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誰も残らない --ノーワン・バット --  作者: なつ
第六章 幾らかの補足と回答
25/27

  5 <解説>


「揃ったって、今言った?」

 甲斐雪人は驚いて、篠塚桃花を振り返った。

「そうだ。甲斐も同じだけの情報を持っているのだ。組み立てれば物語は完成する」

「ええっと、すいません、お聞かせ願えますか」

「日比野、お前の方向性はいつも正しい。時間をかければ、充分に正解にたどり着ける。だが、急がなければならないときもある」

「教えてください」

「まずは、当事者の視点で考えることだ」

 それから篠塚は、事件の状況を説明し始めた。


 一日目、夕食。テープによる告発。西崎順也、その直後毒を飲み死亡。この状況は過去のミステリー小説を模倣しているにすぎない。庵野恩に関する論議が行われたかもしれない。とにかく、互いに猜疑心を植えつけるに充分。その結果、後藤剛、葉月美優の部屋を利用する。葉月は広田葵に付き添われて、広田の部屋で休む。広田と紺野健二は二人で、しばらくお酒を飲んでから別れる。紺野の日記からそこで広田と何らかの接触があったと思われる。広田を送った帰りか、また時間が経ってからか分からないが紺野背後から襲われる。さらに一階に突き落とされて、死亡。翌朝判明。残りは、広田葵、後藤剛、葉月美優。次の犯行は非常に行いにくい。もしも犯人が皆殺しを考えているなら、二人を同時に殺さなければならない。一人を殺した時点で、互いに犯人が分かってしまうからだ。そこで三人は、まず、自分たち以外がこの島にいないかを確認する。いない。その夜もしくは、翌日の朝、葉月美優、部屋でナイフを刺されて殺される。その状況を発見した、どちらかが悲鳴でも上げるだろう。残されたのは二人、互いに相手が犯人だと思っている。剣は、アデルバートの部屋に置いてあったものと思われる。しかし、その部屋を使っているのは、広田葵。互いを監視し合っていたはずだが、広田が理由をつけて、一度自分の部屋に戻った。それから、ホールへ移動すると、すでに、後藤は手首を切り死んでいる。残っているのは、広田一人。彼女は迎えが来る海辺へと移動する。が、そこで背後から刺されてしまう。


「それでは、回答になっていません」

「こうでなければ、物語は成立しない」

「どういうことですか?」

「広田葵は、アデルバートなのか、アデルバードなのか、そのわずかな名前の差異に後藤を犯人だと疑ってかかった。後藤も、どう考えても犯人は広田しかいないと、当たり前の思考プロセスだ。その先入観から、彼ら二人は、三人目が本当に死んでいたのか、確認をしなかった。これが回答だ」

「つまり、葉月美優はそのとき生きていた、と」

「そうだ。彼女が後藤剛を殺害し、さらに広田葵を殺した。紺野健二もそうだろう。西崎順也については確証はないが。が、座る席が決められていた以上、おそらく計画的に彼も毒殺したのであろう」

 甲斐は頭の中で事件の様子をシミュレートする。確かに、残された三人という状況は非常に危うい。危うすぎるゆえに、成り立っている。

「それで、葉月美優は彼女の部屋に戻り、自殺した、と、物語はそういう結論になるのですね」


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