第十五話 指名手配
どうも、またまた田中優真です。
そろそろこの下りにも飽きてきた今日この頃。
「姫様ぁぁぁー!」
「きゃあああっ!」
事件発生です。
ノーイさんが、乙女の部屋に侵入。
数秒後、謎の変態死を遂げた。
顔は蜂の巣のように腫れ上がり、体には無数の痣が確認された。
しかし、その城に居合わせた全員にアリバイあり。
結局、凶器は見つからず、犯人の目星はたっていないまま、事件は未解決のまま幕を閉じた。
「コラコラ、人で遊ぶな。しかも、変態死じゃなくて変死体だろ」
「この場合、二つとも当て嵌まるから良いんじゃないの?」
そうだなと、あっさり頷くカイン。
『ノーイ、朝から何を騒いでいるんだ』
部屋の前で騒いでいると、吉田魔王様がやってきた。
「ロリコン夜遣い未遂事件とでも題しとく?」
『ほぅ…。娘に手を出したか。ノーイよ』
「ち、違…」
「連続変態死事件にした方がしっくりくるな」
カインが一人でに呟き、悲痛な悲鳴が響いた。
『実に清々しい朝だな。なぁ、ノーイよ』
「はい。そうでございますね…」
清々しさの欠片も無い顔面でノーイさんが言う。
そうだな、例えるならお菊さんと言ったところか。
お化け屋敷の作業員として文句なしの顔である。
『さて、勇者よ。国のことはどれくらいご存じだ?』
「何で、敬語なの。…全くと言って良いほど知らないかな。まだ来て一週間くらいだからね」
……というわけで、どういう訳か図書室にいます。
まずは各国のことを知れということらしい。
しかし、各国のことを知るも何も、君が殆ど侵略しちゃったでしょうが。
何故か、カインもついてきました。
僕ってそんなに信用ない?
ちなみに教官とオズさんは城内の見回りとか、ノワールと一緒に買い物とか。
既に敵地であることを忘れ、満喫してますよ。
…敵地というよりかは適地なのかもしれないけど。
まぁ、ぼちぼち進めて行きましょうか。
****
国は、五つあった。
『ラグド王国』
独裁政治で、治安が悪く、内部崩壊も時間の問題だったらしい。
軍事国家で、武器の扱いには長けていたとか。
最初に魔武器を作ったのはラグド王国だった。
『フェラ王国』
どいつもナルシスト。常に他国を下等の人種だと思い、それは酷い扱いだったそうだ。
美形が多いらしい。魔術に長けていた。
『ミリュニス王国』
『魔力魂』を開発した国。国民全員が魔族。
科学やオカルトが発展した国で、今は闇に堕ちた。つまり、今いる国こそ元・ミリェニス王国という訳だ。『マフィネス王国』
『魔力魂』を武力を持って奪おうとした国で、ミリェニス王国を攻撃したことから長きにわたる他国を巻き込んだ資源戦争開戦の火種。今でも恨む者が多いが、魔軍によって滅ぼされた。
『ミケガサキ王国』
打倒魔族を掲げ他国と同盟を結び、急激な発展を遂げた国。
『勇者召喚』や、女神の誕生はつい数年前のことらしい。
ミケガサキを除く四国を簡単に言ってしまえば、独政、ナルシー、開発、開戦か。
事の始まりは、やはり『資源の枯渇』。
新エネルギー開発が思う様に進まなかった各国は、ついにその事態に直面してしまったらしい。
此処での『資源』は、僕の世界の様に鉄とかそういう類では無い様だ。
どうにも、此処での『資源』は良く分からないが魔力同等の何からしい。
しかし、ミリェニス王国は新たな資源の開発に成功していたらしいが、何故がそれを活用しようとしなかった。どうやら、新資源の独占だろうということで、それを知ったマフィネス王国を筆頭に全世界を巻き込んだ『資源戦争』が始まる。
最初に仕掛けたのは、マフィネス王国だが返り討ちに遭い、全て滅ぼされた。
しかし、他国と連合を組んだミケガサキ王国により、資源の一部…つまり『魔力魂』を奪われたということらしい。
しかし、そのおかげで今のミケガサキが成り立っている訳だし。
だが、あの吉田魔王魔が理由なしに資源の独占なんてする筈がない。
「カイン、この『資源戦争』って、何が理由で幕引きしたの?」
「『魔力魂』さえ手に入れば、これ以上の戦は無益だろ?だからじゃないか?まぁ、戦力が尽きてきたというのも一あるかもしれないが…」
「この時の国のリーダーって誰?」
「丁度、同盟を結んだし、ミケガサキの前国王様が何処かに逃げたんでな。フェラ王国の預言者を国王としたんだ。今の女神様の母だったかな…」
うむむむ…。やけに引き際があっさりじゃないか。有り得ない。
『完膚なきまでに叩きのめす』があの血筋の性なのに。
「優真様ー、大変です!」
「ん?どうしたの、ノワール」
ノワールが血相を変えて走って来た。
後から紙袋をたくさん持ったノーイさんと、教官が現れる。
そのまま引っ張られる様にして広間へ着いた。
「で、何が大変なの?」
『これを見ろ』
水晶の様な丸い透明な玉が光を放っている。
その光の差す方向には涎を垂らし、寝ている僕の顔がでかでかと映し出されていた。
いつ撮った、こんな写真。
あぁ、生徒手帳からか。
………まさか、これ、全国放送?
「勇者は、闇へ堕ちました。私は、女神の名のもとに責任を持って彼を始末せねばなりませんっ!
皆さま、御協力下さい!今こそ、悪を潰す時。時は満ちたのです…!」
そこには、何故か武装した由香子様が立っていた。
…にしても、悪を潰す時と来ましたか。せめて倒すにしてほしかった。
「………つまり、これ指名手配?僕だけ?」
『あぁ。お前だけ。今、この時を以って、お前は全国民の敵となった。良かったな、仲間だ』
「当初の目的と大分ズレていると感じるのは僕だけだろうか…?」
そんな感じで、勇者は指名手配されました。
「ちなみに、懸賞金とかってあるの?」
『いや、お前の場合、捕まえてもタダだ』
「……わーい、お金で買えない価値がある」
少し、虚しいとも思う今日この頃です。