表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も残らない --ノーワン・バット --  作者: なつ
序章 日比野からの手紙
1/27

  1

 日比野重三は電気を落とした部屋でパソコンの画面を見ている。

「みなさん、こんばんわー<Aio」

「Aioさん、めずらしくない、この時間に来るなんて<テツ」

「最近残業が多いのだよ。でも日課だし?<Aio」

「そうだよね、いつもこの時間に落ちてるのに<ゲンジ」

「忙しいに越したことないよ、仕事なんて。うちなんて、いっつも超暇<ゲンジ」

「自分の仕事ならね。他人の仕事なんてやりたくないって<Aio」

「もっとうまく切り抜けなきゃ<テツ」

「そんな要領持ち合わせてないよ<Aio」

 スーサイダー・バーサスというサイトのニュクスという掲示板だ。スーサイダー・バーサスは自殺志願者が集まるサイトであり、残っている他の掲示板を読むとところどころで集団自殺を匂わせる記述がある。Aioは、先の事件で逮捕された女性の同僚だった広田葵のハンドルネームだ。あの事件以来掲示板への書き込みが少なくなっているのはいい傾向なのかもしれない。だが、彼女の文章を読む限り、彼女は止める側としてあそこの掲示板にいたのではない。つまり彼女には自殺願望がある、否、少なくとも、あった。

 ブラックコーヒーを飲みながら、Aioの最近の書き込みを読む。

「それじゃあ、また明日<Aio」

 この文だけなら、普通の挨拶だ。

「こちらこそ、楽しみにしているよ<ゲンジ」

 掲示板だけを読んでいてもゲンジがそのような返事をする要素がなかった。別の掲示板か、ツーショットの機能を使って会話をしたのだろう。

 だが、たったこれだけの記述に対して警察を動かすことはできないし、個人で動くのも不自然だ。広田葵のメールアドレスは知っているが、このことを問い正したとしても、はぐらかされてしまうだろう。

 コーヒーに口をつけようとしたが、すでに飲み干していた。

 どうも、嫌な予感がする。日比野はそう感じたから、先の事件を早く終わらせようとした。そのために純正芹沢学園にいる篠塚桃花に助言を求めた。もっともその学園に彼が何の理由もなく入ることは不可能であるので、純正芹沢学園で先日起きた脅迫事件の経過を学園長であり、脅迫を受けた芹沢雅に報告をする、という名目が必要であったが。

 できれば再び彼女の助けが必要とならなければいいのだが。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ