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明朝6時に  作者: 一華
7/11

セカイを眺めて

「また叶野のとこ行ってたの?」

 三限のゼミが終わると直ぐに同期の日下が晶の顔を覗き込むようにして尋ねてきた。

 晶は近すぎる顔を逸らし、そっけなく「そうだけど」とだけ返した。

「あのさ晶、もう叶野のとこ行くの止めなよ」

「それはあたしが決めることだよ。日下には関係ないことでしょう」

「関係ないけど傍観したくないんだよ。なあ晶、お願いだから俺の話聞いてよ」

「…日下、ここゼミ室。皆びっくりしてる」

 興奮気味の日下の声はよく響いた。

 周囲を見渡すと同期のゼミ生たちが何事かと二人を見ている。

 周囲の視線に気づいた日下は、バツが悪そうに眉間に皺を寄せた。


「でも」

 と日下は尚も小さく言葉を続けた。

「もう別れて二年も経つのに、今更何だっていうんだよ。恋人に振られたからって何で元カノに甘えられるんだよ」

 そう言ったきり、日下は俯いてしまった。

 言いたいことを全部言ってしまうと、それっきり黙り込んでしまうのは日下の悪い癖だ。

 大学一年の時、晶に告白してきた頃からそういう日下の態度は何ら変わっていなかった。

 俯いていた顔を、日下は晶に向けた。その眼は期待を含んでいたが、晶は首を縦に振ることはしなかった。


「航、あんたいい加減にしなよ」

 晶の後ろから、同期の優希が日下を咎める声がした。

「何で優希がそんなこと言うわけ。誰が見てもおかしいだろ、この状況は」

「だから何。晶が何してようとあんたには何の関係も無いって言ってんの。でかい声で騒ぎ立てて、うざいって言ってるの。解らない?」

 優希が「ほらもう行くよ」と晶の腕を引っ張ってゼミ室を出ようとする。

 焦って荷物をまとめた晶が「日下」と振り返って声をかけた。

「ごめんね、心配かけて。だけど、暫くそっとしておいて」

 優希に引っ張られるまま、晶はゼミ室を後にした。


「ごめんね、航がうざくて」

「大丈夫だよ、気にしないで」

「いや私は気にするよ。幼馴染ながら何であんなにうざいかな」

 眉間にしわを寄せた優希に「言いすぎだよ」と晶は苦笑した。

「ところでさ、私は叶野と別れたところまでしか知らないんだよね」

 生協の陳列棚で昼食を選びながら、優希が晶に問いかける。

「そうだったね。日下にはこーすけ君との通話聞かれちゃってばれちゃったんだけど、優希にはちゃんと話してなかったね」

「うん、出来れば手短に簡潔に頼む」

 会計を済ませ、ビニール袋をぶら下げた優希がにっこりと笑いかけた。

優希の後に続いた晶は、レジで商品を受け取ると「いや、長くなるかもですよ」と苦笑してみせた。


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