剣イブリース

この話はソアルの目線で書きました。

「ゲイルさん!」

「ゲイル!」


あんなに強いゲイルさんがまったく歯が立たなかったなんて。


「ソアル逃げて、私が時間を稼ぐから。」

「メイリンさん、ダメです、そんなの絶対ダメです。」

「いいから逃げて、あのゲイルが勝てなかったんだよ、もう逃げるしかないんだよ。」


こんな私のためにゲイルさんだけでなく、メイリンさんまで・・・。もうこれ以上お友達が傷付くのは見たくない。


「メイリンさん、下がって下さい。」

「ちょっとソアル!」

「勇者さん。勇者さんが魔王である私を倒さないといけないのは良くわかります。前世の物語でもよくありましたから。でも私死にたくないです。前世は散々でしたが、転生して魔王になって、ゲイルさんやメイリンさん、レクレイさんに出会って、皆いい人ばかりで毎日楽しくて、こんな日々壊したくないんです。どうか見逃して下さい。」

「ソアル・・・。」

「う~ん、そんなこと言われても、僕も君を倒さないと帰れないんだけどな~。やっぱり死んで。」

「それじゃあ私、あなたと戦います。」


ゲイルさんの剣を拾って勇者さんに剣を向ける。


「それじゃ行くよ。」


勇者さんの姿が消えた!?ど、どこ!?


「こっちだよ。」


私の右側に突然勇者さんが現れた。そして剣が近づいてくる。


「キャッ」


私は剣を盾にするが、それを避けるように斬り込まれた。痛い、痛いよ。あれ、でも血は出てない。


「あれ、おっかしいな、ちゃんと腕を斬り落としたはずなのに。さすが魔王は丈夫だね。」


私の攻撃も防御も遅くて勇者さんに当たりそうにない。なら、魔法を使ったらどうでしょう。いやダメです。きっとお仲間の魔法使いさんが〝マジックキャンセル〟を使えるだろうし、私の初級魔法ではかき消されてしまいます。一体どうしたら。


『魔王よ、力を欲するか?』


「誰?」

「何?僕は何もしてないよ?」


『魔王よ、力を欲するか?』


力・・・欲しい勇者さんを止められる力が、欲しい皆との明日を作る力が。どなたかわかりませんが私にその力をくれるのであれば、欲しい、力を欲します。


『確かに承った。そなたに力を与える。受け取るがいい。』


ピカッ。


「な、何!?」


強烈な光と共に私の前に剣が現れた。すごい禍々しいオーラを放った剣、これが力・・・。ゲイルさんの剣を置き、目の前の剣を手に取った。


『魔王よ。我は魔剣イブリース。そなたと共に戦おう。』


この声、さっきの声と同じ、剣がしゃべってたの!?


『そうだ。我は歴代の魔王に仕えてきた。今度はそなたに仕えよう。』


そうだったんですね、よろしくお願いしますイブリースさん。


『さて、魔王よ、今屠りたいのは目の前の小僧か?』


屠るってちょっと、まあ今止めたい相手は目の前の勇者さんです。


『承った。主よ我に身を委ねよ。』


はい、わかりました。


「何か知らないけど、もういいかな。じゃあ行くよ。」


勇者さんの姿がまた消えた。えっ体が勝手に!?私はイブリースさんを真後ろに振り回す。あれ、何かに当たった?


「ぐはっ」


気付いたら勇者さんが壁にふっ飛んでいた。


『後ろから狙うとは姑息なヤツよのう。』


今のイブリースさんが!?


「痛いな、何で急に強くなったの?君、力を隠してたのかい?まあいいよ、もうこっちも手を抜くのはやめて全力でやる。覚悟しろ魔王!」


キン!


えっ勇者さんが目の前に!


キン、キン、キン、キン、キン、キン、キン、キン!


「やるな魔王、本気の僕の攻撃をこうもしのぐなんて。とっておきだ〝クロイツ・リヒト〟」


十字の光る斬撃が飛んできた。ど、どうしよう。


『主よ恐れることはない。我に任せよ。行くぞ。』


斬撃に向かって体が動く。ええっイブリースさん、だ、大丈夫なの!?イブリースさんが十字の中心に当たると斬撃がかき消えた。


「えっ僕のとっておきが!?」


イブリースさんはスピードを上げ勇者さんに突っ込んだ。そしてお腹に突き刺さる。


ドッパァー。


血が辺りに飛び散る。


「ユアン!」


勇者さんのお仲間は遠巻きにこちらを見ている。そうか、私の攻撃が来るかもしれないから近寄ってこないんだ。勇者さんはぐったりしている。いけないこのままじゃ。


「メイリンさん、早く回復魔法を、勇者さんのお仲間も回復魔法ができる方はこちらに!」

「君・・何の・つもりだい?僕は・君を・・」

「ダメです。今はしゃべらないで下さい。」


メイリンさんと勇者さんのお仲間の僧侶さんと魔法使いさんが回復魔法を使う。勇者さんの顔色が少し良くなってきた。もう大丈夫かな。


「はぁはぁ、やられちゃったよ。魔王がこれほど強いとはね。でも何で僕を殺さなかったんだい?」

「何でと言われても理由なんてありません。私は誰も殺したくないんです。それがたとえ敵であってもです。」

「ふ~ん、甘いね。でもちょっと気に入ったよ。どうしようかな、僕はもう君を殺そうなんて思えないし、王様になんて話すかな。」

「勇者さん、ありがとうございます。」


イブリースさんもありがとうございました。


『構わん、我は主のものだ。』


これからもよろしくお願いしますねイブリースさん。

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