表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も残らない --ノーワン・バット --  作者: なつ
第二章 紺野健二の場合
11/27

  1

「ぐっ」

 くぐもった声が聞こえたかと思うと、西崎順也が立ち上がる。と、口を押さえる。わたしが西崎を見ると、その目は大きく見開かれ、睨んでいる。と、次の瞬間、ガタンと音を立て、倒れた。

「西崎さん、西崎さん?」

 わたしは立ち上がり、西崎の傍に行こうとした。

「きゃーーーっ」

 叫び声を広田葵があげる。すぐに理由は分かった。西崎の口から血が溢れている。とっさにかがみこみ、脈を確認する。

 脈は、ない。

 死んでいる。

 立ち上がり、グラスを確認する。倒れるときに落としたのだろうが、割れてはいない。ツンと鼻を刺す臭いがある。

「毒、ですね」

 わたしは言った。

「嘘っ」

「嘘ではありません。明らかに、彼は最後にグラスに口をつけて倒れました。その毒を飲んで死んだのは明らかなことです」

「ぼ、僕も、食べてしまった、んだな」

「いえ、おそらく、他の料理に毒はありません。このグラスから明らかに、強い臭いがあります。青酸系の毒でしょう。もしも同じ毒が混ざっていれば、翼さん、あなたはすでに死んでいます」

「だ、だ、けど」

「と、とにかく、落ち着きましょう」

「嘘やん、あたい、嫌やわ」

「落ち着いてください!」

 わたしは少し大きな声を出した。

「彼の荷物は?」

「ロビーに、小さな鞄があったと、思います」

「うん、あった。二人で部屋を見て回っていたとき、見ました。ウエストポーチくらいの、鞄、だった」

「持ってきてもらえますか?」

「わたしですか?」

「誰でも構いません」

 広田は、ふらふらの足取りで歩き出した。分からない。西崎は、先ほど庵野氏などいないと言っていた。それが、声だけとはいえ、存在したことに驚いたせいだろうか。いや、いくらなんでも、それが死に結びつくとは考えられない。

「どうぞ、これです」

「ありがとう」

 ウエストポーチをさっと見る。たいしたものは入っていない。が、その中に一つ小さな瓶があった。手に隠れそうな大きさの瓶で、コルクで栓がされている。中に何も入っていない。けれど、そこから明らかな刺激臭がある。同じ青酸系の臭いだ。

「可能性は二つあります」

 わたしはその瓶を持って言った。

「殺されたのか、自殺したのか。先ほどの告発が事実だとすると、それを指摘されたことによって、彼は自殺したのかもしれない」

「こ、殺されたの、かもしれない?」

「分かりません。席は指定されていましたから、あらかじめ毒を仕込んでおくことは可能でしょう」

「誰が?」

「庵野氏しかいないでしょう」

「あ、庵野なんて、いるわけない、じゃないか」

 翼が主張する。彼も、西崎と同じように、はじめから存在していないと知っているのだろうか。何がなんだか、さっぱり分からない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ