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1章
どうしてこんなにもせわしないんだろうか。
ふと立ち止まる。
人混みが僕のすぐ傍を流れてゆく。
忙しそうに隙間を縫って小走りするサラリーマン。
とんっ、と誰かの肩がぶつかった。
それすらも気に止めない。
何か…、愚か。
彼らは何をそんなに生き急いでるんだろうか。
何をそんなに苛立っているのか。
道路脇にしゃがみ込んだ女子高生が、空を見上げていた。
僕はそんな彼女を見て、つられて空を仰ぎ見た。
青く、青い空に、うっすらと雲が流れている。
何と美しいんだろう。
ばたばたと走り抜けてゆく大人たちよりも、目の前にしゃがみ込んでいる女子高生の方が、僕の目には人間らしく映った。
“人間らしい”
抽象的過ぎる。
でも、事実そう思ったんだ。
僕たち大人は、いつも子どもたちをどこか白い目で見ている。
だが、じゃあ自分たちはどれだけの人格者なんだ…そんなふうに問われたら、僕たちは口ごもるしかないだろう。
僕は、人間でありたい。




