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誰も残らない --ノーワン・バット --  作者: なつ
第六章 幾らかの補足と回答
26/27

  6 <回答>


「そうではない、違う」

 篠塚桃花の単刀直入な否定に、甲斐雪人も日比野も動きが固まった。

「ち、違う?」

 ようやく、その言葉だけを搾り出す。

「葉月美優はベッドで殺されていた。この状況はひどくおかしい。日比野も言っておっただろう。あれが自殺とは思えない、と」

 日比野はええ、と頷く。

「葉月美優も殺されたのだ、これが回答だ」

「誰にですか。あの島に他に誰もいなかった」

「日記の記録を信じる限り、すべては五人で完結していることは明らかなことだ。にもかかわらず、葉月美優も殺されたのだと考えなければ、つじつまが合わない。日比野、お前は彼女の印象をなんと表した?」

「化粧っ気がない、と」

「紺野健二は、パンダのようだと表現している。それにもっと重要な記録が、葉月美優の日記にある。予定は二泊だったと」

「そうです」

「迎えは三日後。これでは計算が合わない」

「えっと……」

改めて考えてみると、確かにおかしい。二泊なら、迎えは二日後でなければつじつまが合わない。三日後では一日余ってしまう。

「葉月美優とはぐれは、別人だ」

 別人?

「殺されていたのが、葉月美優なのだとすると、生き残ったのははぐれ。すべて彼女の予定通りにことが進んだ。そして、二日後に向かえ役の葉月美優が来た。二人は協力の関係にあったはずだ。死体を気にせずに葉月は屋敷に向かった。はぐれは出迎え、彼女に状況を説明して、広田の部屋に移動した。そこで、彼女は葉月を殺す。もしかしたら、葉月が頼んだのかもしれないが。これで、五つの死体の完成だ。はぐれは一階に移動すると、後藤が自殺だと判断されないようにナイフを入れ替えた。いや、これは葉月が来る前に終わらせておいたのかもしれないが。とにかく、彼女は船でその島を離れた」

「だけど」

「これがすべての回答だ」

「ご協力感謝します。後日正式に感謝状を……」

「そんなものはどうでもいい。急いでいる理由が分かったら、さっさと職場に戻れ」

「はいっ」

 日比野は背筋を伸ばして立ち上がると、もう一度律儀にお辞儀をしてから、失礼しますと言い残し、図書棟から去っていった。

「全く、あいつは方向性は正しいのにな、情報を処理する能力が欠けている」

「ももが早過ぎるんだよ」

「時間が足りないのだよ、わたしには」

「またその話題?」

「お前には分かるまい」

「分からないよ、ももじゃないから」

「あっ」

 甲斐が立ち上がろうとすると、篠塚は短く声を発した。それから甲斐の袖を掴む。

「怒らんでくれ、悪かった」

「怒ってないよ。まだ課題があるんだ」

「もう少し一緒にいてくれ」

 どうしたのかと思い下を向くと、篠塚はさびしそうな表情をしていた。甲斐はもう一度席に座る。

「どうしたの?」

「なんでもない」

 そっぽを向いたままそれだけを答える。

「別になんでもない」


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