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「すいません、お待たせいたしました。ですが、何と言ってよいのやら、まず皆さんに告げなければならないことがあります。主人である庵野氏についてです。この屋敷を一通り見ました限り、ここに彼は見当たりません。もしかしたら、屋敷の外にいるのかもしれませんが、それはまだ分かりません。とにかく、招待者である彼がこの屋敷に存在しないことは確かです」
誰も答えない。
「ですが、われわれがここに招待されたのは確かのようでして、ええ、二階に部屋が準備されていることはもちろんなのですが、そちらの、西側の部屋にですね、ダイニングがありまして、すでに食事が用意されていました。われわれ五人分です」
「ぼ、僕は、お腹が空いて、倒れそうだったんだな。早くそれを教えてくれよ」
「ですが、主人の許可なく、あれを勝手に頂いていいのかどうか」
「いない奴が、悪いんだな。問題あれば、あとで謝ればいい」
翼は立ち上がった。
「まあ、待てよ、坊ちゃん」
西崎はそれを制するように、極力冷たい声を出した。
「どうもね、俺はこのメンバーが不信で、不信でならないんだ。招待状には不要と書かれていたが、俺は念のためここに招待状を持ってきている。ここに、主人の庵野なんとかって署名も書かれている。偶然今、招待状を持っている奴はいるか?」
「わたし、持ってます」
「あたいも」
広田とはぐれは、それぞれ自分の荷物を探りだした。
「紺野さん、あんたは?」
「いいえ、持ってきていません。不要とありましたので」
「坊ちゃんは?」
「ぼ、僕も、持ってきてないんだな。だから、何なんだよ」
「ダイニングもそうだけど、部屋にもね、プレートがあって名前が書かれているんだよ、そこを使ってくれってことだろうけど、どうもさっきの自己紹介と違う名前の奴がいるみたいなんでね、だから、もう一度みんなの名前を伺いたい。俺は、西崎順也、順番の順に也を書く」
「わたしは紺野健二、健やかに数字の二です。わたしの名前と彼の名前はありました」
「広田葵。あおいは、草冠のほうです」
「あたいは、はぐれ。招待状にもその名前になっている」
「ぼ、僕は、アデルバード翼。招待状もその名前で来ていたはずだ」
「全員の名前もあったはずです、西崎さん、どういうことですか?」
「うんにゃ、俺が見た限り、アデルバード翼という名前のプレートはなかった。もう一度聞いたのは、聞き間違いかもと思ったからさ。プレートにはアデルバートってなってたぜ、坊ちゃん。お前の料理はないんだよ」
「な、なんだよ、知らないよ。あっちが間違えたんだろ、ぼ、僕のせいじゃない」
がっと立ち上がって、翼は吠えた。
「さあね。間違えたのかもしれない。なんてったってハーフだからな」
「な、なんだよ、僕が、ハーフなのを疑っているのか?」
「二次元と三次元のハーフだろ?」
「に、二次元を馬鹿にするなっ」
タイミングを計ったように、はぐれが立ち上がった。手には二通の招待状を持っている。彼女のものと、広田のもののようだ。たかだかそのせいで、翼の怒りはかき消された。
「あたいたちの招待状。見る?」
彼が手を差し出すと、はぐれが招待状を渡してくれる。どちらにも、庵野恩という署名がある。裏を見ると、名前に様、おめでとうございます。その後に似たような文句と、この別荘への招待、日付。どう考えても酔狂的な内容だ。
自分はともかく、他の連中がどうしてこれだけの招待状に納得してここに来たのかが気になるところだ。きっとそれぞれに考えるところがあるのだろう。自分にしてみても、あの内容でここに来ることになるなんて、普段ならば絶対ありえないことでもある。それに、ここにいるメンバーが招待状を受け取ったすべてとは限らない。
「どうでもいいわ。あたいもお腹すいた。そのダイニングに移動しましょうよ」
「そ、そうですね、間違いにせよなんにせよ、五人分の席と量はあるのですから、問題ないでしょう」




