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明くる日のねこ

作者: NEKO
掲載日:2026/02/22

本日は【ねこ】の日らしい。

「2/22」が「2(にゃん)2(にゃん)2(にゃん)」と読める語呂合わせから、とのこと。

実にくだらない。

故に、何もするつもりはなかったが。

せっかく思い立ったのだから。

書こうかと。

およそ1時間で書き上げた超短編『明くる日のねこ』

お気に召したら幸い。


NEKO

「にゃー」

 声がした方向に、ふと視線を送ると、一匹の猫がいた。

その猫が私を見ていたのかどうかは、分からない。

塀の上に座り、前脚を揃え、尻尾を体に巻きつけているだけだ。

通りかかった私の方に顔を向けて声を発したのも、偶然だったのかもしれない。

夜の暗がりでは、視線の向きなんて簡単に勘違える。

猫は白と黒のまだらで、首輪はなかった。汚れているわけでも、痩せているわけでもない。どこにでもいる、ごく普通の猫だ。私はそう判断して、足を止めなかった。

 それから数日間、猫は同じ場所にいた。

集合住宅の一室である、私の家の前。

街灯がちかちかと点滅し、夜になると影が明暗を繰り返す場所だ。

猫はそこに座っているだけで、眠るでもなく、話すわけでもなく、体勢を変えながら時間を過ごしていた。

邪魔だと思った。

帰宅が遅い日は足元が見えにくく、気を遣う。

蹴ってしまわないよう、無意識に歩幅を調整する。

私が近づいても猫は逃げなかった。動じる気配もない。

 管理会社に連絡するほどのことでもないだろう。

野良猫が入り浸ることは、珍しくない。

誰かが餌をやれば、しばらく居つく。それだけの話だ。

 あの夜も、私はそう思っていた。

 深夜、仕事から帰ると、猫がいた。

否。いつもより近い位置だった。

家の扉の前に、まるで先に来て待っていたように。

ふと、家の中から音がした。

夜の静寂の中でなければ気づかないほどの、小さな音だ。

隣室や別の階から聞こえる生活音だと言われれば、そう聞こえなくもない。

水の音か、何かを落とした音か。

私は立ち止まり、鍵を握ったまま動けなかった。

猫も、その場から動かない。

額を伝う汗の冷たさで、ようやく我に返る。

私は恐る恐る扉に近づき、耳を寄せた。

金属の冷たさが、耳と頬に直接伝わる。

自分の鼓動と呼吸が騒がしく、音を探すのに時間がかかった。

再び、音がした。

今度ははっきりと、短く、切れるような音。

何かが壁に当たって止まったようだった。続きはない。

誰かがいるのか。いや、そんなはずはない。

だから私は、聞こえた音に意味を与えないことにした。

時計を見る。針は天辺を指している。

遅い時間だ。明日も仕事がある。今ここで余計なことを考えていても、仕方がない。

足元に視線を落とすと、猫がいた。

さっきと同じ場所で、同じ姿勢のまま。私の心の中で起きていることに、気づいているのかどうかは分からない。

中に入るしか、選択肢はなかった。

ドアノブに手を伸ばす。開かない。

握っていたものを思い出し、鍵穴に差し込む。

金属が擦れる音が、静寂の中でやけに大きく響いた。

その間、猫に話しかけられることは一度もなかった。

 街灯の光が差し込み、部屋の中が点滅する。

すぐには照明を点けなかった。奥から感じる気配が、完全に消えた気がしなかったからだ。

ありえない、と頭では分かっている。

鍵は掛かっていた。他に出入りできる入口もない。

それでも私は、いつもよりゆっくりと靴を脱いだ。

しばらくして、また音がした。

今度は連続して、低く、くぐもった音。何かを引きずるような音だった。

間違いなく、部屋の中に何か――誰かがいる。

「にゃー」

背後から声がした。振り返ると、猫がいた。

えい、ままよ。

私は部屋へと足を踏み入れた。

 結局、何も起きなかった。

 翌朝、辺りはいつも通りだった。

ただ、あの夜以降、猫だけが姿を消した。いつも同じ場所にいた、あの猫。

探すことはしなかった。突然現れて、突然消えた。ただそれだけだ。

出勤のため家を出て、鍵を閉める。ふと背中に視線を感じた気がしたが、振り返らなかった。振り返る理由が、もうなかったからだ。

 朝日は、今日も眩しい。


終わり

どうも!

今年の初投稿が、まさかの連載じゃなくて。

しかも、当日に思い立ったからという理由だけで超至急で書き上げられた、超短編という!

あ、明けましておめでとうございます。

御宝候 ねむ でございます。

今回もNEKOの書いた物語の後書きを務めさせて頂きます!

と、言いつつも。

書き上げられたばかりすぎて、正直ちゃんとは読めていない・・・。

だから、よく分からない・・・!

解説失格ですね!

まぁ、可能な範囲で頑張ります!

ーーー以下、本編の内容に触れますーーー

まず題名が秀逸ですよね。

『明くる日のねこ』とは。

実にNEKOらしい題。

でも、「明くる日」(=翌朝)の猫なんて今作には登場しないんですよね。

主が夜の物語なので。

これは、「夜の恐怖が翌朝には説明不可なものとして消えてしまう」というテーマを表しているのでしょうかね。

そして、名前も歳も性別も分からない主人公。

うん、実にNEKOの作品らしい主人公!

作中で個性がまるで無いのに、実は「考えない」という選択を終始一貫して行なっている特徴はある主人公なんですよね。

猫の意味を考えない・音の意味を考えない・視線の意味を考えない

思考放棄する主人公とか愛せない!愛せないけど、愛おしい!

主人公は最後の最後まで考えることを放棄して朝日を望みます。

さて。作中で「何も起きなかった」と言っていますが、本当に何も起こらなかったのでしょうか?

疑問が残りますね!

また、部屋の音の正体に関しては一切語られていませんね。

物語最大の謎です。

全く!主人公がちゃんと考えてくれる人だったら、その正体のヒントくらいはあったのかも知れないのに。

最後に。

今作の主役の「猫」

主役のくせに、物語を通じてほとんど何もしません。

ただ同じ場所にいる。主人公が近づいても逃げない。そして、たまに話しかけてくる。

最後には突然いなくなる。

これは単純な「猫」という動物として描いているのではなく、「異常と日常の境界線上」の存在として描いているのでしょうね。

家の前・扉の前というのは部屋(内)と社会(外)の境界に位置します。

日本の怪談では「猫」を不吉な存在や霊的存在として描くことがありますね。

そんなニュアンスでしょうかにゃ?(失礼、噛みました)

「明くる日の”猫”」ではなく「ねこ」の理由もその辺でしょうかね。


さて、解説が本編よりも長くなってしまっているような気もしますのでこの辺で。

私とて物書きの端くれ。

書かせてください、悪しからず。

それでは、次回作でお会いしましょう!


御宝候 ねむ

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