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青の病室
「ごめんね、もう駄目みたい」
そう言って、涙があふれた。
目じりからこぼれた。
寝たままの体は、痛い。
原因不明の何かは、私の体をむしばんでいた。
白いシーツと白い枕、白い壁。
シンプルな病室だけど、右には窓がある。それが、今の私にとっての救い。
大好きな外の世界が見れないのは寂しいから。
そんな私のベッドの横では、備え付けのいすに座り、泣きじゃくったまま顔を上げない君がひとり。
「ひぐっ、ぐぐっ……」
「シャツがぐちゃぐちゃになっちゃうよ」
なんて言っても、泣きやまない。
嗚咽が病室に響く。
そんなに泣かないでよ。なんて、思っても口に出せない言葉。
「ひっぐ、えぐ」
「じゃあさ、お話してあげる」
「うっぐ、う、……?」
泣きやみそうな君。
「君の好きだった話。 私の好きな、『あお色』のお話」
笑顔で語りかける。
もしかしたら、これがさいごかもしれないから。
「それじゃあ、はじまり、はじまり」
窓の外からは、蝉の声が聞こえた。
私の好きな季節が始まるのだろう。暑くて、だけれどその分、全てが輝いて見える季節が。
空は、澄んだ水色。