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第二十九話 困った時は召喚を


「ちょ、ちょっ、ちょっと待て!落ち着こう?話し合おう!!」


同じようなセリフを少し前に言ったなとか思いながら、またひたすら走る。

後ろを振り向けば、カイン(?)と幽霊達が追いかけて来る。


あー、それにしても。

カインは乗り移られたのか、死んだのか、態とああいう演技をしているのか。

どれも有り得そうで怖いな。


乗り移られたにしてもさ、絶対やり取りがあったと思うんだよね。


「はっ?…ってうわ!」


そう、この時。

幽霊の一人が駆け寄ったじゃない?


実はさ、案外フレンドリーな奴で、カインを心配してくれたんじゃないかと思うんだよね。

よし、名前はフレディ(仮)にしよう。


フレディ曰く。

「転びましたけど、大丈夫ですか?」

「うわっ!…喋れるのか?」


驚くカインに、フレディはこう言うに違いない。


「唸ることが出来るんですから喋れますよ」

「成程…。にしてもあいつ、よくも餌にしようとしたな…」

「復讐、手伝いましょうか?」


****


「こっから死亡フラグに突入したのか、二人のドッキリ大作戦なのか…。どちらにしても達が悪いな」

「よく分かりませんが、一応私の名前、フレディになってるんですね。やけに幽霊というか、私達をフレンドリーな設定にさせようとしてますね」

「そうでも考えとかないと、やってけないんだよ!…って、君、何か速くない?そんな、足速かったっけ?」


肩を並べて走る偽カインを見て、目を瞬かせる。

偽カインは気にする風でもなく、平然と答えた。


「はい。鎧脱ぎました。重かったので」

「成程。その勢いで還ってくれないか?君がリーダー格だろ」

「いえいえ…皆、下っ端です。我が本の主に、大総統から御忠告を頼まれまして…。驚かしついでに」


因みに大総統は、僕が持っている『沈黙の書』の一番偉く強い本の悪魔。

大総統と呼ばれ、親しまれている。

…此処の住民達は、何故かそういうのに親しみを持つんだよね。吉田魔王様然り、大総統然り。


「選択の時が来た。ということでして…」

「ごめん。話内容と、君の今の行動がいまいち分からない。攻撃するのか、伝言伝えるのかどっちかにしてくれ」


偽カインは普通に話しながら魔方陣で僕を消しかけようとしてくる。

話しながら、攻撃なんて器用だな。フレディ。


「だから、自分が如何に無力だと思い知れ…だとか何とか。他にも何か言ってたけど、忘れました」

「伝言はしっかり覚えとこうか、フレディ」


「実は僕、ディスビアという名前があるとか、ないとか…」

「そういう事は先に言おう!?フレディより全然カッコいいじゃないかっ!」

「いや…折角主に名を貰ったんで、改名しようかと…」

「止めてっ!からかわれるから、絶対!」


それじゃあ、さようなら~とフレディことディスビアは姿を消した。

ガタンッ…と真っ黒な杖が落ちる。

如何にも魔術師が使ってますよーみたいな、人を呪い殺せそうな杖だ。

先端が三日月型になっており、どういう原理で浮いているのか不明だが、赤い水晶の様なものがある。


「あー、杖、出来たんだー」

「何が、あー、杖、出来たんだーだよ!人を餌にしやがって!」

「良かった良かった、カイン、乗り移られてただけなんだね。一件落着じゃない」


カインが重い溜息を吐く。

そして、呆れたように僕を見た。僕もドヤ顔で返す。


「…何が、一件落着だ。何で、寝起き早々囲まれてるんだ?」

「ふっふっふっ…。僕もさっき気付いた。皆さん、ミケガサキ兵だよね?…ご臨終済みの」


追いかけっこで全然視界に入らなかったけど、ずっと息を潜めて草原に隠れていたのは何となく分かってた。まぁ、確認のためカインを転ばせてみたんだけど。


「じゃあ、何故、死体兵が動いてんだ?お前みたいに黒魔術が使える魔術師はいないぞ?

…にしても、よく悲鳴あげないな。見直したぞ」

「あまり僕をなめないでくれたまえ。怖くて叫ぶことが出来ない。それ以前に、足に力が入らない」

「今すぐ前言撤回して、見下してやる。バーカ」


死体兵さん達は、剣を握ってじりじりと近付いて来る。

何で朝からこんなに怖い思いしなきゃいけないんだろね。


「…死んで、動いてるってことは何らかの術が施されてるわけだよな。それ以前に、俺達の所に来てるってことは、当然吉田様達のところにも行ってる訳か」

「『魔眼』で見る限りは、特に術を施された訳じゃないみたい。けど、中心に魔力に似てるけど少し違う…いや、混じってるのか。遥かに力の強い結晶がある。それが動かしてるんだね。桑原、桑原…。

そんじゃ、杖のでき具合を確かめるとしますか」


とりあえず、もう少しで手が届きそうなくらい近付いてきた死体兵を杖で突く。

場所が悪かったのか、勢いが強すぎたのか。…もしかしたら、両方かもしれない。頭がもげた。


「ぎゃああああああっ!とれた!ひぃいぃぃぃいぃいい…!動いてる!」

「煩い!頭なんぞ突くからそうなるんだ!死体なんだからそうなるだろ!」

「分かってんだったら、言えよ!夢に出てきたらどうしてくれんだ!いや、絶対に出るだろ!」


ポロって!あっさりと!案外、繊細だった!敵だけど何か、ごめんね!?


ボウッ…と杖の先端の玉が淡く光る。

不気味で、綺麗な赤色に。生命の色に。死の色に。


「『ビィーネの業炎』!!」


カンッ…と杖を振り上げ、地面を突く。

そこから魔法陣『ビィーネの業炎』が発生して、辺りを火の海へと還した。

死体兵も灰となり、火の粉と踊り狂って何処かへ消える。


あー、真っ赤だわー。


「おい、馬鹿」

「へい、何でしょ?」

「どうやって此処から脱出するおつもりで?」


辺りは火の海。

当然、僕らもその中にいる。つまりは、閉じ込められてる訳でして。


「飛んでみるとか…?」

「天国までか?よし、今すぐ逝け。そして天使か何か呼んできて俺を助けろ」


その言葉に僕は不敵に笑う。

そう。僕の十八番があるじゃないか。


「それじゃあ、困った時の吉田頼みと行きますか」

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