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誰も残らない --ノーワン・バット --  作者: なつ
第六章 幾らかの補足と回答
23/27

  3 <日比野重三からの手紙、続き>


「まだ手紙には続きがあるよ。日比野がこの事件に関わるようになったのは、最初に言った通り、スーサイダー・バーサスというサイトがきっかけ。そのサイトのハンドルネームで、Aioという人物とGenjiという人物がいたんだけど、Aioが広田葵で、Genjiというのが紺野健二のことみたいなんだ」

「それは、面白いな」

 甲斐雪人は首を捻った。

「なんだ、この面白さが分からないのか。全く、日比野は気がついたからこうして書いてきたのだろう。紺野健二と広田葵がどうやって死んでいたか、覚えておるか?」

「広田葵は、背後から刺されて、紺野健二は後頭部を殴られていた」

「そう。その二人は明らかに他殺だ。自殺の可能性はない。葉月と後藤はどんなページの住民だったんだ?」

「ゲームらしいよ。そのゲームに登場する剣が後藤の近くで見つかっている」

「剣が? 時代錯誤な」

「もちろん似せてあるだけだろうけど。どうやら、広田葵を刺したのはその剣みたい」

「日比野は、どの順番に人が死んだのだと考えている?」

「まず最初に西崎順也。これは状況や日記からも明らかなこと。次は紺野健二、一日目の夜に突き落とされたと考えられる」

「問題は三人になってからだ。馬鹿でも次の殺人は犯さない」

「葉月美優が殺されて、逃げた広田葵を後藤剛が背後から刺し、屋敷に戻ってから彼が自殺した」

「うむ。それが一番正しい順番だ。その結論に問題があるから、日比野は手紙を書いて寄こしたのだろう」

「後藤剛が握っていたナイフでは、実は手首が切れないんだ。レプリカだった。彼の近くに落ちていた剣ならばそれが可能だが、どうも違和感がある、と」

「なるほど。残された三人は、全員刃物で殺されていた」

「そう、ここで日比野警部も手が詰まってしまったんだって」

「面白い。甲斐は誰が犯人だと思う?」

「西崎順也かな。最初に殺される役を買って出て、そこから先は自由に行動できるから」

「紺野健二が彼は青酸系の毒物で死んだと書いておったぞ」

「そんなの分かるもんなの?」

「実社会の彼の職業によるだろう。それに、不確定の要素が多すぎる。もしも、彼の死体を皆から観察される場所に移動しようという話になったら、彼は動くこともできない」

「そんな話にはならないと思うけど」

「もしもの話だ。どう扱われるか分からない」

「それなら紺野健二?」

「それならとは考えなしだな」

「分からないんだよ」

「それよりも、まだレポートは終わりではないだろう。あとどんな内容が書かれているんだ?」

「それぞれの人物について、今分かっていることが。西崎順也、三十一歳。美術商品の贋作鑑定、あるいは売買が仕事。贋作の販売については調査中。体つきは大きく、がっしりとしている。紺野健二、二十八歳。薬剤師。大手チェーンの下請け。一応小さな店の店長的な立場。広田葵、二十九歳。大手コンサルタント会社に勤務。営業部長代理。前の事件で会話をしたことがあるが、年齢よりも幼い印象。葉月美優、二十一歳、学生。大学には殆ど行っていない。ネットゲームにハマっている。髪も傷んでいて、化粧っ気なし。後藤剛、三十歳。いわゆるニート。両親と同居。互いに面識はほとんどないようだが、紺野健二と広田葵はスーサイダー・バーサスというサイトの掲示板を利用していた。日記からすると、直前に会っていたかもしれない。後藤剛と葉月美優は同じゲームをしていた。そのゲームに使われる剣が凶器として登場している。また招待状でも葉月美優ははぐれという名前になっており、明らかに犯人はそのゲームのことを知っている」

「見も知らない相手と会うなんで、怖くないか?」

「さあ。僕は最初、ももと会うときどきどきしたけどね」

「甲斐は安全だと分かっていた」

「そう、それは光栄」

「とにかく、これだけの情報ではなんとも言えないな。日比野が何を疑問にしているのか、どうしてわざわざこんな手紙を寄越したのか。明日日比野をここについれて来い」い」

「ここに?」

「そうだ。直接聞かなければ確定できない」

「分かった」

「よし、この話はこれでおしまいだ。甲斐、もっと近くに来い」

「充分に近いと思うけど」

「いいから、来いというのだ」

「はいはい」

 甲斐は篠塚を軽く持ち上げると、彼女を膝に乗せた。



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