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誰も残らない --ノーワン・バット --  作者: なつ
序章 日比野からの手紙
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  4

 途中で届いていた封筒をもらい、甲斐雪人は宿舎の自分の部屋に戻った。明日の宿題は神田隆志と一緒に放課後に図書棟に行き終わらせてあるので、明日の予習を軽くしておく。それから風呂に入って再び勉強机に座ると、封筒を見る。

「日比野」

 と裏に書かれている。前の事件で担当になった警部だ。それがきっかけで、事件以降も連絡を取り合っている。はさみで封筒を開けると、結構な量の便箋が中に入っている。

「前略、不躾な内容で申し訳ないが、少し困っている」

 十枚くらいだろうか。彼が今担当している事件の内容が書かれている。このような内容が書かれる自体、本来ならありえないことだし、あってはならないことだ。にも関わらず、このような手紙を送ってくる、ということは理由は一つしか考えられない。篠塚桃花の協力を欲している、ということだ。

 篠塚桃花は今この学園の図書等に住んでいる。いや、住んでいる、という表現が正しいのか甲斐には分からない。いや、それどころか改めて考えると、彼女のことは分からないことだらけだ。彼女のことは……彼女のことで今分かっているのは、芹沢家と血のつながりがあり、本来ならば芹沢雅の立場にあるのかもしれない、ということだ。そしておそらく、この学園でも最高に頭がいい芹沢雅よりも、頭がいい。簡単な言葉を言えば、天才だ。実際、それ以外の言葉で表現することなどできないかもしれない。篠塚桃花が、どれほどの頭脳を持っているのかを理解するためには、彼女と近い能力がなければ分からないだろう。この学園に転入してきた甲斐でさえ、計り知れない、奥が見えない、というのが正直なところだ。が、実際話してみると、しゃべり方はともかく、歳相応の少女だ。もっとも、それもそう演じているだけなのかもしれないが。

 とにかく、その彼女の助けが欲しい、ということは日比野の手に負えない事件が起きている、ということだろうか。

 日比野の手紙を読んでみると、確かに厄介な事件が起きているようだ。簡単にまとめると、ある島で五人の死体が見つかった。自殺の可能性もあるが、明らかに殺されている人物もいる。犯人が分からない。島に送っていった船の船長によると、もともと五人でその島に行ったことは間違いなく、予定通り三日後に島に迎えに行くと、そこから見える位置で女性が倒れていた。それで驚いてすぐに警察に連絡をした、とのことだ。

 島の捜索が行われ、五人全員の死体が見つかった。船長は庵野恩という人物に頼まれて、彼らの送迎をした。怪しいとは思ったが、前金で結構な額をもらっていたし、送るだけでなく迎えの日も決まっていたので引き受けた、とのことだ。島の五人とは面識はなかったが、男性三人に女性二人。まぁ、あまり公にできないパーティーでもするんだろうと軽く考えていた。

 とにかく、警察が島を調査し、また島の中央にあった屋敷の部屋に残っていた彼らの荷物の中にあった日記や手帳から読み解く限り、実際五人で完結している。もちろん警察全体の動きとして、偶然にやってきた第三者の介入と逃亡の可能性もあるが、五人で完結しているとしたら、何が起きたのかを日比野自身は考えている。

 そして、と日比野からの手紙を続いている。この事件に対して日比野自身が扱いを困っているのが、少なくともこの五人の内二人が、以前の事件でも説明した「スーサイダー・バーサス」というサイトを利用していた。つまり、自殺の可能性も、否定出来ない。

 以降に事件の状況や、島、屋敷の状況が記されている。そして最後に、案の定篠塚桃花にもこの手紙を見せて欲しい、とあった。

 すべて読んでみたが、はやり甲斐には確実な犯人を指摘できない。気が付くと一時間以上経っている。とにかく明日授業が終わったら、図書棟の篠塚の部屋を訪れてみよう。甲斐は手紙を封筒に戻すと、部屋のベッドに寝転んだ。


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