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『放課後スターライト! ~私立夢見ヶ丘スクールアイドル日誌~』  作者: ゆっきー
第2章:崩壊の序曲

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7/8

第7話:血塗られたカーテンコール

前回、講堂からの悲鳴を聞いたあかり。

急いで駆けつけた彼女の目に映ったのは、夢にまで見たステージ。

しかし、そこはもう私たちの知っている場所ではありませんでした。

(※ここから残酷描写が入ります。苦手な方はご注意ください)

「ハァ、ハァ、ハァ……!」


 心臓が破裂しそうだった。

 上履きが廊下を叩く音が、静まり返った校舎に響き渡る。

 茜色の光が射し込む廊下は、まるで血管の中を走っているように不気味で、どこまでも赤かった。


「美姫! 誰か!?」


 叫びながら、私は講堂の重厚な二重扉に体当たりした。

『バンッ!!』と大きな音を立てて、扉が開く。


 その瞬間。

 鼻をつく強烈な『鉄の臭い』が、熱風と共に押し寄せてきた。


「うっ……!?」


 私は思わず口元を押さえた。

 何これ? 錆びた鉄? それとも生ゴミ?

 強烈な吐き気と戦いながら、私は顔を上げた。


 そして、見てしまった。


「あ……ぁ……」


 そこは、私たちが明日立つはずだった夢の舞台。

 スポットライトの代わりに、窓から差し込む夕日がステージを照らし出している。

 本来なら、キラキラした衣装を着た私たちが、笑顔で歌っているはずの場所。


 でも、今は――『真っ赤』だった。


 ステージの中央。

 マイクスタンドが倒れ、スピーカーからは『ブツッ、ブツッ』というノイズ音だけが流れている。

 そしてその横で、数人の生徒が折り重なるように倒れていた。

 制服のスカートが無惨に破れ、白いブラウスが赤黒い液体で染まっている。


「ウ……グチャ……ッ、チュル……」


 静寂の中、濡れた雑巾を絞るような、あるいは生肉を咀嚼するような、湿った音が響いていた。


 その音の発生源は、倒れている生徒の上に覆いかぶさっている『人影』だった。

 男子生徒だ。着ている制服からして、たぶん3年生。

 彼は一心不乱に、下の女子生徒の首筋に顔を埋めていた。


「なに……してるの……?」


 私の声に反応したのか。

 ピタリ、と咀嚼音が止まった。


 男子生徒が、ゆっくりと――まるでコマ送りのようにカクカクとした動きで――こちらを振り向いた。


「ヒッ……!」


 私は息を呑んだ。

 彼の口元は、真っ赤に染まっていた。

 そして、その瞳。

 白目が黄色く濁り、黒目が極端に収縮している。人間じゃない。

 でも、その顔には、満面の『笑顔』が張り付いていた。


「あ……ラ……い……ヴ……?」


 彼の口から漏れたのは、潰れたラジオのようなしわがれた声。

 でも、それは確かに言葉だった。


「せ……イ……こ……ウ……?」


(成功?)

(ライブ、成功?)


 私の思考が凍りつく。

 こいつ、何を言ってるの?

 人を……食べているのに?


 彼はゆらりと立ち上がった。

 足元には、噛みちぎられた女子生徒――よく見ると、同じアイドル部の先輩だった人――が、うつろな瞳で天井を見上げて動かなくなっていた。


「ウフッ……アハハッ……!」


 彼は笑った。

 口の端からボタボタと血を滴らせながら、狂ったように笑い出した。

 そして。


『ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』


 先ほどまでの人間の言葉が嘘のように、獣の咆哮を上げて、私に向かって猛然とダッシュしてきた。


「ッ!?」


 速い。

 陸上部員のようなスピードだ。

 ステージから客席の椅子を飛び越え、一直線に迫ってくる。


「うそ、いやっ、来ないで!!」


 私は恐怖で硬直しかけた足を無理やり動かし、踵を返した。

 背後から迫る足音。

 獣の息遣い。

 そして、楽しそうな笑い声。


「逃げなきゃ……!」


 私は扉の外へ飛び出し、廊下を無我夢中で駆け出した。

 涙が溢れて視界が滲む。

 何が起きたの?

 どうして先輩が死んでるの?

 どうしてあの人は笑ってたの?


 分からない。何も分からない。

 ただ一つ確かなのは、私たちの『青春』は、たった今、食い散らかされて終わったということだけだ。


あかりちゃんの青春、終了のお知らせです。

走るゾンビ(+喋る)、一番タチが悪いですね。

次回、校舎内での逃走劇。

果たしてあかりは生き残れるのか?

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