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明朝6時に  作者: 一華
3/11

セカイを混ぜる

 飲み会の翌日、晶はいつものように美術部の部室に向かった。

 康介との一件で、部室に行くのは少々躊躇われたが、あれだけ呑んでいれば記憶も飛んでいるだろう、と晶は高をくくっていた。


「お疲れ晶さん。昨日はご迷惑おかけしました」

「こーすけ君お疲れ様。昨日相当呑んでたけど大丈夫?記憶飛んだりしてる?」

「大丈夫です。記憶もちゃんと有るので。ただ、恥ずかしいので昨日の俺の醜態は忘れてくれると有難い、かな」

 淡々と、でもいつもより口数の多い康介を見て晶は「わかった」と苦笑する。

 

 しかし、康介の話はここで終わりではなかった。

「でも、最後に言ったことは嘘じゃないので、それだけは、なかったことにはしないで貰えると嬉しいです」

「え?…あ…はい」

 歯切れ悪く晶が返事をする。


 すこし長めの前髪から除く鋭い目が、晶を見つめていた。

「で、返事は?」


「…よろしくお願いします」

 消えそうな声で言った晶が康介の顔を見遣ると、康介は満足そうに笑った。




「まあ付き合うといっても、今までとあんまり変わらないと思う。晶さんには晶さんのやりたいことやって欲しいし」

「うん、あたしもこーすけ君には自分のこと優先して欲しいかな。無理とかして欲しくないし」

「わかった。でも、俺ほんとマイペースだから、嫌なことあったらすぐ言って?」

「うん、こーすけ君もね」

 売店で買ったミルクティを飲みながら、晶は康介の顔を覗き見る。

「…『康介君』」

「何、どうしたの?」

「前に優希に『こーすけ』って間延びした呼び方するのは馬鹿っぽいからやめろって怒られたの。だから」

「これを機に直そうかと」と晶が言うと、康介は笑って晶の頭を撫でた。

「俺は、好きだけどね。その呼び方。」

「ほんとに?」

 晶は自分の喋り方があまり賢そうには聞こえないことを知っている。

 きちんとしなくてはいけないと思うものの、「そのうちに」を繰り返し数年が経ってしまった。

「うん。だから気にしないで。晶さんはそのままで居てよ」

 康介のやさしい声に、『そのうち』が来るのがまた伸びてしまいそうだなあと、晶はふにゃりと笑った。


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