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ゆらぐ青と赤いさかな
ゆらゆらと水を通した光が部屋に射し込む。
窓際に置いた水槽のなかには、眩しさも気にも留めないような金魚がゆらゆら泳いでいた。
半月前別れた彼女が、夏祭りで欲しいと言ったやつ。
それがこの金魚だった。
金魚すくいは得意でないものの、必死に取ってやった一匹。
それを最初は、彼女が飼うのだと思っていたのだが、なんと飼うのは俺だった。
「だって、面倒じゃん」
今思い返せば腹立たしい限りだ。女性を殴る趣味は毛頭ないが、それでもあれだけは許せない。
それでも、生命は大切に、と律儀に飼う俺。
それは別れた今でもだ。
ゆらぐ青い光。
いや、青く感じるだけで実際は青くないのだが。
ソファーに寝転がりながら、眠さのため目を細めてると、金魚がふいにゆらいだ気がした。
いつかの、好きだった人に見えた気がした。
いつしか眠っていたようだ。
まだ、青い光はゆらいでいた。
一つの赤を包みながら。