第二十四話 虚実と真実
「―役者は揃いました。…さて、何から話しましょうか?」
真っ白な空間に真っ赤な女が一人。その傍らには死体が転がっている。
血のように赤い髪が特徴のラグド王国屈指の暗殺者、ミカ・エバン。しかし、今目の前にいる彼女はミカ・エバンではなく、ミケガサキの守護神である。
「質問しても良いですか?」
「どうぞ」
「女神様って呼んでおきながらなんですけど、貴女は本当に女神様ですか?」
「愚問ですね、勇者・魔王・ニート・ドM優真」
優雅かつ爽やかな笑みを浮かべ、嫁いびりを何よりの生き甲斐にしている小姑さながらの陰険さを露骨に示してきた。
「大丈夫、本物だ」
「何、清々しい顔で享受してるんです…?貴方の頭の方が大丈夫じゃないと思いますよ、影の王…。それともう一つ。此処は地下とは違う空間のようですが、一体何処ですか…?」
「此処は『核』の内部…と言っても、まだ外核。中枢はまだ先ですよ。あまり時間もないことですし、取り敢えず質問はここまでにして本題に入りましょうか。聞きたいことも沢山あるでしょうし、何から話すべきか迷いますが、やはり、順序通り話すのが手っ取り早いのでしょうね。大方、彼に基礎的なことは伝えられていると思いますが、確認を兼ねて、ということで」
そう言うと女神様は笑みを消し、慈愛に満ちた声から神としての威厳ある鋭い声で僕の名前を呼ぶ。
「―田中優真」
「は、はいっ」
「今一度貴方に問います。真実を知る覚悟はありますか?」
絶対的な存在を前に並々ならぬプレッシャーを感じながら口を開く。
「…正直なところ、覚悟があるのかどうか分かりません」
「……………。」
―そもそも、真実とは何か?
真実とは嘘があってこそ成り立つものである。そこに嘘がないなら、それは真実ではなく、単なる事実だ。知れば後戻りは出来ない。どちらも等しく質の悪い代物である。
「ですが、全て受け入れようと思います」
すると、能面のような表情を一変させ、女神様は微笑んだ。
「いいでしょう。―遠い昔。まだこの世界が、まだ不確定で今のように闇に包まれていた頃。後に『神々の黄昏』と呼ばれた悪魔の侵略により、この世界は彼等知恵の悪魔の領土となりました」
「ん?ちょっと待って。フレディの話じゃ、彼等の侵略により一面の闇と化したって…」
「成程、貴方はそのように話したのですね。…そもそも生まれたばかりの世界というのは、『闇』なのです。私もそこから生まれました」
意味ありげな笑みを浮かべ、女神様はフレディを見たが彼はそっぽを向いていた。
「あー…、鳶が鷹を生むってやつ?」「貴方の頭なら、その程度の認識で結構です」
フレディといい女神様といい、呼吸をするようにさらりと非道いことをいう。それに慣れている自分も自分だが。
「要するに、人間の性別と同じような仕組みです…。身篭った段階では、男か女かはまだ分からないでしょう…?」
「へ、へぇ〜」
色々と生物学的用語を使わなかったのは、僕の頭では到底理解出来ないと分かりきった上でのかみ砕いた説明なのだろう。
しかし、僕は性別は最初から決定しているものだと思っていたのでそれ以前の問題だ。案の定、フレディは軽蔑の眼差しを送りつつ鼻で笑う。
「―彼等がこの世界を支配してしまったことで、この世界の創造は止まってしまいました。
別に、悪魔である彼ならば闇の世界でも問題はありません。しかし、彼は退屈を嫌いました」
女神様の双眸がフレディを射止める。
「…フレディ。何だ、君その時既にいたのか」
「何を言いますか、馬鹿。彼が、知恵の悪魔そのものなのですよ?」
死霊に魔王に知恵の悪魔。この肩書きの多さは称賛に値する。なおかつ、それが死霊から始まり、悪魔まで行き着いたのなら尊敬さえしていただろう。
だが、仮に女神様の話が本当だとするなら、彼は実に華麗なる降格を遂げている訳だ。まぁ、ある種尊敬しないこともない。
しかし、目糞鼻糞を笑うというもので、よくよく考えてみれば僕も勇者からその対極なる魔王に転身しているんだった。
「なら、僕が今まで会っていた大総統なる者は?」
「それは言わば、影武者なのです。その男こそ、本物の知恵の悪魔。今は力の大半を失い死霊と成り果てているため、代わりに影武者が王となっているのですよね?」
冷ややかで威圧的。問い掛けは最早質問ではなく、確認を促していた。
フレディへの詰問にも等しい史実のなぞらえに単に同情したのか、はたまた呼称が馬鹿に変わったことへの細やかな抵抗なのか。どちらにせよ、乗り掛かった船とはいえ既に論破され沈没間際。というか、歯牙にもかけられていない様子だ。
「確かに、昔は知恵の悪魔と呼ばれていましたし、そのことに関して否定をするつもりはありませんよ…」
「何故、最下級の死霊にまでなるほど力を失ったんだ?それに、僕にそんな隠し事をして何か利益が出るわけもないだろう?」
「そう何でも質問すれば、必ずしも答えが返ってくる訳ではありませんよ…。その内、分かります…」
ぼそりとバツが悪そうにフレディは呟く。女神様の御前だからか単に後ろめたいことがあるのか、いつもの毒舌は影を潜めている。
「それもそうですね。彼が何者であるかなど些細なこと。では、話を元に戻しましょうか。
何よりも退屈なのを嫌った彼は、創造の止まったこの世界を自ら創造したのです。まずは自分の眷属を、次に天地を、そして生き物を。そうして世界が息吹いた時、彼は私を復活させ、私に人々の担い手となるよう命じました。何せ彼等は、まだ生まれて間もなく、何の知識も持ち合わせていない。それから数百年の間、私は人々の守護神として見守ってきたのです。…彼等が神を捨てるまで」
積年の恨みというより、まるでグレた我が子を嘆く母親のような口ぶりだ。
「何、悲劇のヒロインを気取っているのです…?その口ぶりからして、信仰と支配を貴女は同一視しているようですが、貴女はただの担い手であり、それ以上でも以下でもない…。まるで子離れが出来ていない母親じゃありませんか…。そんなに神聖視されたいなら魔王にでも転職すればいい…」
「フレディは此処を略奪はしたけど、何故、支配はしなかったんだ?」
「面倒ですし、ただ当時の流行に乗って略奪しただけですからね…。ちょうど、退屈していましたし…」
そんな軽いノリで略奪された世界が不憫でならない。
「教官の話では、『加護の薄れた世界では人々の傲慢や猜疑心、嫉妬や妬みが世に蔓延り、魔を生み出した』というけど、それはつまり、加護が薄れたことにより今みたいな状態になったのか?」
「それは…」
珍しくフレディが言い淀む。たどたどしくも二の句を次ごうとした彼を遮り、女神様が頷いた。
「はい。しかし、些か語弊があるようですね。貴方は今、『魔』を生み出したと言いましたが、正確には、彼等は『魔』と化したのです」
「魔と、化す…?」
真っ白な空間が急速に暗闇包まれていく。それが眩暈を起こしているからだと気付くのにしばらくの時間を要した。
「貴方が此処へ来るまでの道中殺してきた魔獣は全て、ミケガサキに住まう人間の成れの果てなのですよ」
「じゃあ、魔を生み出したのではなく、最初から…」
―魔そのものだったのか。
足元が崩れるような絶望を感じながら、恐る恐る自らの魔獣の血に染まった手を見、その場にへたり込む。
―『プログラム化』。
一定の条件が何らかの形で満たされた時、プログラムは発動する。
だが、それを本人は絶対的な善行と思い込み、自分の意思で行動していると錯覚…もしくは、誤認しているだけで、本当は刷り込まれた筋書きを実行しているだけだ。
吉田さんの言葉が頭の中で延々と呪いのように反響する。
筋書き通りに、"世界を救う"ため『勇者』として此処に来た。そして、『魔王』して皆を殺して回った。
思えば、何故僕はあんなに殺すことに執着していたのだろう?
全て殺す必要なんてないのは明らかで、何とかして撒けばもっと早く着いていたたかもしれないのに。
「…何で、黙ってた?」
責めるつもりは毛頭ないのに、声色がそうなってしまう。
フレディは深呼吸するかのように深く息を吐く。
「こうなるのが分かっていたからです…」
「…背負わせて悪かった。ありがとう。話を、続けてくれ」
フレディは一つ頷き、説明を続けた。
「私は悪魔であり、神ではありません…。私に出来ることは、闇を形作る容れ物を造ることでした…」
「それが、『器』…」
うわ言のように呟くと、フレディは静かに頷いた。
「彼等は、自身が魔であることを知りません…。最初から人間の形をしているのだから当然のことでしょう…。
奇しくも、魔であると知らないからこそ、その力は無意識に封じられていましたが、どんな器も容量を超えれば中の水は零れてしまうように、心理…精神的に極端な負荷がかかるとそれがトリガーとなり、魔となってしまう…。そうなれば完全に理性は本能に埋もれ、二度と元には戻れません…。殺すしか手がないのです…。あの時もそうでした…」
過去に思いを馳せるその顔は何処か淋しそうだ。
自ら創造したものを壊すというのがどれ程辛いのか今なら分かる。
「神の加護はそれの歯止め…言わば蓋の役割を果たしていたのです…。
しかし、人々が神への敬愛、そしてその加護を自らの意思で不要と見做してしまった以上、神というものはそれも一つの答えとして尊重しますから、この世界の全人類が加護を必要としない限りはどうしようもないのです…。その女神様も、人々がその存在を軽んじたため、不要と見做され消えてしまいました…」
「神の加護って言うけど、その神は女神様のことを指してるわけ?」
「いいえ、神は神です…。女神様は神の代行人みたいなものですよ…。私が言うのもなんですが、延長コードみたいな役割の存在です…」
もっとマシな例えはなかったのだろうか。何とも微妙な例えである。
「―魔王が世界を支配し、地上の生きとし生けるもの全てが死に絶えたとあるけど、本当に死に絶えたならこの話が後世に伝わる訳無い。まさかとは思うけど、フレディが広めたわけじゃないだろう?」
「勿論…。生きとし生けるもの全てとありますが、一部例外がいました…。さて問題です、影の王…。高い地位に座する傲慢な者共というのは私以上に面倒臭がる…。そこで彼等が利用したものは何でしょうか…?」
「奴隷か」
「ご名答…。奴隷として使役されていた彼等が魔獣にならなかったのは奇跡としか言いようがありません…。こんな言い方は良くありませんが、底辺を乗り越えた者だからこそなのかのかもしれませんね…。
通称オリジナルと呼んでいたミケガサキ国民はその子孫にあたります…。この話は彼等からの視点で語り継がれたものでしょう…。
見方によっては、私が魔獣を従えているようにも見えなくもないのかもしれません…」
「その後、天から降り注いだ光が闇を打ち消し、魔王共々浄化した。光は地上に降り注ぎ、それにより魔王によって滅ぼされた生き物全てが息を吹き返したというとある。それは?」
「大体見当がついているでしょう…?光の救済とはお察しの通り、『リンクシステム』です…。
いくら魔獣化しなかったとはいえ、今後ならないという絶対的な保証はありません…。事実、それを裏付けるかのように、一部には魔力が備わっていましたから…。システムの導入は駄目元でしたが、見事、応急処置の役割を果たしてくれました…」
「一部に魔力が備わっていたということは、それは魔獣化への兆候なんじゃないのか?」
「私も最初はそう思いましたが、違いました…。よもや自身が魔だと認識した訳ではないでしょうが、魔という存在の認識が原因なのか分かりませんけど、自身に眠る魔としての無意識に知覚し、引き出していると言いようがありません…。それから今に至るまで、まだ力を完全に引き出せている訳ではありませんが、力を掌握し、コントロールしている…。これは目覚ましい進歩です…。
出来ることなら、近くでその経過を観察したいのは山々でしたが、残された人々が私達に好感を抱いていないのは明らかでしたので、影の世界で見守っていくことにしたのです…。
ですが我々も油断していまして、『リンクシステム』が今の様に作用する可能性があると分かっていながら気付いた時には『沈黙の書』に封じられてしまいました…」
「白々しい…」
女神様が冷ややかに呟く。それをフレディは鼻で笑って一蹴する。
「そうそう…。貴方が前に疑問に思っていた二つの事柄…。
まず一つ。女神様と勇者が後付けされた件ですが、今の話を聞けば分かったと思いますけど、まぁ、魔王は蓋を開ければフレディであり、別にガチな魔王ではないということ…。
『勇者撲滅』というクソたわけたゲームを媒体に勇者なる罪人が召喚されると共に、恐らくは王道設定という景気付けのために女神様を復活させたんでしょうね…。貴方が思うほど深いものではありません…」
「国はどうなんだ?マフィネスと似通った部分がある。なら、わざわざ国を分かつ必要なんてないと思うけど」
「いいえ」
切羽詰まったような女神様の声が真っ白な空間に響き渡る。
「この国は他の国とは違うのです。私の存在がその証明になっているでしょう?」
人々に必要とされない神は消える。しかし、此処に女神様が具現しているということはすなわち、必要とされたということだ。
「女神様への信仰…」
「はい。この国には最初から王はいません。魔力を手にした代行人と呼ばれる彼等にとっては神に代わる人間が現れたことにより、私の存在は本当に消滅間際でしたが、ある一人の代行人と指の数ほどの人々だけは違いました」
魔力を持った代行人達は、魔法陣という魔力を用いてその力を具現させる式を生み出した。やがて代行人達はそれを独占し、不動の地位を確立させようと競い合い、最終的に袂を分かれた。
ほとんどの代行人が、自らを絶対的な支配者として疑わず、前と大差ない社会を築いていくのだが、女神様への信仰を第一にしていたその代行人一派は違ったらしい。
「その代行人は本当に心の優しい娘でした。大半の代行人はその力を誇示し、労働は支持者に任せ必要最低限のことしかしなかったのに比べ、彼女は支持者と同じ目線に立ち、決して地位というものにこだわらなかった」
例え魔力がない人でも魔術の知識を教え、共に新たな魔術の開発に勤しんだという。
毎日、女神様への祝詞を唱え、供物を捧げた。それが三年ほど続き、いつしか女神様は具現できなくとも、声を聞かせるくらいにはその存在を示せるようになっていた。
「声を民に聞かせた時、彼女達は涙を流し喜んでくれました。しかし、今思えば私は何と浅はかな行いをしてしまったのでしょう…。そのせいで、あの娘を死なせてしまった」
「どういうこと?」
「…私がその存在を示したことにより彼女達は喜びましたが、何故姿を現さないのかと尋ねられました。
事情を話すと、彼女は嬉々とした表情でこう言うのです。―ならば私の体をお使い下さいと」
女神様の魂が、例え肉体が朽ちても不死鳥のように新たな肉体に宿るのも、その時の魔術の効果らしい。
空間魔術を遥かに凌駕する最高難易度の魔術であることは間違いないだろう。
魔術において最も重要視されるのは魔術の知恵、つまり世の理の理解と魔力である。
ミケガサキ国民の始祖は、それをほぼ理解していたということだろうか。
「―守護神として、長きにわたりこの国の行く末を見守ってきました。
『リンクシステム』が全て悪いのではありません。ただ薬として作用していたものを毒に変えてしまっただけ。
その開発者、神崎という男も、最初はただ家族を生き返らせたかった。それだけです。しかし、一を手にすれば十を求めるもの。人の欲に際限はありません。
この男も、同じ。悲しみに耐えれなかった。だからといってこのような暴挙に出たのではありませんよ。彼は中途半端に事を知ってしまいました。
だからといって、守護神である以上、みすみすこの世界を終わらせるわけにはいきません。ですが勘違いしないで下さいね。この男は私が殺したのではありませんよ」
困ったように女神様は足元に転がるゼリアの死体に目をやった。
「―田中優真」
「はい」
「恋が人を狂わせるのではありません。ならば、何が人を狂わせると思いますか?」
「それは…。分かりません…」
答えが皆目見当もつかない問い掛けに対し、何を返すべきか迷った挙げ句、正直に答えた。女神様は穏やかに微笑む。
「孤独です」
「孤独…」
オウム返しに呟くと、女神様は静かに頷いた。
「何と悲しく愚かしい世界なのでしょうか。何と愛おしく美しい世界なのでしょうか。
私はこの世界の全てを愛します。その罪も、滅びさえも受け入れましょう。それと同様に救いも。
哀れな彼等をどうか赦してあげて下さいね。私から言えるのは此処までです」
「此処までって…」
「もう時間がありません。『核』の制御は貴方にしか出来ないことです」
有無を言わせぬきっぱりとした口調で女神様は言い放つ。それから僕の内面を見透かしたように、優しい笑みを浮かべた。
その姿がどんどん白に埋もれていく。まるで深い霧の中にいるようだ。何も見えない。
「フレディ?」
「背後にいます…」
振り返ると確かにいた。気配がまるでない。
「幽霊か、お前は」
「何せ、死霊ですからね…。大丈夫、動かずとも向こうから案内してくれているみたいです…」
「向こうから案内してくれているって…。まさか、魔力魂の意志みたく、『核』にも意志があるのか?」
『―それは行けば分かります』
女神様とはまた違う、凛々しくも温かみのある優しい声がした。ふわりとチェリーの甘酸っぱい香りが鼻孔をかすめる。桜色の長い髪が視界を覆った。病人のような真っ白な肌。体は幽霊のように透き通っている。
いつの間にか目の前には見知らぬ、しかし何処か懐かしいさを感じさせる女性が浮かんでいた。
『初めまして、なのでしょうね。私はアリア・リンク。前の女神の更に前の女神です』
「貴女でしたか…。ゼリアの魂を抜き取ったのは…」
「抜き取っ…!?というかリンクって、ゼリーさんの…」
『妻です』
頬を赤く染めながらアリアさんはとんでもないことを暴露した。
『…すみません。ああするしか、彼を止めることが出来なかった。今の私は、死して女神様の魂の下を離れた本来のアリア・リンクです。訳あって…だと思うのですが、何故か核の一部と化してしまっているんですよ。
それにより生まれ変わることは出来ませんでしたが、こうして貴方を案内出来ているのだから、これも神様が与えたもうた使命なのでしょうね』
「核の一部なら、何とか出来なかったのですか?」
僕の言葉にアリアさんは叱られた仔犬のようにしゅんとする。
『ごめんなさい…。今の私にはどうすることも…。核の一部となってしまった以上、私も支配下に置かれているため手出しが出来ないんです』
そして僕等に背を向けた。
『―…着きました。此処が中心部です。そして、アレが『核』です』
そう言って彼女は一歩横にずれる。
それを視認した途端、戦慄が走った。膝がガタガタと震える。喉の奥から嗚咽にも似た悲鳴が絞り出そうだ。
そこに浮かんでいたものは――。
「何で、こんなものが…。一体、誰の…?」
次回が最終話になります。