二人のセカイ
「まとめると、比呂先輩は叶野を捨てて一人幸せになっちゃって、叶野は比呂先輩を忘れられなくて、晶はそんな野郎二人に振り回されてるけど、叶野が好きなのね」
昼休みの長い長い昔話の後、優希は少々呆れ気味にそうコメントした。
優希は昼食のコロッケサンドを食べ終え、オレンジジュースの紙パックを潰しにかかっている。
一方聞かれるままに話し続けていた晶は、手つかずだった卵サンドをようやく口に運び始めた。
「まとめるとそんな感じだね」
サンドイッチを租借し終え、晶が返す。
「何ていうか、ややこしい奴に恋してるんだね、晶は」
「そうかもしれないね。しかも今の状態を続けたとしても誰も救われない可能性の方が高い」
ミルクティで残りの卵サンドを流し込んだ晶は「それにしても、これってそもそも恋なのかなあ」と他人事のような事を口にした。
「自分で言うな。」とすぐさま突っ込みを入れた優希は困ったように続けた。
「そこまで解ってて、何でやめないの?」
「いや、ヨリ戻したいって思ってるわけじゃないんだよね。ただ、あんなぼろぼろのこーすけ君を放っておきたくないだけで」
「そういうもんなの?」
理解しがたいなあと優希は首をかしげた。
「そういうもん、かな。こーすけ君とは友達期間は長いから、何考えてるかなんとなくわかるんだ。辛すぎて誰かに甘えたいのも、だからと言って、あたしのこと好きになることはないってことも。だけど、今は一緒に居たいんだ」
ぬるくなったミルクティを口にする。
「こーすけ君が、大切だから」
静かに、きっぱりと晶は言い切った。
「…どうしようもないなあ。私は叶野のクソ野郎も比呂先輩も大っ嫌いだから正直あんまり関わらないでほしいけどね。だけど、晶が一番納得できるっていうか、幸せになれる形で決着つけられるといいね」
「ほら、これ食べな」と優希は持っていたデザートのプリンを晶に手渡す。
晶は精一杯の笑顔で「ありがとう」とだけ答えた。